2017 Fiscal Year Research-status Report
波エネルギーを利用した新たな発電技術の確立ー磁歪材振動発電デバイスの発展的活用ー
Project/Area Number |
16K06504
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
斎藤 武久 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (40242531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 敏幸 金沢大学, 電子情報学系, 准教授 (30338256)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 波エネルギー / 波力発電 / 磁歪材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,新たな発電素子の一つとして研究開発が進められている磁歪材料を用いた振動発電デバイスを波動場に適用し,波力発電の可能性を確認した研究代表者らの研究成果(平成25年度から平成27年度,(挑戦的萌芽研究))を踏まえ,以下の5つの項目を研究の目的・目標としている.1)実際の海象条件を対象とした発電効率の検討,2)上記の研究で用いた片持ち梁形式振動発電デバイスの改良,3)沖合域に限らず振動発電デバイスを港湾施設に併設した場合の発電効率の検討,4)衝撃的な砕波をともなう沿岸域での発電の可能性と発電効率の検討,5)最適な振動発電デバイスの設置位置の検討に資する日本周辺海域での波エネルギー密度の高解像度解析,その実現に向けて,平成28年度に上記の1)および2)平成29年度に3)および4),平成29年度以降に5)を達成することを計画している.3)および4)を対象とした平成29年度の研究実績の概要は以下のようである.28年度に3)の港湾施設部に併設した場合の発電に成功していたが,29年度はこれに加えて潮位変化および入射波の不規則性に伴う発電量の変化の詳細を整理した.また4)についてはサイズの異なる発電デバイスを用いて発電実験を行い衝撃砕砕波力による発電を確認した.ただし,振動デバイスへの衝撃砕波力の活用に際して,①港湾構造物前面での砕波形態の理論および実験的考究,②砕波規模とデバイスのサイズの関係,③実海域に対応した適切な振動デバイスの設置位置等の体系的検討等が必要となるが,本年度は限られた振動デバイスでの実験に留まっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,以下の5つの項目,1)実際の海象条件を対象とした発電効率の検討,2)片持ち梁形式振動発電デバイスの改良,3)沖合域に限らず振動発電デバイスを港湾施設に併設した場合の発電効率の検討,4)衝撃的な砕波をともなう沿岸域での発電の可能性と発電効率の検討,5)最適な振動発電デバイスの設置位置の検討に資する日本周辺海域での波エネルギー密度の高解像度解析 を研究の目的・目標とし,その実現に向けて,平成28年度に上記の1)および2)平成29年度に3)および4),平成29年度に5)を達成することを計画している.1)および2)を対象とした平成28年度の研究成果は,1)に対しては,実海象を対象とした場合の波の不規則性に関して規則波をベースに等価解析が可能であることを確認している.また,2)では,振動発電による発電量は振動デバイス内の磁歪素子の共振振動の継続時間に比例するため,この継続時間を伸ばすことが重要となる.これに関して,音叉型のデバイスを新たに開発し,共振振動の継続時間を格段に伸ばすことに成功している.さらに,3)として,港湾施設に併設し,施設前面での波の上下運動による波力を外力とする振動発電デバイスを用いた実験を実施し,従来値の20倍を超える発電に成功しいる.この際,実海象をも対象として潮位変動を考慮した実験を実施しており,実験で対象とした潮位条件に応じた発電特性を明らかにしている.平成29年度の研究成果は3)において得られた実験結果を体系的に整理し,潮位条件に加えて波の不規則性および波高変化に対する発電特性を明らかにした.さらに4)については,サイズの異なる発電デバイスを用いた実験により衝撃砕波力による発電を確認したが,砕波規模とデバイスサイズの関係や実海域に対応した適切な振動デバイスの設置位置の検討が十分に行われていない.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では,5)波エネルギー密度の精査によって,磁歪材振動発電デバイスのより最適な設置位置の検討を検討していく予定である一方で,28年度,29年度に実施してきた港湾施設前面での水面の上下運動に伴う波力を外力として利用するデバイスは,外力を受ける波受け板を予め磁歪素子部に永久磁石で吸着させ,振動デバイスから急速に脱着させることで,デバイスに自由振動を励起させるものであり,永久磁石の利用が不可欠であった.これに対して,平成29年度に実施してきた港湾施設前面で発生する砕波に伴う衝撃力を活用して振動デバイスに衝撃砕波力を作用させた場合,永久磁石を用いることなくデバイスに自由振動を誘起させることができる.この優位性に鑑み,その特性を明らかにするため,本年度は昨年度の実験を継続し,以下の3つを検討に加える.①港湾構造物前面での砕波形態の理論および実験的考究,②砕波規模とデバイスのサイズの関係,③実海域に対応した適切な振動デバイスの設置位置の検討.なお,斜面上に設置された柱体に作用する衝撃砕波力に関しては,たとえば合田ら(1966)が先駆的に行ってきている柱体構造物への衝撃流体力の研究例はあるものの,本研究課題のように一様斜面上に堤体が存在した場合の砕波に関してはこれまで研究例がないこともあり極めて先駆的な研究内容となる.また,荒天の際にその砕波力を発電に活用することは,荒天を避けようとする一般論とは逆転の考え方ともなる.
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