2017 Fiscal Year Research-status Report
電波伝播特徴量を用いたRFID読み取り空間フィルタの実現
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16K06367
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三次 仁 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (40383921)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | RFID / 統計処理 / 信号処理 / クラスター分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
読取り空間フィルタの主要なパラメタとしてRFIDタグの反射波の位相を複数キャリア・複数アンテナで取得する微分位相を用いる方法について検討した。反射波の位相は、一波長ごとに回転してしまい、また通常はアークタンジェントで計算されるため、180度x自然数分のあいまいさを有し、このため微分位相を計算することが困難である。この問題に対して外れ値解析を応用することで、微分位相を適切に算出できることを示した。この結果については、IEEE RFID2017にてポスター発表および25th Auto-ID Labs Workshop(台湾)で口頭発表を行った。また、RFIDタグに入力される電波強度によって位相が変動してしまう問題について、複数の電波強度で読取りを行い、感度値から3dBバックオフした値を採用するパワースキャン方式を考案して評価した。その結果、パワースキャンによって、微分位相の測定ばらつきを低減する効果は若干認められるものの、大幅に読取り時間が長くなってしまうために、現実には空間フィルタへの適用は難しいことが分かった。この結果については、電子情報通信学会ソサイエティ大会にて報告した。さらに、微分位相の分布をトレーニングデータとして取得した後に、クラスター分析の一手法であるSVMを適用することで、離隔距離(読取り内と読取り外の間に確保するRFIDを設置しない距離)を80㎝以上確保することで、読取り空間内外を弁別できることを明らかにした。この結果は、バーコード・RFIDの国際標準団体であるGS1のglobal forumで紹介した。また、本研究における特徴量抽出の検討の中で、バーコードの印字ゆれを利用した個体識別方法を考案し、IEEE WF-IoT2017で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微分位相を正確に計算するための外れ値解析、パワースキャンなどの手段について検討し、微分位相が現実にどのくらいの精度で取得できるか見通しを得た。またクラスタ分析によって、読取り空間を分離するための必要離隔距離を算出する方法を得た。不安要素は、まだ1次元での検証のみであることである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初目標の離隔距離30㎝を実現するたには微分位相の測定精度を向上させる必要がある。これまでは、商用リーダライタのビルトインコマンドによって位相を確認していたが、ソフトウェア無線装置でつくる自作リーダライタおよび、試作タグによって、商用リーダライタの位相測定精度を確認するとともに、位相をより正確に測定する方法を試みる。さらに複数アンテナを用いることによって微分位相および、RSSIなどのより多くのデータを取得し、その学習により、空間フィルタの2次元化を実現し、複雑な読取り空間に対しても必要離隔距離を定量化できるように進める。
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