2017 Fiscal Year Research-status Report
ベクトル信号処理に基づく三次元メッシュ電子透かし技術の研究開発
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16K06359
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
宇戸 寿幸 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (90380261)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電子透かし / コンテンツ保護 / 三次元メッシュ / 多重解像度解析 / グラフ信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、信号処理技術の多次元化を通じて三次元メッシュ電子透かし技術の知覚影響低減・頑健性向上・情報量増大・検出性能向上を図ることにより、コンテンツ保護技術である電子透かしの高性能化・高機能化を実現することである。具体的な目標は、スペクトル拡散やウェーブレット解析、多重解像度解析の三次元空間への拡張手法を研究することにより三次元画像用途の処理要素技術ならびにコンピュータグラフィックに特化した著作権保護技術を開発することである。 この目的・目標を達成するために、本年度は平滑化処理に基づく三次元メッシュ電子透かし技術ならびにグラフフーリエ変換に基づくグラフ電子透かし技術の研究に取り組んだ。本年度の主な成果は以下の通りである。 1)透かし情報に平滑化を適用した三次元メッシュ電子透かし法の研究開発 三次元モデルの著作権を保護する透かし情報として二次元拡散符号を採用し、この二次元拡散符号を三次元空間上に拡張する際に境界ギャップを低減した埋め込み手法を提案した。本提案により、透かし情報の頑健性が保持されたまま透かし情報の挿入による画質劣化が低減することを明らかにした。その研究成果をまとめた論文を国際会議にて発表した。 2)PN系列とグラフフーリエ変換を組み合わせたグラフ電子透かし法の研究開発 離散フーリエ変換の拡張版であるグラフフーリエ変換を用いた電子透かし法に拡散符号のPN系列を透かし情報として採用する手法を提案した本提案により、情報劣化を抑制しながら、十分な透かし情報の検出性能が得られることを明らかにした。その研究成果をまとめた論文を国際会議にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の具体的な目標は、以下の3項目を明らかにすることである。(i)スペクトル拡散により知覚され難く頑健な情報の生成法、(ii)相関係数により検出し易い情報の検出法、(iii)多重解像度解析により埋め込み可能な情報量を増大した透かし埋め込み法 本年度は、主として項目(i)および項目(iii)の研究開発に取り組んだ。まず、項目(i)に関して、知覚され難くするために透かし情報に平滑化を用いた透かし情報の生成法の研究を進めた。その成果を3Dデータに適用した場合、平滑化を用いない従来法と同等の検出率を保持しながら、従来法よりも画質劣化を知覚できない署名埋め込みモデルを生成できることを実証した。次に、項目(iii)に関して、多重解像度解析により得られたベースメッシュへの透かし情報埋め込み法の研究を進めた。その成果を3Dデータに適用した場合、メッシュモデルを球座標空間で分割した3Dデータに埋め込むよりも、ベースメッシュの3Dデータに埋め込むことにより頑健な電子透かしが生成できることを実証した。さらに、項目(i)に関して、グラフ信号に対してもスペクトル拡散符号の有用性を評価する電子透かし実験の研究を進めた。その実験からグラフ信号を対象データとした電子透かしにおいても、拡散符号と領域変換とを組み合わせることで頑健性や情報劣化の点で優れた電子透かし技術を開発できることを確認した。 以上より、1年目に実施した項目(i)および項目(ii)の研究開発に加えて、2年目に項目(i)および項目(iii)の研究開発を推進し、その成果が得られている。2年目までに3項目全ての研究開発に取り組んで成果が得られているので、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
前項で記載した研究目標の3項目のうち、項目(i)から項目(iii)まで全項目の研究開発を既に進めているが、これまでに明らかにしている点以外に望ましい透かし情報の生成法や検出法が考えられるため、継続して研究を推進する。特に、一次元および二次元に対する処理技術の知見を三次元に巧く発展することにより、3Dモデルに適した電子透かしの研究を推進していく。さらに、三次元演算は計算負荷が増加する傾向にあるので、低演算量で実現可能な計算法の研究開発も検討する。
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Causes of Carryover |
物品費や旅費を節約したことにより若干の次年度使用額が生じた。研究成果を発表する件数を増加する等により次年度に使用する計画である。
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