2016 Fiscal Year Research-status Report
ボルト孔に樹脂を充填した高力ボルト接合の継手強度評価
Project/Area Number |
16K06479
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
石川 敏之 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (00423202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高力ボルト / 充填 / エポキシ樹脂 / すべり係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,既存鋼橋の補修・補強法である鋼板ボルト接合において,現場ですべり係数を十分に確保できない場合の対策として,ボルト孔にエポキシ樹脂を充填する工法に着目し,充填した樹脂による支圧効果を明らかにすることを目的としている. ボルト孔へ樹脂を充填するために,本研究では座金を加工して,樹脂の注入孔を設けた. 最初に,ボルト孔への樹脂の充填性を確認するために,3枚重ねたアクリル板をボルト締めし樹脂を充填して,ナット部やボルト軸部からの樹脂の漏れやボルト孔内への充填状況を確認した.その結果,樹脂をボルト孔に充填する場合,樹脂の粘度が低いと樹脂がボルト軸部に侵入する場合があること,ボルト孔への樹脂の充填試験において,1枚の座金に樹脂の注入孔と通気口を設けると充填不良が生じる場合があることが明らかになった. 次に,樹脂の充填による主板と当て板の相対変位への影響とすべり耐力への影響を明らかにするために,継手タイプ試験体と当て板タイプの試験体の一軸引張試験を行った.継手タイプの試験結果から,ボルト孔に樹脂を充填することにより主板と当て板の相対変位が小さくなり,主すべりを防ぐことができた.また,樹脂をボルト孔に充填することで,見かけのすべり係数が向上することが明らかになった.当て板タイプの試験結果から,ブラスト処理など表面処理が適切に行われ高いすべり係数が確保されている場合,ボルト孔に樹脂を充填することによる主板と当て板の相対変位への影響はみられなかった.グラインダー処理のみのようなすべり係数が十分確保できない場合,ボルト孔に樹脂を充填することで,樹脂の支圧効果によって主板と当て板の相対変位が小さくできることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,既存鋼橋の補修・補強法である鋼板ボルト接合において高力ボルトボルト孔にエポキシ樹脂を充填する工法に着目し,(1)ボルト孔を充填に用いる樹脂の選定,(2)ボルト孔を充填した際の継手強度の評価,(3)摩擦が十分に確保できない場合に対する本工法の効果,(4)ボルト孔の充填箇所の影響,(5)強度評価,を行うことを目的としている. 平成28年度は,(1),(2)を実施する計画であったが.(1)に対して,複数の樹脂に対して,ボルト孔への樹脂の充填状況を確認し,粘性によって樹脂の漏れ充填不良の違いが確認できた.(2)として,継手試験体と当て板試験体に対して引張試験を実施し,一部の試験結果が得られたため,ほぼ計画通りに研究が進んだと考える.また,平成28年度は,(3)の摩擦力が十分確保できていない場合の一部の試験も実施できている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,研究目的(1)~(5)のうち,(2)ボルト孔を充填した際の継手強度の評価,について平成28年度に引き続き実験を実施する.また,FEM解析によって,実験結果を再現することを行う.また,(3)摩擦が十分に確保できない場合に対する本工法の効果,(4)ボルト孔の充填箇所の影響,についても実験を実施する.(3)については,実橋の補修・補強の際に,摩擦が十分に確保できない場合が考えられるので,摩擦が十分でない場合に対して,ボルト孔充填の効果がより期待できる.また,(4)として,ボルト孔への樹脂の充填箇所を限定することにより,より効率的にすべり係数を向上できるかどうかを確認する.(3),(4)に対しても,FEM解析によって,実験を再現し,パラメトリック解析により,それらの効果を明らかにする. 今年度は,FEM解析を実施するので,充填樹脂によって荷重の伝達効果を明らかにすることも目的としている.特に腐食部への当て板補修を実施した際の補修・補強に対する効果を確認する.
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Causes of Carryover |
本研究では,載荷試験を一度に実施せず,複数回に分けて実施している.1回の載荷試験で複数体の試験を実施し,その結果を考慮して,次の試験を実施している.したがって,試験結果によって試験体の数が変化したり,ひずみゲージの計測位置が変化したりするため,計画していた経費の使用に至らなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の早い段階で,次年度使用額を利用して,平成28年度に実施できていない試験を実施する(ボルト孔を充填した際の継手強度の評価試験).平成28年度の試験結果の実績から,平成29年度の早い段階で試験体の発注などが可能であるので,平成29年度の実験計画に沿って,順次試験体が発注できるため,計画的な経費の利用が可能であると考えている.
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