2016 Fiscal Year Research-status Report
沿岸漂砂方向が時空間的に反転する漂砂系における海浜動態の解明・予測技術の高度化
Project/Area Number |
16K06505
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
由比 政年 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (20262553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
楳田 真也 金沢大学, 環境デザイン学系, 准教授 (30313688)
斎藤 武久 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (40242531)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 広域漂砂 / 海浜動態 / 海浜システム / 地形変化 / 汀線変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,沿岸漂砂方向の時空間的反転を伴う海浜における漂砂移動や海浜地形の年間動態の解明とそのための技術開発を段階的に進めていく.本年度は,マルチスケール海浜変動解析の実現に向けた要素基盤技術の構築を主眼に,長期観測データを活用した海浜流・汀線変動の解析と特性把握,小型UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による低空空撮画像を活用した海底地形推定システムの構築,プロセスベースの波浪・海浜変形解析モデルの適用試行を行い,以下の成果を得た. 長期波浪観測結果の特徴抽出にあたっては,金沢港における過去10年間の波浪データを精査し,現在気候下における波向き分布の季節変化の平年特性を把握するとともに,入射角と汀線直交方向の関係から沿岸方向波浪エネルギーの季節変化について解析を行い,水深域に対応した漂砂方向の時空間変動特性を明らかにした.沿岸流速・漂砂の岸沖分布の特性については,汀線付近では南向きの流れが支配的になる一方,高波浪の影響度合いが相対的に高まる水深域(水深5,6m以深)では,漂砂方向が北向きに反転するパターンを示す場合が多く観察されたことが特徴的である.汀線変動の解析においては,千里浜海岸における汀線の季節変動,長期変動特性について,そのトレンドや波浪エネルギーとの相関を確認した.上記と並行して,小型UAVによる低空空撮画像を活用して,波峯線の移動を画像上で追跡し,波動理論に基づいて水深分布を推定する画像解析システムを構築することを試みた.内灘海岸における地形推定結果と深浅測量結果(国交省)を比較した結果,推定地形は現地地形の特徴を定性的に再現可能であり,定量的にも0.5m前後の推定精度が見込めることを示した.併せて,プロセスベースの地形変化モデル構築の予備検討として,Delft3Dモデルを用いた短期地形変動解析を行い,モデル適用上の留意点を把握した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,沿岸漂砂方向の時空間的反転を伴う海浜における漂砂移動や海浜地形の年間動態の解明とそのための技術開発を段階的に進めていく.初年度は,その第1段階として,マルチスケール海浜変動解析の実現に向けた要素基盤技術の構築を主眼に,長期観測データを活用した海浜流・汀線変動の解析と特性把握,小型UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による低空空撮画像を活用した海底地形推定システムの構築,プロセスベースの波浪・海浜変形解析モデルの適用試行を行った. 初年度の成果として,金沢港における過去10年間の波浪データ解析により,現在気候下における波向き分布の季節変化の平年特性を把握するとともに,水深域に対応した漂砂方向の時空間変動の特徴的パターンを抽出することに成功した.また,汀線変動の解析においては,千里浜海岸における汀線の季節変動,年々変動,および,長期変動について,それぞれの特性を明らかにすることができた.これらの結果,および,沖合海岸流の観測結果の照合を引き続き実施することにより,現在気候下における卓越漂砂方向の時空間的反転特性とその影響について,モデル化・推定を進めることができる.また,小型UAVによる低空空撮画像を活用した観測・画像解析システムを構築・活用して,中期変動の面的情報を取得分析する取り組みを並行して進めており,定性的・定量的な推定精度確保が期待できる結果を得た.今後の継続的観測の実施により,観測データが蓄積され,より広範な時間スケールの検討が可能となることが期待できる.数値モデルの適用に関する取り組みが当初予定より遅れ気味であるが,全体としては,概ね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の結果を踏まえて,今年度は以下のように研究を進めていく予定である. まず,初年度に得られた波浪,汀線変動の解析結果,および,既往の沖合海岸流の観測結果を比較照合することで,卓越漂砂方向の時空間的反転とその影響について,季節変動・年々変動の特徴を明らかにし,海浜地形変化との関係を推定することを試みる.また,波浪に関する長期再解析データを活用して同様の検討を行い,気候変動に伴う波向き変化の影響を解析・推定する.合わせて,汀線・土砂量の年々変動,ブロック別の土砂収支,モード別土砂移動,砂州の大規模移動と大規模循環の関係等に関する多角的検討を実施して,広域漂砂系内の土砂移動実態の全体像を推定する.並行して,小型UAVによる低空空撮画像を活用した観測・画像解析システムの構築と適用を継続し,観測・解析技術を高度化するとともに,連続的・面的な地形変動情報を蓄積する.プロセスモデルによる再現計算と物理機構の推定については,これまで申請者らが年単位で構築してきた波浪(波高・周期)の時系列変化モデルを季節単位に再編成するとともに,波向きの季節変動・短期変動を考慮した形へと拡張することを試みる.その時系列波浪をプロセスベースモデルに入力して平年時における1年間のビーチサイクルを推定し,代表的な波浪条件下における地形変動特性と入射波変動との相関について検討する. 今年度の結果を踏まえて,最終年度には,土砂循環に対する漂砂方向の時空間的反転の影響について,得られた結果を比較照合し,統合的な解析を追加して,現在気候下における年間の海浜動態を検討するとともに,将来気候変動による将来波向き変化に関する事前影響評価の試行を行う予定である.
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Causes of Carryover |
平成29年度に国際学会(Asian and Pacific Coasts 2017,於フィリピン)に参加し,小型UAVによる低空空撮画像を活用した観測・画像解析システムの構築と適用に関する研究成果発表を行うこととしたため,H28年度の科学研究費使用額を節減し,H29年度の成果発表旅費へと充当することで研究費使用額の調整を行うこととした.H28年度で節減項目となった部分は,国際学術誌への研究成果発表に関わる英文校正費用と論文掲載料,および,国内の研究打ち合わせ旅費であり,この費用については,金沢大学の基盤研究経費を充当して研究を進めた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度から繰越となった部分に関しては,国際学会(Asian and Pacific Coasts 2017,於フィリピン)に参加し,小型UAVによる低空空撮画像を活用した観測・画像解析システムの構築と適用に関する研究成果発表を行うための成果発表旅費として活用する.
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Research Products
(5 results)