2016 Fiscal Year Research-status Report
土のコンシステンシー限界(wS,wP,wL)のメカニズムに関する研究
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16K06485
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大河原 正文 岩手大学, 理工学部, 准教授 (80223741)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コンシステンシー / 分子軌道法 / 分子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子軌道法により構造最適化と粘土鉱物と水分子間の結合エネルギーを計算した.その結果,無イオン型粘土鉱物の水分子は水素原子を粘土鉱物に向けて吸着し,結合エネルギーは7.9kcal/molと計算された.結合エネルギーは水素結合オーダーであるため水分子は比較的自由に動くことが可能である.一方,Na型およびCa型粘土鉱物では水分子は酸素原子を六員環内に存在する陽イオンに向けて吸着し,結合エネルギーはNa型が13.6kcal/mol,Ca型が29.3kcal/molであった.いずれの結合エネルギーも共有結合オーダーであるため,水分子は陽イオンに強く拘束されていると考えられる.また,無イオン型,Na型,Ca型の粘土鉱物と水分子間の結合距離はそれぞれ2.16Å,2.29Å,2.41Åであり,NaとCaの原子半径がそれぞれ1.54Å,1.74Åであることから,原子半径の違いが粘土鉱物と水分子間の結合距離に影響を与えている可能性がある. 分子動力学法により水の挙動等をシミュレートした.層間水は2枚の点状構造層が六員環構造層を挟む3層構造となっている.平均二乗変位と動径分布から水分子-粘土鉱物間に強い吸着性は無く,水分子自体は上記の軌跡の範囲内で自由に動き回ることができる.吸着水は,陽イオン型粘土鉱物付近の水分子は点状構造を示すものの陽イオンの無い粘土鉱物に比べると構造が乱れている.さらに,陽イオンの価数により水分子は様々な軌跡を描き,価数の大きいほうが散乱しないまとまった構造をとる.層間水は,吸着水と同様,陽イオン型粘土鉱物の層間水は乱れが生じ,乱れ具合は価数に依存する.層間水は,吸着水と同様,陽イオン型粘土鉱物の層間水は乱れが生じ乱れ具合は価数に依存する. これらの研究成果は,土のコンシステンシーを理解する上でのミクロ領域での有力な知見となり得る.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子軌道法により構造最適化と結合エネルギーを計算した。本研究では結合エネルギーを全エネルギーから構造ごとのエネルギーを引くことで求め水素結合から共有結合レベルの値を得た.また,分子動力学法により水分子の挙動等をシミュレートし,吸着水,層間水それぞれの挙動,動径分布等を求め,水分子が陽イオンに拘束されるときの状態を定量的に評価した.これらの研究成果は,研究計画どおり進んでいることを示している.加えて次年度の研究計画である粘土の放射光実験を見据えた試料精製や測定補助装置の組み立ても始めている.
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Strategy for Future Research Activity |
土粒子と水の分布状態をさらに詳細に調べるため放射光等X線による実験を行う.X線実験から含水比ごとの層間距離や配向性が明らかになることが期待される.実験から得られる構造情報や水の物性に関するデータと数値計算(分子軌道法,分子動力学法)から得られたエネルギー等から粘土-水相互間の系全体の挙動や物性が明らかになることが期待される.最終的には,コンシステンシーを表現できる法則の解明を試みる.
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Causes of Carryover |
試料精製のための機械部品がサイズ変更となり,購入を控えたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
サイズ変更後の部品を購入する
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