2016 Fiscal Year Research-status Report
デジタルサイネージのための人に視認されにくい可視光イメージセンサ通信
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16K06348
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岡田 啓 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (50324463)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 通信方式 / 可視光イメージセンサ通信 / デジタルサイネージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,デジタルサイネージ本来の視覚情報提供に加え,可視光イメージセンサ通信によるデータ情報伝送手法を検討する.本手法ではデジタルサイネージの表示機能そのものを用いるため,特別な送信機を追加する必要はない.受信機としては,スマートフォンなどの携帯端末に通常装備されているカメラ(イメージセンサ)を用いる.デジタルサイネージ本来の視覚情報を阻害しないように,人が視認できないように情報を動画像(視覚情報)に重畳し,これを携帯端末のイメージセンサで撮影し,復調する可視光通信方式を考案する.具体的には以下の課題について取り組む. (1)人が視認できないデータ情報重畳伝送方式の検討 (2)時刻同期ずれの影響軽減策の検討 平成28年度は,上記課題のうち,(1)人が視認できないデータ情報重畳伝送方式の検討を中心に行った.人の視覚特性として,輝度変化よりも色変化の識別,特に青色が不得意であることが知られている.この特性を利用し,液晶ディスプレイで通常用いられるRGB色空間ではなく,Y(輝度),Cr(赤色差),Cb(青色差)により表されるYCrCb色空間を用い,青色差成分にデータ情報を重畳する青色差変調方式を提案した.そして,実際にどのような色成分や強度で視覚情報に重畳するのがよいのかを検討した.まず始めに視認性について検証するために,被験者による主観評価を行うことで,信号強度を変えてMOS(Mean Opinion Score)を測定した.そして,同じく信号強度を変えてRGBおよびYCrCbの各色成分で情報を伝送したときのビット誤り率を測定することで,結果としてMOS対ビット誤り率特性を算出した.その結果,視覚情報のCb,Cr成分へのデータ情報の埋込みが高いMOS評価値を獲得しつつ,より高い通信の信頼性を達成する事を確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書において,平成28年度は(1)人が視認できないデータ情報重畳伝送方式の検討として,青色差成分にデータ情報を重畳する青色差変調方式を考案することを計画していた.人の視覚特性として青色差が不得意であることは知られているが,それを実際にどのような形状,強さで視覚情報に重畳するのがよいのかを検討するためである.そして,考案した方式を実装し,その性能評価を行なうことを予定していた. これに対し,研究実績の概要で述べたように,青色差変調方式を考案し,実験によりその性能を評価した.具体的には,視認性および通信性能の両方を考慮し,MOS対ビット誤り率特性を算出し,視覚情報のCb,Cr成分へのデータ情報の埋込みが高いMOS評価値を獲得しつつ,より高い通信の信頼性を達成する事を確認している.このように,当初目的を達成することができ,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では,(2)時刻同期ずれの影響軽減策について主に検討する.送信機であるデジタルサイネージと受信機である携帯端末におけるクロックの同期ずれや,デジタルサイネージに用いられる液晶ディスプレイのリフレッシュタイミングと動画のフレーム更新タイミングの同期ずれに起因するティアリング現象による影響を軽減する手法を検討する.スマートフォンなどの携帯端末に搭載されているイメージセンサは,画像上部から画素走査線毎に順次読み出しを行なうローリングシャッタ方式が用いられている. そこで,フレーム毎ではなく,ローリングシャッタ方式により走査線毎に信号を受信・復調処理することを検討する.走査線毎の信号伝送に適した同期用パイロット信号の挿入や,同期ずれによる走査線毎の信号欠落を回復する消失訂正符号を導入することで,送受信間の同期ずれやティアリング現象の影響を軽減する方策を考案する.まずは,同期ずれがどのように発生しているのかを検証するためのテスト動画パターンを作成し,これを用いて実際にどのように影響がでるのかをシミュレーションにより検証する.そして,その結果を踏まえて,どのようにパイロット信号を挿入するのがよいのか,消失訂正符号の適用方法などについて検討する.実機を用いて提案手法の性能を評価する.
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Causes of Carryover |
当初,予算に計上してあったディジタルサイネージ機器について,今年度は保有する液晶ディスプレイを用いて実験を行ったため,購入を見送った.このため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度,予算に計上してあったディジタルサイネージ機器を次年度において購入する.また,可視光通信の国際標準化が本年度開始されたIEEE 802.11 Light Communications TIGにおける技術動向の調査などに使用する.
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