2016 Fiscal Year Research-status Report
鋼製橋脚を制震化するためのブレース接合構造に関する非線形性を考慮した設計法の提案
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16K06477
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
渡辺 孝一 名城大学, 理工学部, 准教授 (90387762)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 制震構造 / 座屈拘束ブレース / 鋼製橋脚 / 接合部 / 鋼構造 / ダンパー / 継手 / 低サイクル疲労 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,制震ブレースを既設の鋼製ラーメン橋脚に添加(付与)して,橋脚の制震性能を飛躍的に向上させるためのブレース(座屈拘束ブレースと接合ブラケットを一体化したもの)と橋脚の接合部に関する補強方法を提案するものである.鋼製ラーメン橋脚(基部)に制震ブレースを接合すると,ラーメン橋脚全体系の水平剛性が高くなることから,ブレース設置前の非制震構造よりも過大な応力が橋脚基部に作用する.従って,ブレースを接合する橋脚断面は適切な補強にとって地震力をブレースに伝達させることが不可欠である.本研究では,1.制震化したラーメン橋脚とブレース軸力の伝達メカニズムを明かにし,ブレースと橋脚基部の損傷状態を明かにする.2.ブレースとブレース接合部の構造を模型実験供試体により再現し,ブレースを接合した橋脚基部の変形性能を明らかにする.3.ハイブリッド応答実験により,制震化したラーメン橋脚の地震時応答を取得し,研究代表者らが報告した既往の研究結果との比較検証により,鋼製ラーメン橋脚の適切な制震化に必要な補強設計方法を提案する. この3つの研究目的に対して平成28年度は,研究目的1.および2.を解明するため,制震化しない鋼製ラーメン橋脚基部模型に対して繰り返し漸増載荷実験を実施し,水平力を受けるラーメン橋脚基部のフランジおよびウェブパネルの終局時変形までの挙動を状態を明らかにした.実験結果に対してシェル要素による精緻な数値解析モデルによって解析的な検証を行い,破壊モードを解析的によく模擬できることを確認した. また,制震化に必要となる座屈拘束ブレースに着目した繰り返し漸増載荷実験を実施し,座屈拘束ブレースの設計に必要となる断面積を変化させ,座屈拘束ブレースの軸方向剛性に着目したダンパーの性能検証実験を行った.剛性が高いダンパーはこれらの成果は,査読付き論文ならびに構造工学シンポジウムにて発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては,座屈拘束ブレース単体の要素実験とラーメン橋脚基部を模擬した部分模型供試体を製作し,実験装置の組み立てと油圧ジャッキによる載荷装置の性能検証を行った. 1.研究対象の鋼製ラーメン橋脚をファイバー要素によって精緻に数値解析モデル化し,橋脚頂部に水平力を載荷する条件で推定した水平剛性について,縮尺実験供試体と比較するために予備載荷実験を実施した.本研究費の経費で新規に導入したピン型ロードセルを組み付けた載荷装置を構築し,油圧アクチュエータによる荷重導入時の荷重入力特性および各部位の変位計およびひずみゲージの据え付けと動作チェックを行い,各種センサー類が正常に動作すること,および,予備載荷試験供試体が解析で推定した値の性能を概ね有していることを確認した. 2.ラーメン橋脚基部の実験と平行して,座屈拘束ブレース要素の繰り返し漸増載荷実験(4ケース),ならびに地震応答を模擬したハイブリッド実験(4ケース)を実施し,制震化必要なダンパーの選定に関する検討を行った.この検討成果は,査読付き論文として報告した. 3.制震化しないラーメン橋脚基部を想定した部分模型供試体に対して載荷実験を実施し,水平荷重-水平変位関係を取得し,ラーメン橋脚を構成するフランジおよびウェブパネルに複数台設置したセンサーにより,水平荷重載荷に伴う橋脚パネル面外方向の終局状態に関する実験データを得た.この実験結果をFEM解析によって概ね模擬出来ることを確認した. 4.非制震ラーメン橋脚部分模型の終局破壊状態を分析し,制震化のため座屈ブレースを接合するための橋脚基部のガセット継手構造を設計した.そして,橋脚基部にダンパーを付与した制震構造の繰り返し漸増載荷実験を実施して,制震化構造の終局時変形挙動について破壊様式などの貴重な実験データを得た.次年度以降も当初計画に沿って研究を継続する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初計画どおりに進捗している.平成29年度においては,制震化しようとする橋脚基部模型に対して設置可能な座屈拘束ブレースのうち,前年度の研究成果により最も制震効果の得られる諸元が明確となったことから,これを有するブレース部材を摩擦接合した実験模型供試体を製作する.この模型供試体に対するハイブリッド実験を実施し,制震時の橋脚基部の変形挙動をする.同時に,数値解析による変形状況を推定し,実験結果の解析的な検証を進める予定である. 以上のことから研究の全体の推進にあっては,当初計画に沿って進捗しており,成果も得られていることから,計画の変更等を行う必要はない判断する.
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Causes of Carryover |
研究のための設備や実験に必要な予算執行は,研究計画に沿って支出を行っている.しかし,研究成果を発表するための学会の開催が研究年度の翌年(平成29年4月)であり,会場移動に必要な航空機利用の予算が不確定であったことから,年度内に執行できない予算を繰り越しすることになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
使用計画を変更する必要はなく,前年の繰り越し金額は研究成果発表のための旅費として執行予定と考えている.
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