2017 Fiscal Year Research-status Report
塩類化防止と農耕地保全を同時達成するキャピラリーバリア地盤の開発と最適構造の提案
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16K06486
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
小林 薫 茨城大学, 工学部, 教授 (80443638)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森井 俊廣 新潟大学, 自然科学系, 教授 (30231640)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キャピラリーバリア / 限界長 / 塩類化防止工 / 不飽和土 / 土壌水分特性曲線 / 覆土 / 廃棄物最終処分場 / 中間貯蔵施設 |
Outline of Annual Research Achievements |
H29年度は、大きくは2つの事項について課題解決のための実験的研究を実施し、以下の知見を得た。 1)半乾燥地における塩類集積防止の有効な対策工の1つとして、礫層とその上に砂層を重ねたキャピラリーバリア地盤(以下,CB地盤と記す)がある。半乾燥地における乾燥砂は、乾燥や施工時の振動等で下部の礫粒子間に混入しやすく、層状地盤を短~長期的に保持することが極めて困難である。この課題に対し、礫材の代替材として破砕貝殻を用いることで、CB機能を保持すると共に上部の砂が下部の破砕貝殻内へ混入することも同時に防止できることを明らかにした。しかし、礫代替材として破砕貝殻を用いた場合、破砕貝殻の粒径により土壌水分特性曲線が大きく異なるため、CB地盤による塩分(水分)上昇遮断機能が異なる可能性がある。本研究では、破砕貝殻の粒径に着目し、特に2mm未満の破砕貝殻の微粒子分が塩分(水分)上昇遮断機能に及ぼす影響を実験結果を基に明らかにした。 2)キャピラリーバリア(以下,CBと記す)は、廃棄物最終処分場閉鎖時の降雨浸透制御時の覆土として採用されている。加えて、中間貯蔵施設等の覆土としても適用が検討されている。しかし、CBの施工事例は比較的少なく、CBを構成する細粒土層とその下部の粗粒土層に適した各材料については明らかにされているとは言い難い。特に、細粒土はCBの限界長に大きな影響を及ぼすため、CBの限界長を最長化するために適した細粒土を明確にしておくことは重要である。本研究では、CBの限界長を最長化するために適した細粒土を、Steenhuisらの限界長推定式と材料特性(透水性,保水性,粒度)を基に明らかにした。その上で、選定した細粒土を用いた大型土槽実験結果を基に選定材料の妥当性を実証した。加えて、大型土槽実験によるCB限界長の測定値を基に、Steenhuis推定式の適用性についても明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H29年度は、主に以下の2項目についての研究計画を立案し、実験・解析などを実施した。 1)塩害防止及び農耕地保全に適した破砕貝殻の粒度特性と同時達成に適した貝殻CB 仕様の確立 「キャピラリーバリア地盤の塩分上昇遮断機能に及ぼす破砕貝殻微粒子の影響」および「キャピラリーバリア地盤の限界長に着目した細粒土選定に関する研究」と題した研究成果を査読論文として仕上げた。これらにより、当初計画通りに、塩害防止及び農耕地保全に適した破砕貝殻の粒度特性と同時達成に適した貝殻CB 仕様などを明確にすることができた。 2)貝殻CB の(土/水/空気/溶解物質)連成挙動を精度良く再現できる解析コードの開発・高度化 HYDRUS-1Dを用いて、塩分上昇挙動およびカルシウム上昇挙動を解析し、実験結果と比較検討を実施した。その結果、短期的な挙動予測は再現できるものの、長期的な挙動予測では実験結果と大きく異なる結果が得られた。このことから、塩類化の長期予測を行うことは必要かつ重要であることから、H30年度は長期的な水/溶質移動予測が精度良く行える解析パラメータ等について研究を進める。加えて、大型円筒実験や予定しているフィールド実験で得られた長期的な実測データを検証用データとし、解析コードの信頼性向上を図る。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度の最終年度は、研究分担者などとも密な連携を図り、当初計画以上の研究成果達成を目標にして本研究テーマを推進する。特に、社会実装に向けた展開については、半乾燥地での研究経験・実績豊富な鳥取大学乾燥地研究センターの藤巻先生などの複数のメンバーにもアドバイスを頂きながら、効率よく、かつ、効果的な方法により推進する。 また、最終年度は、次の項目を主に推進して、塩類化防止と農耕地保全を同時達成するキャピラリーバリア地盤の開発と最適構造の提案まで完了させる。 1)貝殻CB の(土/水/空気/溶解物質)連成挙動を精度良く再現できる解析コードの開発・高度化:H29年度に実施した解析では、中・長期的な溶質移動予測の精度が確保できないことが明確となり、大型円筒実験(H29)やフィールド実験(H30予定)で得られた長期的な実測データを検証用データとし、中・長期的な水・溶質挙動予測の精度向上を図る。 2)展開時の品質管理法等の確立と実形式のフィールド実験での塩害防止と農耕地保全効果の検証:最終年度には、フィールド実験を予定していることから、新潟大学農学部の協力を得ながら、これまでの研究成果も考慮して、最適な貝殻CB 仕様で実形式・実規模大のフィールド実験(新潟大学実験ヤード)を行い、社会への展開を勘案した破砕貝殻の締固め法等の施工管理及び貝殻CBの品質確保を図るための品質管理法を実験時に取得した各種管理用データ(乾燥密度、原位置透水試験結果等)を基に確立する。加えて、塩害防止と農耕地保全効果を、地盤中の塩分濃度、カルシウム移動量、水分移動量(根からの吸収、蒸発作用も考慮)及びミズナの植栽実験による草丈、新鮮量、根の乾物量を基に定量的に評価し、貝殻CB 仕様の実効性を検証する。
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Causes of Carryover |
(理由) 実験時における土中の水分移動を計測する土壌水分センサー(METER社製、EC-5)については、繰り返し使用するため数回の使用でセンサーに異常を生ずる可能性があり、そのためセンサーは消耗品として購入を計画しているが、H29年度の実験実施時の状況では3個のセンサーに不具合が生じたものの、予備センサー(5個)でH29年度は対応可能であったため、購入時期を遅らせH30年度に持ち越したことで次年度使用額が生じた。 (使用計画) H30年度の最終年度である助成金については、当初計画通り研究分担者と共に使用する計画である。また、次年度使用額の分については、H29年度に計画していた土壌水分センサーを、H30年度早々に実施予定の実験開始前に購入予定である。土壌水分センサー(METER社製、EC-5)を10個購入を予定している。10個×14,000円/個=140,000円となり、ほぼ次年度使用額と一致している。したがって、前記以外のH30年度の使用計画については概ね当初計画通りである。
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Research Products
(9 results)