2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K06492
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
吉田 秀典 香川大学, 工学部, 教授 (80265470)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射性物質 / セシウム / 除染 / 土壌からの抽出 / 吸着試験 / 電気泳動試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
東京電力福島第一原子力発電所の事故で大量の放射性物質が放出され,その中でも健康や環境影響上,主として問題となるのはヨウ素131,セシウム134,セシウム137,そしてストロンチウム90の4種類である.特に,セシウム137の放出量は大量であり,除染によって回収された土壌等の中にも大量に含まれている.回収された汚染土は,仮置き場で一時的に保管後,中間貯蔵施設で減容化を行い,最終処分施設に搬出される.環境省は,中間処理段階の汚染土の容量をで東京ドーム13~18杯分にあたる約1600万m^3~2200万m^3と推計しているが,このように大量の汚染土を長期にわたり管理する中間貯蔵施設が確保できるのかという懸念もある.これを受けて,環境省は8,000Bq/kgを下回る汚染土に関しては,一般廃棄物として処分可能という見解を示した(http://shiteihaiki.env.go.jp/radiological_contaminated_waste/designated_waste/).しかしながら,回収された汚染土にはこれを上回るものも少なくないが,中間貯蔵施設の確保という課題を考えた場合,回収された汚染土の放射線量を下げ,一般廃棄物として処分できることが望ましい.そこで本研究では,平成29年度に,汚染土を含むフレコンバッグの中において放射線量を下げる技術の開発を目指した.具体的には,フレコンパックの最外側にアルミ箔と吸着材を,また,中心に電極棒(実験では炭素棒)を挿入し,中心電極を陽極として印加し,土壌中に電気の流れを生じさせ,セシウムイオンをアルミ箔(陰極)側に移動させ,設置した吸着させるというものである.電流条件等を様々に変化させて実験した結果,抽出可能なセシウムイオンの50%以上を除去できること,すなわち,フレコンパックで線量を低下させることができることが判明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載した内容を,概ね計画通りに進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を開始した当初よりも,福島県内の汚染土の回収は進んでおり,汚染土を現地で除染するということよりも,回収されてフレコンパックに入れられて仮置きされている汚染土の放射線を低下させ,一般廃棄物として処理できる状態にすることが重要視されるようになってきている.本来は,仮置きされた汚染土を中間処理施設に搬入して減容化することが政府の方針であったが,大量の汚染土をすべて受け入れて減容化する施設の確保には課題も多く,仮置きされている汚染土をフレコンパックに入れたままで放射線量を低減できる技術が望まれるようになってきている.そこで本研究では,これまで培った技術を転用して,フレコンパック内の汚染土に対して,電気泳動法を適用することで,例えば放射性セシウムのみを抽出・回収することに成功しているが,この手法は実験室レベルで確認されたに過ぎない.そこで,平成30年度は,さらに条件を変化させて実験を行い,開発技術の有用性を確認し,さらには,より大規模な実験へと移行させる. また,地下水や湖沼などの汚染事例については,ネット等に入れた吸着材を浸漬させることで,水溶液中の陽イオンの吸着に成功している.吸着材としては,,ヒドロキシアパタイトと等価な材料(魚骨を焼成して製作,以降,FbA=Fishbone Absorber)を開発している他,籾殻も吸着材として用いて吸着実験を重ねており,平成30年度は,この手法を確立すると同時に,社会実装を目指して,試験地を探索し,可能であれば実地試験を実施する. 最終的に,地圏ならびに水圏における除染手法の確立を図り,それぞれの適用範囲,効果的な適用プロセス,そして適用物質等の整理を行う.なお,本研究の終了後は,開発手法を知的財産として活用できるよう,特許の申請などを行うことを予定している.
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Causes of Carryover |
物品等が想定したよりも安価であったことや,研究補助の等の時間を抑制できたため
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