2016 Fiscal Year Research-status Report
誘電泳動アセンブリにおけるナノ粒子構造体の凝集制御および積層診断
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16K06388
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
内田 諭 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90305417)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 誘電泳動 / アセンブリ / ナノ粒子 / セルオートマトン / ピット / 陽子線描画技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、泳動濃縮を利用した粒子アセンブリリアクタを試作して、ピット内における複合ナノ粒子群の凝集制御条件を検証するとともに、形成構造体の構造因子および電気定数を迅速かつ簡便に把握可能な積層診断システムを構築することである。 期間内において、(1)粒子輸送・凝集特性の精査、(2)アセンブリリアクタの試作及び性能評価、(3)粒子凝集量の導出及び凝集制御条件の特定、(4)インピーダンス応答と積層状態との相関検証及び検量線の策定、(5)堆積量と均一性の最適化及び固着条件の設定(6)複合ナノ粒子の積層アセンブリ及び形成状態の検証、といった各目標を達成するとともに成果の有機的連携により研究全体を推進する計画である。 本年度(平成28年度)は予備的な研究期間と位置付け、標準粒子の輸送凝集過程を数値的に模擬するとともに、既存の実験装置を基本とした粒子アセンブリリアクタを試作することを主目的とし、【課題1】数値シミュレーションによるナノ粒子凝集の挙動検証、【課題2】粒子アセンブリリアクタの試作評価、を設定した。 【課題1】に関しては、ピット型3次元誘電泳動デバイスをモデル化するとともに、液中の様々な作用力を考慮したセルオートマトン解析コードを用いて、諸操作条件における粒子挙動を数値的に模擬した。【課題2】に関しては、基板材料やプロセス工程を十分吟味し、ピット型3次元誘電泳動デバイスを試作するとともに、標準粒子や金ナノ粒子による誘電泳動捕集状況を光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いて観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【課題1 数値シミュレーションによるナノ粒子凝集の挙動検証】において、微細孔を多数配置したピット型誘電泳動デバイスの微粒子捕集部分を数値的にモデル化した。捕集対象は100 nm径の金ナノ粒子とした。粒子挙動解析については、申請者らが作成した生体粒子捕集解析用のセルオートマトン解析コードに、ナノサイズを考慮した各種作用力を新たに取り入れた。本数値シミュレーションにおいて、強電界領域における微粒子の凝集が確認された。また、捕集割合に対する周波数依存性、構造依存性、電圧依存性、濃度依存性が数値的に導出された。サンプル実験との比較より、粒子挙動の定性的な妥当性も示された。以上から、課題であった粒子凝集の挙動検証ができたと言える。なお、本結果の一部は、国内会議(センサマイクロマシンシンポジウムおよび電気学会全国大会)にて発表しており、投稿論文(電気学会論文誌E)としてまとめている(13. 研究発表の項を参照)。 【課題2粒子アセンブリリアクタの試作評価】において、電極基板およびピット材として、酸化インジウム錫(ITO)およびアクリル樹脂(PMMA)を用いた。ピット構造は、芝浦工業大学が所有する陽子線描画装置を利用し、リソグラフィとウエットエッチング処理により形成した。標準粒子として金ナノ粒子を用意し、工業用光学顕微鏡上でリアルタイムの泳動観察を、また、凝集処理後の蒸着サンプルについて走査型電子顕微鏡観察を行った。印加電圧が10-20 V程度、処理時間が数十分以内において、ピット内の数ミクロン程度の深さまで凝集堆積物が形成された。ただし、過度な印加電圧や処理時間に対しては、特異な凝集形態が生じることも確認された。作成デバイスの耐久性や凝集形態の再現性については引き続き検証していく予定である。 以上より、本年度の研究においては当基金を有効に活用し、到達目標を概ね達成できていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、粒子アセンブリの評価基盤として泳動凝集量とインピーダンス応答を計測し、凝集制御条件の特定および積層状態における定量的相関の検証を行う。 (1)凝集量の画像計測および凝集制御条件の特定 本課題における操作対象として、触媒作用が期待できる貴金属ナノ粒子(AgおよびAu。試験用ならびにプラズマ合成したもの)と誘電体ナノ粒子(TiO2)を用いる。電圧振幅、周波数および流量を制御パラメータとして粒子凝集量を画像解析し、各粒子種に対する支配的電気力(誘電泳動力、電気泳動力、電気浸透力、電熱体積力)の定量的変化を精査する。さらに、前年度に得られた数値解析結果を比較して、泳動集積の凝集制御条件を特定する。 (2)インピーダンス応答と積層状態との定量相関 泳動濃縮された微粒子群の電極間インピーダンス値の経時変化を電流増幅器に接続したインピーダンスアナライザで計測し、電子顕微鏡(SEMおよびTEM)観察により得られた積層構造(平滑度、堆積深さ、組成粒径、結晶性)との相関係数(検量線)を導出する。また、積層後のインピーダンス値から電気特性(等価誘電率および導電率)を解析する。
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Research Products
(14 results)