2016 Fiscal Year Research-status Report
凍結融解を受ける河川堤防に適した堤体材料の選定法と締固め基準の提案
Project/Area Number |
16K06484
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 大 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90301978)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川口 貴之 北見工業大学, 工学部, 准教授 (20310964)
川尻 峻三 北見工業大学, 工学部, 助教 (80621680)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 河川堤防 / 凍結融解 / 凍上 / 植生工 / 補強効果 / 堤体材料 / 細粒分含有率 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度の平成28年度は,8月中旬の1週間に,観測史上初めて北海道に3つの台風が上陸した年であった.台風の通過に伴い,北見市常呂川の堤防では破堤や越水浸食,噴砂といった様々な被害が発生した.このため,本研究はこの被害状況について調査を行うことからスタートした。この調査結果を踏まえ,平成28年度は以下の3つの計測及び実験に取り組んだ。 まず,河川堤防の温度,水分量,変形挙動を現地計測することを開始した.計測地点は北見市常呂町の2地点で,堤防のり面に温度計及び水分計を設置した.また,凍結融解に伴う堤防の変形挙動に関しては測量で把握した.しかしながら,平成28年度は堤防に1mを超える積雪があり,この断熱効果で冬期間凍結することがなく,凍上に伴う変位は計測されなかった. 次に,試験的に作製した盛土に,植生基材工と張芝工の2種類の植生工を施し,その補強効果を解明することにも取り組んだ.先述の調査では,堤防を覆う植物が流水に対して大きく抵抗していることが確認されている.この盛土にも温度計や水分計を設置し,測量を行っている.この結果,植生工には高い断熱性があり,盛土を寒冷環境から保護する効果があることが確認された.さらに,植生工を模擬した供試体を作製し,せん断試験でその補強効果を検証する実験も行っている.この実験により,植物根系による盛土の補強効果が定量的に確認できた. 最後に,寒冷地に最適な堤体材料の選定法について検討するため,土材料の細粒分含有率を様々に変化させた凍上試験を実施した.実験結果から,土材料の細粒分含有率が多くなるにつれて,その凍上性が高くなることが確認された. 初年度の計測や実験から,実際の堤防の温度や水分量の変化,植物の補強効果,細粒分含有率が土材料の凍上性に与える影響について,明らかにできた.次年度以降,これらの成果について順次公表していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は,8月中旬に北海道に上陸した3つの台風によって発生した堤防の被害状況について,現地調査することからスタートした。この調査結果については各種の学会において,公表している。 この調査結果を踏まえ,まず北見市常呂町の2地点において,実際の堤防の温度や水分量,変形挙動を詳細に計測することに取り組んだ.しかしながら,想定を超える積雪があり,堤防が凍結することはなく,凍上に伴う変位は計測されなかった.ただし,寒冷気候に伴う堤防内の土中温度や,融雪水の浸透による水分量の変化は計測できており,研究当初の目的は十分に達成できている. 次に,試験的に作製した盛土に,植生基材工と張芝工の2種類の植生工を施し,その効果について解明することにも取り組んだ.この計測及び実験により,植生工の補強効果や断熱効果を定量的に把握することができており,大きな成果が得られた. 最後に,寒冷地に最適な堤体材料の選定法について検討するため,土材料の細粒分含有率を様々に変化させた凍上試験を実施した.実験結果から,土材料の細粒分含有率が多くなるにつれて,その凍上性が高くなることが定量的に確認された.当初の研究計画では2年目から実施する予定の実験であったが,計画を前倒しして行うことができている. 想定を超える積雪により,実際の堤防の変形挙動については把握ができなかったものの,植生工の補強・断熱効果が検証でき,凍上試験を前倒しで実施することができたため,区分を(1)とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度から開始した実際の堤防における温度や水分量,変形挙動の計測は平成29年度も引き続き行っていく.また,植生工の補強・断熱効果に関する検証実験や,寒冷地に最適な堤体材料の選定法に関する凍上試験についても,引き続き行っていく予定である. 平成29年度は,上記に加えて,凍結融解履歴を受けた盛土が水流でどのように浸食され決壊するのか明らかにするため,河川堤防を模擬した室内模型実験を開始する.室内模型実験に使用する模型土槽については,現在保有している模型土槽を改良することで対応する予定である.この土槽内に盛土を構築し,土槽ごと大型の恒温室に入れ凍結融解履歴を与える.融解後は水位を上昇させ,盛土の天端を越水させて,のり面の浸食挙動を観察する.これと同様の実験を,凍結融解履歴を与えない盛土に対しても行い,凍上現象が堤防盛土の脆弱化にどのように影響するのか,定性的に解明することに取り組む.
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Research Products
(6 results)