2017 Fiscal Year Research-status Report
散乱電磁波を利用する流動液体の広帯域・低侵襲な動的材料定数測定手法
Project/Area Number |
16K06398
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
駒木根 隆士 秋田工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40370241)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 散乱波 / 流体 / スペクトラム / 非侵襲 / マイクロ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
サンプリングを要するオフライン計測や流動経路内へのセンサの設置を行わずに,配管中などを流れる液状物体の性質や状態を動的に評価するため,管中の液体試料を非侵襲的にその高周波比誘電率および誘電損失を測定する測定手法の確立を目的としている. 初めに,球状容器に封入した液体試料を用い,照射した単一周波マイクロ波の散乱波電力が試料の誘電率と強い相関があることを確認した.その後,この手法により,円筒状の容器内の液体の散乱波電力の理論的な解析を基に,液体試料を電波吸収体で遮蔽した長尺のパイプ中に封入した状態でその一部を電波的に露出した場合の測定結果に関して,分極の分布を考慮する誘電特性の補正係数を導出した. 一方,潤滑や油圧作動に用いる油試料に関して,上記手法を拡張して広帯域の連続スペクトラムの差分評価を行う手法を開発し,加熱酸化試験による劣化や,水分および空気の混入による影響の評価実験を行い,その結果,特に加熱時間すなわち油劣化度と測定結果評価量の間に高い相関があることを確かめた.また,スペクトラム評価の精度向上のため,信号処理により直接波と散乱波の干渉改善する方法を提案した. 次に,液体循環系への適用の検証のため,ポンプによる液体循環機構を導入し,液体回路の一部の管状部に上記の領域制限構造を持たせて測定を行った.その結果,照射電磁界の変化速度(周波数)が液体の流速より十分早い範囲で,静止した液体から得られる散乱波スペクトラムの測定結果と流動する液体の散乱波測定結果の間に有意な差異はないことを確認した. 一方,実用的な測定系のために,送受信アンテナの兼用化と,周囲環境からの反射の影響を改善するためスペクトラム分析手法としてニューラルネットなどの確率統計手法の導入を進めるとともに,正確な基本特性取得のため電波暗室の特性改善を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では精度の良い流体試料の測定環境の構築のため,アンテナと液体循環配管の配置の最適化を検討して電波暗箱を設計製作する予定であった.実用的システムとするため,送受信アンテナの兼用化を図り,また取得データポイント数を増やしたことから,データ解析手法の変更が必要となった。 さらに,液体循環系を含む測定環境からの電波の不要反射の影響を再評価したところ,測定精度の改善にために既設シールド室内に電波吸収体を設置する改造を実施することに計画を変更したため遅れが生じた.
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Strategy for Future Research Activity |
当初想定した小型電波暗箱での測定から,他の配管や壁等による反射の影響を軽減してより正確な評価が可能なシールド室の暗室化を行い,その内部にて測定評価を実施する. また,送受信アンテナを兼用化した測定系に適した信号評価手法について,従来の平均化処理に加え,ニューラルネットを用いた確率統計手法を導入し,改善を進める.
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Causes of Carryover |
当初の研究計画において測定評価設備として想定した電波暗箱について,簡易設備による予備実験の結果,所望の性能を得ることが難しいと判断された。 このため,既存設備のシールド室内に電波吸収体を設置して配管を敷設して測定することに計画を変更した。電波吸収体の納期が予想より長く,年度内納品ができなかったため次年度への繰越しが発生した。 すでに電波吸収体は発注しており,納品後はすみやかに研究計画にある測定評価を実施する予定である。 また上半期に米国での国際会議で本研究成果の一部の発表を予定しており,投稿は受理されている。
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