2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K06432
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
三木 光範 同志社大学, 理工学部, 教授 (90150755)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 知的化 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、オフィス業務の多様化により、業務内容や執務者の好みに適した執務環境を提供する傾向がある。執務環境の中でも、光の明るさ(照度)や光の色合い(色温度)を制御することで、作業効率が改善されることが報告されている。我々が先行して研究してきた知的照明システムは執務者ごとに最適な照度・色温度を提供するが、従来のオフィス照明を制御するだけでは、照明の物理的特性により、隣接する執務者が大きく異なる照度・色温度を求めた場合に目標照度を実現できないことがある。そこで光の広がり方(配光特性)が狭い照明灯具を通常よりも多数設置した実験環境を構築し、知的照明システムの動作に適した照明環境(適切な配光角、照明の設置間隔および配置レイアウト)・制御方式の検証を行ってきた。 知的照明システムでは隣接する執務者が大きく異なる目標照度を求めた場合、照明の物理的特性により目標照度を実現できないことがある。このような場合、執務者の満足度を最大化するように制御を行うことにより、作業効率を改善できると考えられる。本研究は、各執務者の満足度分布をSD法により取得し、合計満足度が最も高くなるように照明を個別制御する新たな制御方式を開発するものである。 上記の方法において、配光角が狭い照明を60 cm間隔で設置した知的照明システムを用いることで、照度の実現精度が向上することが明らかになった。しかし、配光角の狭い照明を用いた場合、机上面均斉度の低下が考えられる。そこで本研究では、照明の配光角が机上面均斉度に与える影響の検証を行った。また、机上面均斉度の向上には配光角の広い照明を、照度の実現精度の向上には配光角の狭い照明を用いると良いことが明らかになったため、配光角が広い照明と狭い照明を組み合わせて、照度の実現精度と机上面均斉度の2つを向上可能な知的照明システムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度は調光・調色が可能なダウンライト型照明灯具を64灯用いた模擬オフィス環境実験室を構築し、配光角が狭い照明灯具を用いた知的照明システムの基礎的検証を行った。JIS規格を満たす従来型の対向島型オフィスレイアウトにおいては、通常の照明灯具を用いて知的照明システムを構築すると、約7割の執務者に希望する照度・色温度に対して5%以上の誤差がある照度・色温度を提供していた。一方、配光角が狭い照明を用いた場合、全ての執務者に対して5%以内の誤差範囲で照度・色温度を個別に提供できた。この5%は人間の知覚特性上、照度や色温度の違いを認知できる最小値であるため、配光角が狭い照明を用いると、全執務者に希望する照度・色温度を提供できるシステムが構築できることが明らかになった。 また、満足度の計測方法について様々な計測方法を比較検討することで、ランダムな照度を提示し、その時の満足度を被験者にSD法を用いて回答させ、分布を求める手法に決定した。また、満足度を用いた知的照明システムのアルゴリズムを完成させ、被験者実験により照度に対する満足度の人ごとの違いを検証する予定であり、概ね当初の計画通りに進んでいる。ところで、SD法を用いた満足度取得には被験者一人あたりに約1時間を要するため被験者実験を多く行うことができない。人ごとの満足度分布のパターンを分類化するための被験者実験数を満たせていないため、追加の被験者実験を行う必要がある。 一方、本研究は①被験者実験による満足度の計測、②満足度の評価モデルの作成、③シミュレーション環境での有効性の検証、④実環境での有効性の検証の4つの段階に分かれる。この内、現在は3つ目のシミュレーション環境での有効性の検証まで研究を進めることができた。1つ目の被験者実験による満足度の計測では、当初の予定通り10名の被験者に対して被験者実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は昨年度の研究進捗に加え、ダウンライトを用いて構築した模擬オフィス環境において被験者実験を行い、配光角が狭い照明を用いて知的照明システムを構築した場合の机上面の照度のムラを意味する照度均斉度や色温度均斉度を評価し、従来のオフィス照明を用いてシステムを構築した場合に比べて快適性が向上するかを定性的に検証する予定である。また、現状では模擬オフィス環境には狭角型のダウンライト照明を60 cm間隔で天井に設置してすべての照明を調光対象にしているが、デスクレイアウトに合わせて必要な照明を動的に選択し、通路部分など、細かく照明制御を必要としない部分には配光角が広いベースライトを併用する制御方式も検討している。これにより導入コストを抑えることができると考えられる。 また、照度に関する満足度に関しては、簡易な満足度分布取得方法を完成させ、満足度を用いた提案手法を実用的にする計画である。満足度を用いた提案手法は事前に執務者ごとの満足度分布を取得しておく必要があるが、分布の取得方法として採用している、照度を変化させながら満足度の計測を行う手法は時間が掛かり執務者の負担が大きい。このため、現在は執務者の負担の軽減を目指し、簡易に執務者ごとの満足度分布を取得する手法として、調光操作速度に着目した満足度計測機能を持つ調光インタフェースの試作を行っている。現状では、操作速度の変化の様子から満足度分布の推定を行うデータ分析の手法を確立できていないため、被験者実験の結果を用いて満足度分布推定手法の確立を行う予定である。 今回の検証で異なる被験者間での満足度の違いの検証を行うことができたが、同じ被験者の長期的な満足度の変化の検証は十分に行えていない。そのため今後、同じ被験者に対して継続的に追加の被験者実験を行い、検証をする予定である。
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