2017 Fiscal Year Research-status Report
ワンドおよび止水域の水理学的維持管理法に関する研究
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16K06508
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
冨永 晃宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60135530)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ワンド / 土砂堆積 / 導流工 / 植生 / 水制 / 止水域 |
Outline of Annual Research Achievements |
河岸凹部内に流れを誘導する導流工の設置により凹部内の土砂堆積を低減する方策について,昨年度までの検討に加えて台形凹部に加えて長方形の凹部についても実験的に検討した.また,導流工高さを越える場合に堆積がどう変化するかを調べた.さらに,実際に導流工が設置された現地において観測を行い実験結果の妥当性を検証した. 導流工による流れは,導流が凹部奥まで達するか否かの2パターンに分類され,凹部奥まで達する場合に堆積が大きく減少することが示された.長方形の凹部では,凹部内の流れ構造は台形凹部の場合とほぼ同様であるが,流入角度は台形に比べて減少し,凹部の上流と下流の隅角部には常に堆積が発生した.その結果,台形に比べて堆積が減少するケースが少なくなった.洪水時を想定した導流工を越流する条件では,いずれのケースも著しく堆積量が増大した.特に掃流砂が卓越する6号砂では,導流工無しのケースからの増加が顕著であった.ただし,いったん堆積した場合でも,流量減少時に導流工の効果によって排出されて堆積量が減少することが示された。また,導流工が設置された現地での計測から,実験室と同様の渦構造が見られ,堆積土砂が排出されることが確認されたが,混合砂礫の場合に導流入口付近への礫の堆積が懸念された. 次に,ワンドの上流部に存在する植生は土砂の流入を軽減することが期待されるが,流下能力の確保のための樹木群伐採がワンドに与える影響が懸念される.そこで,ワンドの上流部に植生の代替となる模型を配置し,高水敷を越流するような出水において,ワンド内の土砂堆積に及ぼす影響を実験的に検討した.ワンド上流の植生の存在は高水敷からの流砂量を抑制するだけでなく,ワンド周辺の流れ構造を変化させて,その影響によりワンド内の堆積も変化することが示された.粗な植生の場合はかえって堆積量が増大する場合もあり注意を要することが指摘された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
凹部内に水流を導流する導流工を設置する方法について,様々な条件についてその効果を検討した.凹部形状の水制が越流しない場合は,堆積抑制の要因である凹部奥までの強い流入を得るための条件が明らかにされるとともに,出水時を想定した水制高さを越える流れでは,浮遊砂が卓越する条件においては,導流工の条件によっては堆積量が増大する場合があるが,出水時においても堆積量を抑制する条件は明らかとなった.掃流砂が卓越するケースでかえって堆積量が増大する傾向が見られ,現地観測においても凹部入口付近に比較的粒径の大きい掃流砂の堆積が認められた.今年度,ワンドの土砂堆積抑制法に関する研究については総括的に示すことができたと考えている. ワンド内の土砂堆積に与える植生の影響に関しては,長方形および台形のワンドと開口部を遮蔽してたまりを再現したケースを加えて,上流に植生模型を置いた場合の土砂堆積状況について実験的に検討した.その結果,植生の土砂堆積に及ぼす影響が様々な条件において明らかにされた.ただし,流れ構造との関連については,まだ検討が不十分であり,引き続きPIV実験を行う. ワンドの形態とは異なるが,木曽川に見られる大規模深掘れ周辺で発生する大規模平面渦に関する研究を行った.側岸付近に周辺より深い部分があると安定な平面渦が発生して,深い水深が維持されるメカニズムは,ワンドの維持にとっても重要な要因となることから関連が認められた.ワンドの土砂堆積に及ぼす主流域流れの影響については,現地河川の衛星写真から検討したが,実験は未着手である.出水時に低速域を確保する河道構造については,杭水制を用いた低速域の確保について実験的に検討し,杭の配置方法によって流れ構造が大きく変化することが示されたが,今後も研究を継続する.
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Strategy for Future Research Activity |
ワンドの土砂堆積抑制法については一定の成果が得られ,総括的な考察を行った.ただし,出水を想定した導流工を越流するケースについては,流れ構造の検討が十分ではないため,引き続き研究していく.また,数値シミュレーションによる予測については,2次元計算では実験の再現性に問題が見られたため,3次元の計算を取り入れて検討する予定であり,また土砂堆積を含むシミュレーションについて新たなモデル開発する必要がある. 周辺植生がワンド・たまりの土砂堆積に与える影響に関しては,高水敷を越流して浮遊砂及び高水時に流砂が発生する条件で,高水敷上の植生模型の密生度,ワンドからの距離,主流域との位置関係を種々変化させてワンドに堆積する土砂量に与える影響を検討する.さらに,流れ構造と土砂堆積の関係を検討するために,PIV実験を行い流れ構造を明らかにする.また,単断面において植生群が背後の流れと土砂堆積に及ぼす影響についても検討して比較データとする.最終的に,治水上の問題となる抵抗増大との関係を踏まえて,最適な植生の配置方法について検討する. ワンドの土砂堆積機構に及ぼす主流域流れの影響に関しては,実験水路においてワンド開口部に横断方向の段差がある条件を設定し,ワンド内の流れ構造を把握するとともに,土砂堆積実験を行う.横断方向段差とは,ワンドの上流側と下流側でワンドの奥行き長さを変化させたもので,上流が長い場合,ワンドから離れる流れ,上流が短い場合,ワンドへ向かう流れとなることから,湾曲部の位置による流れ構造と土砂堆積の違いを擬似的に表現するものである. 出水時に低速域が維持される河道構造については,透過型の石詰め金網枠を複数用いて,越流条件における低速域の確保状況と,平水時の水交換状況を調べる.魚類生息環境の必要条件となることから,豊川の現地河道に設置した環境対応の粗石群周辺の流れについて検討する.
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