2019 Fiscal Year Research-status Report
5G無線通信を支えるマルチバンドとミリ波デバイスの理論設計による迅速開発
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16K06320
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
陳 春平 神奈川大学, 工学部, 准教授 (20440266)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穴田 哲夫 神奈川大学, 付置研究所, 名誉教授 (20260987)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マルチバンド・ミリ波デバイス / 金属フォトニック結晶 / 金属PhCデバイス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は第5世代移動通信システムの本格的な普及・展開に向けて,従来のマイクロ波帯に加え,ミリ波帯,さらにテラヘルツ帯までを含めた高周波受動回路の理論設計および無線通信システム用キーコンポーネントとしての超広帯域バンドパスフィルタ・マルチバンド広帯域フィルタなどの機能デバイスの迅速な開発を目指している. このような超広帯域・高周波帯における高性能なデバイスを開発するために,新たな低損失誘電率材料の開発や受動回路のみならず,能動素子をフレキシブルに組み込める基板回路技術が要求されている.5G,IoT及び車載レーダ技術などの進展に伴い,超高速・超広帯域・超高周波回路技術の開発はさらに加速し,基本的デバイスとしての伝送線路も方形導波管(WG),マイクロストリップ線路(MSL)以外に, SIW(Substrate Integrated Waveguide)もしくはPWW(Post Wall Waveguide)の導波路構造は,比較的容易なPCB加工プロセスと良好なQ値の共振素子を実現できることから盛んに研究されている.一方,金属フォトニック結晶構造(MPhC:Metallic Photonic Crystal)は,バンドギャップ (光領域ではPBG,電磁波領域ではEBGとも言う)や特異分散の性質を持ち,ミリ波・テラヘルツ波領域において,将来の電磁波回路技術の限界を克服する有望な選択肢の一つとして,高Q電磁波回路の開発・応用が期待されている.本研究のミリ波フィルタの開発において,金属フォトニック結晶構造の利用を検討し,それに基づいた共振器・フィルタ構造の提案と順次最適化手法に基づいた新理論合成方法の開発との2つの方面から研究を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 金属フォトニック結晶構造を用いたミリ波/サブミリ波デバイスの設計・合成理論の研究について,フィルタの各共振素子を順次追加するごとに結合行列をあらたに算出するとともに,電磁界シミュレータを援用し,結合行列に基づく所望特性を満足するように構造パラメータを調整する合理的設計法を提案した.このように共振器を一つの単位として順次最適化することにより,所望のフィルタ特性を実現する設計技法は,全構造パラメータに対する大域的最適化を必要とせずに合理的にフィルタ設計を行うことができる. 2. 第5世代無線通信用ミリ波/サブミリ波デバイスフィルタの開発について,前年度の仕事を引き継ぎ,提案した新しい設計理論を用いて,25GHz帯および28GHz帯のミリ波金属フォトニック結晶構造バンドパスフィルタを設計し,試作した. 3. 本基盤研究では5G無線通信用マルチバンドの設計とミリ波デバイスの実現を予定しているが,研究に関係する日本の5G用周波数の割当が公表されたのが平成31年4月と想定より遅かったため,研究計画に影響が生じ,回路の作製や学術会議での成果の公表,論文投稿等に遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
5G無線通信用マイクロ波・ミリ波・サブミリ波フィルタなどの機能デバイスの設計に関して,効率的な理論設計手法の開発および5G無線通信システムの仕様を満たすデバイスの設計・応用の両面から研究を推進する. 1. 2019年度までは,新しく提案したフィルタの合成理論で飛び越し結合を持たない直接結合形金属フォトニック結晶(PhC)構造を用いたミリ波フィルタを設計し,理論の妥当性を確認したが,この設計理論は飛び越し結合を有するフィルタの設計ができない.一方,飛び越し結合の導入により,減衰極を持つフィルタの設計,そして,小型フィルタの実現が可能のため,2020年度は前年度の研究を引き続き,飛び越し結合を有するフィルタの新しい合成理論の研究を行う予定である. 2. 5G無線通信システム用機能デバイスの開発について,平成31年4月に日本の5G用周波数の割当が公表されたため,2020年度では日本の5G無線通信システムの仕様を完全に満たす高性能小型バンドパスフィルタの開発を実施する.具体的には,2019年度の研究を引き続き,多段金属フォトニック結晶(PhC)バンドパスフィルタ構造に基づいて,日本の5G無線通信システム用フィルタを理論設計し,開発する. 3. なお,2020年度は研究成果のまとめと成果報告とする.また電子情報通信学会総合大会,ソサイエティ大会,マイクロ波研究会,エレクトロニクスシミュ レーション研究会等での研究発表を含めて, EuMW,APMCのマイクロ波・ミリ波国際会議での発表,企業との連携による実装技術の確立,さらに合理的設計理論などを公開する.
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Causes of Carryover |
平成31年4月に日本の5G用周波数の割当が公表されたため、研究に一部遅れが生じている。2020年度に研究を加速するために、シミュレーション専用多CPU・高性能GPU搭載型パソコンを購入する予定であり、費用が発生する。また、設計した回路を作製するために費用も必要である。さらに、研究成果を公開するために、電子情報通信学会への論文投稿や,EuMW, APMCなどの国際会議での研究成果の発表を予定している。それゆえ、論文掲載費、国内・国際会議への参加旅費などが発生する。
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Research Products
(18 results)