2016 Fiscal Year Research-status Report
多バンド超伝導体において生成するトポロジカルソリトンの観測
Project/Area Number |
16K06275
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
西尾 太一郎 東京理科大学, 理学部第二部物理学科, 准教授 (40370449)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有沢 俊一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (00354340)
田中 康資 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (70357440)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 多バンド超伝導体 / トポロジカルソリトン / 量子位相 / ジョセフソン接合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複数の量子位相をもつ多バンド超伝導体において、理論的に示唆されてきた新しいタイプのトポロジカルソリトンの存在を実験的に検証し、トポロジカルソリトンを新しい情報伝達手段とするためのデバイス開発を行うことを目的とする。 今年度は、予定されていた人工的な多バンド超伝導体であるNb/AlO/Nb薄膜の作製とその評価および発生回路の設計を行った。薄膜は産業技術総合研究所・イノベーションプラットフォームにおいて作製され、当初の目的である2つのNb層の間のジョセフソン相互作用が非常に小さいNb/AlO/Nb構造の薄膜を作ることに成功した。ジョセフソン相互作用、膜厚、超伝導転移温度などソリトンの発生に必要な条件を、作製した薄膜が満たしていることを確認した。発生回路の設計を行い、微細加工技術により、ソリトンを発生および観測するための回路を薄膜上に形成し、試料作製については予定どおり完了した。また、次年度のために測定に用いるDC-SQUIDセンサーを購入し、微小磁化測定装置の組み立てを始めた。 成果報告として、今年度は論文発表を2件(審査中)、著作による発表1件、国際会議発表1件を行った。論文の2件および著作発表1件は、発生回路の設計に関するもので本研究課題の直接的成果であり、効率よくソリトンを発生させるために新たにデザインした測定回路について報告している。国際会議発表では、測定に用いるDC-SQUIDセンサーによる磁束量子の観測についての報告であり、本研究課題に直接関係する成果である。 次年度において、ソリトンの観測が行われる予定である。その準備は予定どおりすべて今年度に完了することができたと考えている。今後はデバイス開発も視野に入れ、研究活動を加速させていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた試料作製が完了し、研究全体は順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方策は以下の通りである。 [微小磁化測定装置の完成]:今年度、準備を始めた微小磁化測定装置を完成させる。すでに購入してあるDC-SQUIDセンサー、試料台およびコイルなどをクライオスタットに取り付け、動作確認、校正作業などを経て完成させる。磁束量子のような微小な磁束密度を検出できる装置の開発を目指す。 [磁束量子の測定]: 上記の装置を用いて試料に生じた磁束量子を観測することによりソリトンの検出を試みる。様々な条件で観測を行い、ソリトンの発生条件を突き止める。試料作製条件などを変えて作った様々な試料に対して測定を行い、発生条件の最適化を行う。 [ソリトン量子デバイスの開発]: 発生回路を単純化するなどの工夫をし、容易にソリトンを生成することができる回路の作製を目指す。ソリトンの伝播の長距離化などにも力を注ぎ、ソリトン量子デバイスの開発を精力的に進める。
|
Causes of Carryover |
本年度の未使用額50,840円(研究分担者分50,000円)は旅費などに使用する予定であったが、東京理科大学内の予算で旅費を賄うことができたため使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、液体ヘリウムを使用して測定するため、本年度の未使用額50,840円(研究分担者分50,000円)は液体ヘリウム代にあてる。
|