2016 Fiscal Year Research-status Report
QD法電磁ホーン型・共振器型ESR装置開発と同計測法・解析法の標準化と応用
Project/Area Number |
16K06304
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
小林 正 大分大学, 工学部, 名誉教授 (30100936)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 昌宏 大分大学, 工学部, 教授 (00290742)
大賀 恭 大分大学, 工学部, 教授 (60252508)
金澤 誠司 大分大学, 工学部, 教授 (70224574)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 周波数掃引ESR / QIFM / QD法 / 電磁ホーン型ESR / 吸収/分散スペクトル / 位相角 / パワースペクトル / ESR定量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
K-バンドQD法 電磁ホーン型/共振器型ESR装置の作製と稼働試験を行い、下記の物質のQD法ESR測定結果を得た。 1. 電磁ホーン型ESRの特徴は、大型・誘電ロスが大・導電性が大の試料でも計測可能で、更にQD法に改造故に、従来法の吸収(実部)スペクトルに加え分散(虚部)スペクトルも得られ、位相と、将来のESR定量分析に資するパワースペクトルも得られる様に、QIFM素子、IF AMPとロックインAMPの構成のQD法ESR装置に改造した。 2. 方解石:Mn(Ⅱ)イオン単結晶試料、MgO:Mn(Ⅱ)イオン粉末試料、種々のグラファイト系炭素試料で、試作済みのX-バンドQD法ESR装置より数倍の高感度計測ができ、方解石:Mn試料では、磁場掃引と周波数掃引のESR実部スペクトル、虚部スペクトルとそのノルムのパワースペクトルを得た。整合位相角回転処理で、吸収と分散の2スペクトルを得た。この手法で位相の揃った周波数掃引複素ESRスペクトルも得た。MgO:Mn試料は立方晶系なので、6本のhfs ESRスペクトルは等強度になる。QD法での6本のパワースペクトルを従来のホモダイン法計測での6本の吸収スペクトルとで、6本の強度の平均値と誤差処理で比較して、パワースペクトルが従来法より誤差で1桁改善され、将来のESR定量分析に資することが判明した。種々のグラファイト系粉末試料を同一条件で計測し、整合位相角の比較を行った。 3. QD法電磁ホーン型ESR計測で感度を向上させるための後処理ソフトの一つの手法:複素ESRスペクトルをフーリエ変換後にサインベル窓関数を乗じて後に逆フーリエ変換を行い、ノイズの大幅低減を行った。 4. 高感度QD法ESR計測のために、K-バンドTE011モード円筒共振器の作製をした。QD法共振器型ESR計測を行い、微小方解石:Mn試料で高感度の複素ESRスペクトルを得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.K-バンドQD法電磁ホーン型ESR装置の作製と稼働試験で、開発済みのX-バンドの同装置に比べ、感度が数倍改善された。それ故に以下の2~4の研究の進捗が順調に進んだ。 2. K-バンドQD法電磁ホーン型ESR装置を用いて(1)方解石:Mn(Ⅱ)イオン単結晶の磁場掃引ESR複素スペクトルの取得と、共鳴磁場、位相角回転による吸収と分散スペクトルの取得及び将来のESR定量分析に資するパワースペクトルを得た。他方本格的な周波数掃引ESR複素スペクトルの取得と、共鳴周波数、各周波数に於る整合位相角を求め、周波数掃引時で位相の揃った吸収と分散ESRスペクトルを得た。cwESR装置での位相の揃った広範囲周波数掃引ESR複素スペクトルの初めての本格的計測事例である。(2) 当該装置のYIGマイクロ波発生器と続くマイクロ波用AMPは、周波数掃引にともない位相の変化とマイクロ波パワーが変化する。そこで周波数掃引時の強度補正の基礎データ取得のために立方晶系MgO:Mn(Ⅱ)粉末試料の6本のhfs許容遷移スペクトルの等強度を利用して、H29年度に向けてのマイクロ波出力の周波数依存性を得るために、パワースペクトル強度からスペクトルの等強度を確認した。(出願準備中) (3) 種々のグラファイト系炭素材料(粉末/単結晶/CVD積層試料)の同一条件での整合位相角の差異研究を行った。有為な情報が得られ、出願準備中。 3.QD法電磁ホーン型ESRの感度向上の為に、パソコン後処理ソフトの一つとして、磁場/周波数掃引スペクトルをフーリエ変換し、サインベル窓関数を乗じて逆変換し、ノイズの大幅低減が可能となった。 4.共振器のQ値はESR測定感度に比例するので、高感度QD法共振器型ESR計測のために、K-バンドTE011モード円筒型共振器を作製し、QD法高感度ESR複素スペクトルの計測に成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.周波数掃引QD法電磁ホーン型ESR装置に関して、 複素ESRスペクトルの位相整合には成功しており、残るYIGマイクロ波発振器の出力の周波数依存性を調べて、周波数毎の出力補正を行う。既に立方晶系MgO:Mn試料で6本のhfs許容遷移スペクトルがパワースペクトルで等強度であることを確認済みで、これを利用して本格的で、世界で初めてのQD法cwESR電磁ホーン型周波数掃引ESR複素スペクトルを取得する。(特許出願準備中) 2.測定データのノイズ低減のパソコン後処理ソフトの2つめとして、当研究室は外部ノイズが頻繁に入る環境なので、積算時に素早く1回1回のデータを保存し、積算後にノイズの入った回のデータを除去して、残りのノイズの少ないデータのみで積算処理を行い、S/N比(即ち感度)を向上させるソフトの開発をH29年度中に行う。 3.キーサイトテクノロジー社研究員との共同研究で、QD法電磁ホーン型ESR装置にネットワークアナライザーを設置して、周波数可変時の位相と出力の変化を求め、等方性物質を利用した私の方法と比較検討する。 4.複素ESRスペクトルに関連する他の物理量を同一試料で実験して、比較検討する。更に整合位相角の本質と物性との関連を調べる。 5.時期が熟せば、当該装置の感度を更に向上させ、実用化のために国内のESRメーカとの共同実験を行う。
|
Causes of Carryover |
パソコン後処理システム(ノイズの低減プログラム)の作成依頼の費用が無償になったこと(人件費・謝金)。QIFM素子の値段が、購入の販売店を替えたところ、安価になったこと。(物品費)分担者として金澤誠司教授の科研費の旅費で学会出張に行けたことからH28年度は不要になったため(旅費)、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した金額は、次年度予定していた金額と合わせて、実験を遂行するための消耗品の購入や旅費に充てる。
|