2017 Fiscal Year Research-status Report
電動アシスト車いすのユーザ特性適応型制御法と操作訓練システムの開発
Project/Area Number |
16K06426
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
関 弘和 千葉工業大学, 工学部, 教授 (90364900)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 制御システム / 電動アシスト車いす / ユーザ特性適応制御 / 操作訓練システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は電動アシスト車いすのユーザ特性適応制御システムの開発を目的としている。研究期間は3年であり平成29年度はその2年目である。3年間の研究期間全体として,①目標走行基準点の設定と操作データ収集,②位置軌道推定・走行制御法の開発,③視覚フィードバック型操作訓練システムの開発,④制御・訓練システム再設計法の開発,⑤被験者実地評価を具体的課題として挙げており,平成29年度は主に②~④に取り組んだ。②については前年度までに開発したファジィ推論システムをさらに発展させる形でファジィルールの自動最適設計を実現し,高精度に走行目標位置を推定する手法を開発した。また体重別パラメータ設計や制御精度向上のための走行制御法を開発した。③についてはLabVIEWをベースとして視覚フィードバック型操作訓練システムの構築を行った。左右操作トルクデータをPCに取り込み,推定された目標位置をリアルタイムに画面提示するプログラムを開発した。また④については,基準点への左右操作トルク分布が近いものに対しそれらを遠ざけるような自動補正を施し,推定精度の向上と操作訓練の効率化を試みた。また当初の予定にはなかった⑤についても先行的に実施した。先天性多発性関節拘縮症による上肢障害を有する被験者,及び片麻痺模擬装置を装着した健常者により①~④を実装したシステムの評価実験を行ったが,目標基準点への走行誤差が20cm程度となり,実用に耐えうるレベルの性能が確認できた。実際の障害者にも十分な効果があることを実証したことは,本研究の目的および方法論に関し計り知れないほど重要な社会的意義と研究成果が生み出されたことを示唆している。このように3年計画の2年目において,ユーザ操作特性適応型走行制御および視覚フィードバック型走行訓練システムの構築を目指す上での大きな進展をとげることができ,次の最終年度につながる見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年間の実施期間を設けており平成29年度はその2年目にあたる。平成29年度における研究計画について当初の予定では,②位置軌道推定・走行制御法の開発,③視覚フィードバック型操作訓練システムの開発,④制御・訓練システム再設計法の開発の三つを設定していた。②については被験者ごとに事前収集した操作トルクデータにファジィ推論を適用して目標位置を推定する手法,およびその位置への軌道制御法を開発した。特に前者におけるファジィルールの自動最適設計法や後者における体重別パラメータ設計法などを通して,走行性能の向上を達成でき,95%程度遂行できたと言える。③についてはLabVIEWとPCをベースに被験者の操作トルク情報や推定走行位置をリアルタイムに画面提示し視覚フィードバックによる操作訓練を行うシステムを構築し,1週間程度の操作訓練により目標位置に対する誤差を減少させる効果があることを上肢障害者を含む複数の被験者に対して実証した。しかし実際の走行感覚をより想起させるよう提示画面内容を改善する余地があり,80%程度遂行できたと言える。④については基準点への左右操作トルク分布が近いものに対しそれらを遠ざけるような自動補正を施し,推論システムを再設計することで推定精度の向上を図った。また補正した値を操作訓練の目標値にすることで、訓練による誤差減少の効果が早い段階で発揮されることも確認でき,これまでに70%程度遂行できたと言える。さらに当初の予定にはなかった⑤被験者実地評価についても本年度に先行して実施した。①~④の走行制御および操作訓練システムを実装し,上肢障害者1名および片麻痺模擬装置を装着した健常者2名による評価実験を実施したところ,各基準点へ平均で20cm程度の誤差で走行させることができた。これらを総合して本年度の研究達成度は90%程度であり「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は平成30年度の1年間を研究期間として残しており,平成28,29年度の成果を基とし,②位置軌道推定・走行制御法の開発,③視覚フィードバック型操作訓練システムの開発,④制御・訓練システム再設計法の開発,⑤被験者実地評価などを実施していく。②についてはファジィ推論以外でより性能向上を図れるモデル化手法の検討,③については被験者が実際の走行感覚をイメージしやすい情報やアニメーションを画面上に提示する方法の検討,④については操作訓練期間の途中経過を観察し,被験者の習熟度や操作特性変化に合わせてあらためてファジィルール等を再設計していくことで操作訓練を効率化することを検討する。最後にこれらの成果を⑤の実地評価を通して評価する。また研究推進のための人員としては,研究代表者以外に,研究室所属大学院生2名,卒研生5名程度を予定している。
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