2017 Fiscal Year Research-status Report
エネルギーアシスト磁気記録方式に適した高性能信号処理方式の研究
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16K06313
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
斎藤 秀俊 工学院大学, 先進工学部, 教授 (60274338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤城 文子 工学院大学, 先進工学部, 教授 (30726724)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高密度ディジタル磁気記録 / ビットパターン媒体を用いる磁気記録方式 / 熱アシスト磁気記録方式 / マイクロ波アシスト磁気記録方式 / 熱アシスト磁気記録とビットパターン媒体記録方式 / 二次元磁気記録方式 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績について、【信号処理分野】と【ヘッド・媒体分野】の概要を示します。 【信号処理分野】 記録密度2Tb/in^2を達成できる熱アシスト磁気記録(HAMR)方式に対して、記録媒体の磁性粒子の粒径分散を変えてパーシャルレスポンス(PR)信号処理方式を検討し、その性能評価をしました。この結果、再生等化方式と等化誤差、粒径分散と誤り率の関係等を明らかにしました。また、ビットパターン媒体(BPM)を用いる磁気記録方式について、二次元記録符号と記録エラーを検出及び訂正できる誤り訂正符号を検討しました。その結果、二次元記録符号として、比較的低計算量の符号化・復号化法を持つポーラ符号を基に構成法を新規に提案し、かつ誤り訂正符号として多値低密度パリティ検査符号を組合せる信号処理方式を基に二次元磁気記録方式を新たに検討し、その誤り率特性を明らかにしました。 【ヘッド・媒体分野】 HAMRとBPMを組合せた記録方式において、媒体の熱伝導率を高くするとドットの上部と下部の温度差は小さくなり、さらに20W/m・K以上では不変となり、記録するには十分な温度上昇が得られることが判りました。また、隣接ドットについては、温度分布の半値幅が25nm以下、ドット間距離が2nm以上あれば、熱揺らぎが発生しないことが判りました。次にマイクロ波アシスト磁気記録(MAMR)方式においては、再生波形から信号対雑音電力(SN)比を求めるための最低フラックス反転数を検討し、48フラックス以上であれば十分なSN比が得られました。また、低注入電流密度、高周波磁界を実現するため、スピン注入層を2層にして、磁界発生層を負の磁気異方性にした場合の検討を行い、磁界発生層が正の磁気異方性の場合と同様に、注入電流密度を1×10^12A/m^2程度まで低減できること、周波数を正の磁気異方性よりも2GHz以上増大できることを明らかにしました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度における進捗状況は、全般的には概ね順調に進展していると考えていますが、【ヘッド・媒体分野】がやや進展し【信号処理分野】がやや遅れています。ただし、両分野について得られた結果やその評価などから、更なる検討や別途の解析をする必要がある所も存在することが分りました。以下両分野について、その詳細を記述します。 【信号処理分野】 HAMR方式に対して記録媒体の磁性粒子の粒径分散ごとに適したPR信号処理方式の検討を行い、各誤り率特性を評価しました。この結果、粒径分散が大きくなるにつれて特性劣化が起こることを明らかとしました。次にBPMを用いる磁気記録方式については、新たに符号化・復号化の論理回路構成が比較的容易な二次元記録符号の構成をし、構成した高符号化率の記録符号と誤り訂正符号を組合せた二次元信号処理方式を検討し、その誤り率特性の評価をしました。この結果、平成28年度で評価した信号処理方式から、さらに性能改善できることを明らかとしました。またMAMR方式については検討できませんでしたが、全般的にほぼ予定通りに進んでいると考えています。 【ヘッド・媒体分野】 HAMRとBPMを組合せた記録方式の検討では、本研究費で購入した商用の光・熱解析シミュレータCOMSOLを用いて、近接場光による媒体内の温度分布と熱伝導率の関係、及び磁性ドットの構造との関係についてシミュレーションを行い、記録の可能性及び隣接ドットが熱揺らぎを起こさない条件の明示等の解析を予定通り行うことができました。次にMAMR方式の検討では、平成28年度に作成した再波形計算プログラムを用いてSN比の計算を行うために十分なフラックス反転数を明らかにしました。また、スピン注入層を2層にし、磁界発生層を負にする新構造において、注入電流密度低減効果及び磁界発生のメカニズム解明を行うなど当初の計画以上の解析を行うことができました。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度における研究推進のための方策は、前年度の進捗状況を勘案して、次のように考えています。まず、研究計画の方針に従って、平成29年度以降に進めるべき課題について予定通りに実施することを考えています。また、継続課題の事項や考察を必要とする事項についても、同時に解決するように努める予定です。以下に【信号処理分野】と【ヘッド・媒体分野】について、その詳細を記述します。 【信号処理分野】 まず、HAMR方式については、平成29年度の成果を基に高性能な信号処理方式の検討を新たに進める予定です。特に、BPMとの組合せた記録方式に対する信号処理方式についても検討したいと考えています。次にBPMを用いる記録方式については、マルチ記録方式に対する記録エラー発生のメカニズムの解析と評価、再生側でのビットエラーとの因果関係の解明を引き続き検討する予定です。また、MAMR方式についても、それに適した信号処理方式を検討する予定ですが、時間的に解析が無理である場合には、前者の2つについて成果が得られるように努めたいと考えています。 【ヘッド・媒体分野】 HAMRとBPMを組合せた記録方式の検討では、前年度計算した温度分布を用いてHAMR による記録を行い、低ヘッド磁界でも記録可能なビットパターン媒体の媒体構造や磁気特性を検討する予定です。また、COMSOLを用いて近接場発光素子の解析モデルを作成し、光吸収分布の広がりと近接場発光素子形状の関係に関して検討を行うと共に、記録密度の限界の検討も行いまとめる予定です。次にMAMR方式の検討では、前年度検討したSN比とフラックス反転数の結果を基に、Exchange Coupled Composite 媒体を中心とした多層膜構造及びその磁気特性の検討を行います。また、再生ヘッドの構造も変更してSN比を最大にするような最適なヘッド構造の検討を行いまとめる予定です。
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Causes of Carryover |
【理由】旅費について、参加した国際会議の開催が平成29年度は国内開催のため、海外出張費として1回分程度の旅費が余りました。
【使用計画】平成30年度については、大学側から旅費の補助を受けられないケースが多いため、旅費の一部に活用したいと考えています。
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