2017 Fiscal Year Research-status Report
移動通信のためのネットワークMIMO-OFDMによる通信容量拡大に関する研究
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16K06369
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
前原 文明 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80329101)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ネットワークMIMO / マルチユーザMIMO-OFDM / シンボル間干渉 / 干渉抑圧 / 周期信号 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,高速・大容量の移動通信ネットワークを実現すべく,通信ネットワーク全体の周波数利用効率向上の観点からネットワークMIMOを採り上げ,それに端末の小型化と広帯域無線通信を同時に実現できるマルチユーザMIMO-OFDM(MU-MIMO-OFDM)を適用したときの問題点を明確にするとともに,それを克服できる伝送方式を確立することを目的としている. 本年度は,昨年度の研究により明らかにした,ネットワークMIMO-OFDMにおけるシンボル間干渉(ISI)の発生のメカニズムとISIが伝送特性に与える影響の特徴を踏まえ,ISIが生じるユーザへの偶数サブキャリヤのみから生成される周期信号の導入を図るとともに,その有効性を計算機シミュレーションにより評価した.具体的には,MU-MIMOがそもそも送信側で各ユーザの伝搬路情報を事前に確保でき,ISIが生じるユーザを把握できる点に着目して,ISIが生じるユーザに対して,周期信号を適用し,ガードインターバル長を拡張するとともに,ISIの影響のないシンボルの後半部分のみを復調し,ISIの影響を抑圧するものである.計算機シミュレーションによる特性評価の結果,最大マルチパス遅延がガードインターバル長を超えても,周期信号の適用により,他ユーザへ干渉の影響を与えることなく,自身のISIの影響を完全に抑圧できることがわかった.この結果は,ネットワークMIMO-OFDMにおいて,マルチパス遅延が最も大きいユーザを基準に一律にガードインターバル長を設定するこれまでの方式とは異なり,OFDMの同期性を担保しつつ,ユーザのマルチパス遅延の大きさに応じて,柔軟にガードインターバル長を設定することができ,結果として,伝送効率のさらなる向上が実現できることを示唆しており,今後の本研究課題の検討に大きな弾みを与えるものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は,研究実績報告に記載した通り,現在まで研究計画書に記載した通りに進捗しており,概ね順調に進展しているものと判断できる.特に,本年度は,昨年度構築した,ユーザ間で異なるマルチパス遅延の設定が可能なネットワークMIMO-OFDMの信号処理シミュレータ上に,周期信号の導入を図り,その有効性を確認できたことが最大の成果であり,これは今後の技術提案を含めた検討を加速させる上で大きな意義を持つものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により得られた,ネットワークMIMO-OFDMへの周期信号の適用により,他ユーザへ干渉の影響を与えることなく,自らのISIの影響を完全に抑圧できるといった知見をベースに,周期信号を適用するユーザの効果的な選択方法を確立するとともに,さらなる周波数有効利用に向けた本提案技術の適用法について検討を進める予定である.具体的には,以下の項目について研究を進める. (1) 周期信号を適用するユーザの選択方法の確立 実際の伝搬路では,マルチパスだけでなく,雑音も存在することから,周期信号を適用するユーザは,両者の影響を考慮して選択することが重要である.そこで,通常の周期信号を適用しない通信モードと周期信号を用いた通信モードのSINRを時間領域信号の相関演算によりそれぞれ算出するとともに,それらの値を比較することにより,周期信号を適用するユーザの選択を行う方式を提案する.また,本提案方式の有効性を,周期信号を適用しない通常方式を比較対象にとって,計算機シミュレーションにより評価する. (2)周波数有効利用からみた周期信号を用いたISI抑圧の適用法の検討 提案方式の有効性を周波数有効利用の観点から明らかにすべく,(1)において行ったリンクレベルの検討を,もう一段発展させ,通信路容量を尺度としたシステムレベルにおいて評価する.また,提案方式が,OFDMシンボル同期を保持したまま,仮想的にガードインターバル長を変更できる点に着目して,ユーザ間でマルチパス遅延に差異が生じる環境下において,全ユーザの通信路容量を最大化するガードインターバル長の制御法を提案するとともに,その有効性をシステムレベルで計算機シミュレーションにより評価する.
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度,研究経費として想定していた消耗品(プリンタトナーの一部)と学会発表のための旅費の支出について,それぞれ,プリンタトナーの切り替えタイミングが年度内に合わなかったこと及び学会発表の開催地が近距離圏内となったことから,次年度使用額が生じている. (使用計画) 次年度使用額は,次年度の研究経費の一部として,消耗品(プリンタトナーの一部)及び学会発表のための旅費に支出する予定である.
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Research Products
(3 results)