2017 Fiscal Year Research-status Report
コンクリートにおけるカルシウム溶脱の促進と力学特性への影響の評価
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16K06446
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
今野 克幸 北海道科学大学, 工学部, 教授 (80290667)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カルシウム溶脱 / EPMA / 断面分割法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画として,平成29年度以降のテーマを「骨材および遷移体がカルシウム溶脱の速さに与える影響の解明」と「カルシウム溶脱を生じたコンクリートの力学特性低下の要因として遷移帯の影響の解明」,そして「セメント硬化体を構成する主成分,Ca(OH)2とC-S-Hそれぞれが,セメント硬化体の力学特性に与える影響の解明」としていた.その内の3つ目のテーマに関して,普通ポルトランドセメントにシリカフュームを混ぜてCa(OH)2量がほぼゼロ,つまりほぼC-S-Hのみから成る硬化セメントペーストを作製し,普通ポルトランドセメントから作製した硬化セメントペースト試験体との比較を行う予定であった.この点について,異なる方法を採ることにした.すなわち,EPMAによる分析で得られたデータに数値計算による濃度分布を考慮することにした.まず,拡散方程式を差分で解くプログラムを作成し,カルシウムの濃度分布を計算した.そして,EPMAの分析結果に計算結果を考慮することにより,濃度分布をより正確に表すことができるようになった.したがって,シリカフュームを混ぜた試験体を使わなくても当初の目的を達成する合理的な方法を確立した.さらに,曲げ試験の結果と比較するための数値計算プログラムを作成した.すなわち,断面内のカルシウム濃度分布に応じて強度,ヤング係数等を変化させる断面分割法のプログラムを作成して検討を行っているところである.これにより,異なる種類の硬化セメントペーストで比較することなく,カルシウム濃度が硬化セメントペーストの強度やヤング係数に及ぼす影響を評価することができるようになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
普通ポルトランドセメントにより作製した硬化セメントペーストおよびモルタルの板状試験体(3×40×70mm)を用い,平成28年度にはカルシウム溶脱を生じさせるために浸漬試験を行った.そして,それら試験体を用いて曲げ試験を行い,曲げ強度とヤング係数の測定を行った.平成29年度には,曲げ試験後の試験体に対して空隙率の測定と熱重量分析によるCa(OH)2の定量をほぼ終えた.現在,EPMAによる断面内のカルシウム濃度の測定を行っている. 当初の計画では,平成29年度以降,「骨材および遷移体がカルシウム溶脱の速さに与える影響の解明」と「カルシウム溶脱を生じたコンクリートの力学特性低下の要因として遷移帯の影響の解明」,そして「セメント硬化体を構成する主成分,Ca(OH)2とC-S-Hそれぞれが,セメント硬化体の力学特性に与える影響の解明」をテーマとして挙げていた.何れのテーマについてもEPMAによる分析が重要であるが,現有のEPMAが平成28年度末から29年度4月にかけて本学学内の他の施設に移設されたことに伴い使用できない期間があった.それに加えて,大きな故障が生じて1か月以上の修理期間があった.このような理由でEPMAの分析がやや遅れており,何れのテーマについても論文作成に至らなかった.ただし,EPMAを使用できない期間に拡散方程式を差分で解く溶脱速度を推定するプログラムと強度試験の結果と比較するための断面分割法のプログラムを作成した.進捗の順序が当初計画と変わったために論文作成はできなかったが,総合的に見ると当初の計画と同等あるいはやや遅れている程度である.
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Strategy for Future Research Activity |
この研究では,カルシウム溶脱を生じた硬化セメントペーストおよびモルタルの断面上のカルシウム濃度分布を出来る限り正確に測定することが重要である.したがって,まず,EPMAの分析に注力する.そして,平成29年度に作成した拡散方程式を差分で解くプログラムを用い,カルシウムの濃度分布の計算を行う.EPMAの分析では,断面内の複数の直線上を分析したとき,それらのデータをグラフ化すると多数の点がプロットされることになる.その後の断面分割法による解析のためには,断面上のカルシウムの濃度分布を一つの曲線で表す必要がある.したがって,分析値を包絡するような拡散方程式の計算値でカルシウム濃度分布を一つの曲線で示すことを行う. 次に,断面分割法のプログラムにより,断面内のカルシウム濃度分布に応じて強度,ヤング係数等を変化させる解析を行い,曲げ試験の結果と比較検討する.これが,「セメント硬化体を構成する主成分,Ca(OH)2とC-S-Hそれぞれが,セメント硬化体の力学特性に与える影響の解明」につながる. その後,同様の流れで「骨材および遷移体がカルシウム溶脱の速さに与える影響の解明」と「カルシウム溶脱を生じたコンクリートの力学特性低下の要因として遷移帯の影響の解明」に取り組む.
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