2018 Fiscal Year Research-status Report
自己診断する性能保証型制御系:冗長性に基づく設計と検証
Project/Area Number |
16K06425
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
佐藤 孝雄 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (00347527)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 冗長設計 / 二重レート / サンプル値制御 / 離散時間系 / 連続時間系 / サンプル点間応答 / データ駆動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、システムの数理的冗長性を利用して、入出力データに基づく冗長な制御系を設計することを目的としている。 ここでは、連続時間系の制御対象に対して、離散時間系の計算機を用いて制御系を構成するサンプル値制御系の設計方法について検討している。この場合、連続時間系の信号をサンプラーによって、離散時間系の信号へ変換し、また逆の変換はホールダーによって行われる。サンプラーとホールダーの周期が同一であるシングルレート系において制御対象が冗長性を有している場合にはそのままその冗長性を利用した設計を行うことが可能であるが、一般には冗長性を有してはいない。 本研究では、サンプラーとホルダーの周期が異なる二重レート系における設計方法を検討している。さらに、入力の更新周期が出力のサンプリング周期よりも短い場合を想定しており、この場合リフティングを用いることで、二重レート系を入力多重型シングルレート系として構成でき、これは冗長な入力を持つシステムと見ることができる。そこで、シングルレート系では実現ができなかったシステムに対しても二重レート系として設計することで冗長設計が可能となった。 しかしながら、このような二重レート系に対しては、サンプル点間で入力が振動することを許容することとなるため、サンプル点間の振動が発生する恐れがある。しかし、サンプル値制御系では、実際の制御量が連続時間系であるのに対し、制御器側で観測可能で制御量はサンプル周期で得られる離散時間信号のみである。そこで、離散時間系の応答のみを用いてサンプル点間応答の振動を抑制する設計方法について新たに検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究成果から、研究目的である冗長系の設計をデータを利用して行うことが可能であることを示している。 まず、制御対象の動特性が完全に未知な場合でも、入出力データを用いて冗長な制御システムを構成することが可能である。従来のデータ駆動設計方法のほとんどが入出力の周期が全て同一のシングルレート系であった。それに対して、本研究では、入出力の周期が異なる二重レート系に対するデータ駆動設計方法を新たに提案している。 さらに、入力の更新周期が出力のサンプリング周期よりも短い場合、冗長系であるが故にサンプル点間応答でリップルが生じる問題が発生してしまうが、本研究ではそのサンプル点間のリップルを抑制する方法についても併せて検討している。サンプル点間のリップルは、定常状態でより深刻な問題となる。そのため、定常状態において、既存の制御系の離散時間応答を保存したままで、サンプル点間のリップルを抑制する方法を提案している。これにより、定常状態において離散時間系の出力応答とは独立に制御系を拡張することが可能となっている。 また、単一の制御ループではなく、複数の制御ループが内在するカスケード系に対する設計法についても検討を行っている。カスケード制御系では、ループごとの周期が異なる場合があり、従来のシングルレート設計のみでは対応することが難しい。それに対し、本研究の二重レート系におけるデータ駆動設計方法を用いることで、ループごとの周期が異なるカスケード系に対してデータ駆動制御手法を適応することが可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでデータに基づいた冗長系設計に検討してきたが、従来の研究ではある評価基準の最適化を目的としていた。現実には、外部から与えられる制約条件下での最適化が必要となっているのは明らかである。そこで、制約条件下での最適化設計への拡張が今後の検討課題として挙げられる。具体的な設計法の第一段階として、制御系の設計時に必ず満たしておかなければならない安定性を制約条件とし、最適化する評価基準として制御系の性能を設定することが考えられる。そのため、制約条件付最適化問題を入出力データに基づいて解くこととなる。 次に、外乱への対処が挙げられる。カスケード制御系には複数の制御ループが存在するが、カスケード系として設計することの利点の一つとして、外乱抑制が挙げられる。カスケード系の内部ループが外部ループよりも周期が短い場合が多いが、これにより外乱抑制が期待できる。従来の研究では、シングルレート系において外乱抑制の効果が報告されているものの、各ループの周期が異なる二重レート系におけるカスケード系のデータ駆動制御での報告はこれまでにない。そこで、二重レート系のカスケード系に対し、外乱抑制を目的としたデータ駆動設計の検討が必要であると考えられる。 さらに、産業界への適用を目指した設計方法も必要であると考えられる。いわゆるアドバンスト制御に対して、古典制御の枠組みで考えられてきたPID制御は産業界で最も広く利用される制御手法である。しかし、PID制御は制御系の構造が比較的低次であるため、そのままでは適用ができない。そこで、モデルの低次元化を利用した設計方法が必要になる。
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Causes of Carryover |
「次年度使用額が生じた理由」 有用な研究成果が得られているものの、研究成果の検証を行うための追加実験が必要である。また、研究成果の発表を次年度に行う必要が生じため。 「使用計画」 追加実験を行うための実験材料・資料の購入する。研究成果を学術雑誌へ掲載するための費用として使用する計画。
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Research Products
(39 results)