2017 Fiscal Year Research-status Report
現業アンサンブル気象予報と人工知能を活用したダム弾力的操作支援システム
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16K06510
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野原 大督 京都大学, 防災研究所, 助教 (00452326)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アンサンブル予報 / ダム操作 / 弾力的操作 / 気圧分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度には、現業アンサンブル予報データを考慮した降水量・河川流量予測手法の開発と、予測シナリオ作成機構の構築を行った。具体的には、平成28年度に引き続き、過去の日本周辺の気圧分布をファジィ・クラスタリング手法を用いてクラスタリングを行い、代表的な気圧分布のクラスターを推定した上で、各クラスターに属する気圧分布と、その際に観測された対象流域の降水量との統計的な関係を算出した。その上で、得られた統計的な関係を用いて、現業アンサンブル予報データから実時間で流域の降水量予測値を算出するアルゴリズムの開発を行い、気象庁の週間アンサンブル予報の降水量プロダクトを用いて当該手法により降水量予測を行った場合の予測精度についての検証を行った。その上で、得られた降水予測情報から、分布型流出モデルHydro-BEAMを用いて、対象流域内のダム流入量や河川流量のアンサンブル予測値を算出できるようにした。その際、人為的な流況調整の影響によって流出計算の再現性が著しく低下しないよう、慎重にモデルパラメータの調整を行った。さらに、上述のプロセスによって得られる河川流量のアンサンブル予測情報を、ダム放流操作意思決定に役立てやすいよう、アンサンブル予測情報に含まれる情報を可能な限り維持しながら、より少ない数の予測シナリオに集約する手法の開発に取り組んだ。また、これと並行して、アンサンブル予測シナリオに基づいたダムの弾力的操作決定モデルの改良を行い、予測状況に基づいたダム弾力的操作の利水面での有効性の検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度までに完了する計画であった作業についてはおおむね完了または実施中であり、全体的に見て研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究計画を踏まえながら、アンサンブル予測情報に基づいたリスク情報やダム操作戦略の作成・決定機構の構築を行い、ダム弾力的操作支援システムの開発を行う。また、国内外の関連研究者との意見交換を適宜行うことによって、研究上の課題が生じた場合も早期に解消し、計画に沿った研究の遂行ができるよう配慮する。
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Causes of Carryover |
計算アルゴリズムの改良により、実時間ダム操作戦略推論機構の演算に必要となる計算機能力を小さく抑えることができる見込みであり、推論機構のアルゴリズムの開発が完了した時点で、必要な性能の計算機を調達することで、実時間ダム操作戦略推論システムの開発費用を抑えることができると考えられる。現在は、既存の計算機資源を活用してアルゴリズムの改良をさらに進めており、その結果を踏まえてから本計算へ向けた計算機の調達を行うことを企図し、平成29年度における計算機の調達を控えたことから、次年度の使用額が生じたものであり、次年度での確実な使用が見込めるものである。アルゴリズムの改良の成果によっては、計算機調達費用がさらに低下する可能性もあるが、次年度においては学術誌や学会における研究成果の公開の機会も増加するため、そうした目的で助成金を有効的に活用する予定である。
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