2016 Fiscal Year Research-status Report
鉄系ペロブスカイト酸化膜の強誘電性分極を用いた新規太陽電池の創成
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16K06256
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
森本 章治 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (60143880)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 強誘電体薄膜 / 電気分極誘起光起電力効果 / 光学ギャップ / 光吸収係数 / ビスマスフェライト / 希土類・遷移金属置換 / パルスレーザ堆積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽電池応用が期待されるBFO強誘電体薄膜は過剰なリーク電流が問題となり、バンドギャップは太陽電池における理想値1.4 eVを大きく超えているため、それらの低減が必要である。我々は、まず有効なリーク電流抑制法として元素置換法に着目し、Biサイトに希土類元素Ndを置換している。さらに、Feサイトに遷移金属元素Cuを置換したBFO系材料(BNFC薄膜材料)において、元素置換が光吸収係数や光学ギャップ、及び光起電力特性に与える影響について調査を行った。その際、薄膜作製にPulsed Laser Deposition(PLD)法を用いるが、PLD法ではドロップレット生成による平坦な表面の成長に問題が生じる。そこで、ここではより高密度のターゲットの使用により薄膜上に堆積される微粒子の低減と結晶成長の再現性を向上させ、J-V特性と光起電力効果の評価を行った。 基板として、電気特性や光起電力測定用には、Nb0.05 wt%添加SrTiO3(100)を用い、光学吸収測定用には、透明な両面研磨のc面サファイア基板上を用いた。 その結果、Cu置換量の増加によるバンドギャップの低減は観測されなかったが、上部ITO電極を用いた場合、可視光領域における吸収係数は増加し、リークは低くなることが分かった。Cuを5%置換したBNFCのJ-V特性より、光照射における光起電力効果を確認し、分極方向に依存しない成分もあるものの、短絡回路電流密度Jscの値が分極方向により変化することが分かった。得られた開放端電圧は約0.22 eV、短絡電流密度は約0.3 mA/cm2であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基板としてNb0.05 wt%添加SrTiO3(100)を用い、SrRuO3下部電極を堆積した上に、Cuを0%、5%、10%、15%置換したBi1.1Nd0.1Fe1-xCuxO3(BNFC)薄膜をPLD法を用いて堆積した。上部電極としてAuやITOを堆積し試料を作製した。光起電力効果の評価として、光照射強度は約500 mW/cm2 程度の集光レンズにより集光させた白色LED光を試料に照射しJ-V測定を行った。 またCuを0%、5%、10%、15%置換したBNFC薄膜の光学特性を評価するため、PLD法を用いて透明な両面研磨のc面サファイア基板上に堆積させた。 その結果は、次の通りである。全てのBNFC強誘電体薄膜は単結晶基板上で(100)が優先配向し、エピタキシャル成長しているものと推定される。また、BNF薄膜にCu置換を行うことにより、格子定数が単調に小さくなり、CuがFeサイトを置換されていると推定される。Cuを5%置換したBNFCのJ-V特性を測定する際に、試料が十分に分極する値である±10Vの電圧を印加し分極処理を行った後に光照射した。光照射における光起電力効果が確認でき、短絡電流密度Jscの値が分極方向により変化することが分かった。この観測された振舞いは、この結果が分極誘起光起電力効果であることを示している。得られた開放端電圧は約0.22 eV、短絡電流密度は約0.3 mA/cm2であった。光学測定用BNFC試料は残念ながら結晶化していなかったが、Cu置換量の増加によるバンドギャップの低減は観測されなかった。 なお上部電極をAuとした場合の実験も行っており、ITO上部電極に比べてリーク電流が少なく、P-V特性も比較的きれいな履歴特性を描く傾向にあるが、光起電力効果はITO上部電極よりもかなり劣っている。
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Strategy for Future Research Activity |
Cu による置換では、あまり大きなバンドギャップの低減や吸収係数の増大が期待できないことから、Cu 以外の遷移金属元素の種類や濃度等にも柔軟に対応し、研究計画の見直しを図る予定である。 まだ光起電力効果に大きな改善が見られないことから、次の対策を考えている。 ・酸化物電極材料の酸素欠損量によりキャリア濃度を制御し、遮へい長を制御して反電界の大きさを適切な値に制御する。 ・希土類元素のBi 置換によるBi 欠損の制御と遷移金属元素Cu のFe 置換だけでは、リーク電流、強誘電性、光起電力性能の制御には限界が予想される。そのため我々が開発してきた希土類・遷移金属共置換技術を用いて、最適な組成を探索する。
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Causes of Carryover |
当初執行予定してたPLD装置のエキシマレーザ用混合ガス、光学素子等の消耗が予定より少なかったため、執行額が少し予定より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度途中で、ガスの消耗具合からエキシマレーザ用混合ガス購入が確実に予定されており、また上部電極堆積用の蒸着装置の電源系の改修やPLD装置の真空系の改修も予定しているため、平成29年度の所要額は着実に執行予定である。
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Research Products
(7 results)