2016 Fiscal Year Research-status Report
風波界面におけるガス交換機構の解明と海面物質移動シミュレータの構築
| Project/Area Number |
16K06514
|
|---|
| Research Institution | Kyushu University |
|---|
Principal Investigator |
杉原 裕司 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (70243970)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
| Keywords | 水工水理学 / 海洋工学 / 地球環境水理学 / 界面水理学 / 地球温暖化 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では，風波界面における砕波・乱流過程とガス交換機構を反映した精度の高いガス交換速度モデルを確立し，そのモデルを気象場と波浪場の結合計算に実装した海面物質移動シミュレータの構築を目指している．初年度においては，モデルの高精度化の指針を得ることを目的として，水表面における乱流とガス交換機構の関係性について研究を行った．先行研究における乱流力学とハイブリッドモデルに関する知見に基づいて，ガス交換速度モデルの数理表現について再検討した．その結果，ハイブリッド型ガス交換速度モデルの風波特性量への応答およびモデルパラメータ依存性に関する新たな知見を得ることができた．また，温度成層と水表面の風応力の両方の効果を取り込んだ直接数値シミュレーション(DNS) を実行し，それらの効果が水表面のスカラー輸送にどのような影響を及ぼすかについて検討した．水表面に作用する風応力は，風波界面近傍の乱流構造を規定する重要な因子であり，その知見はガス交換速度のモデル化において重要である．本計算では水表面を有する最も単純な流れ系の一つである側方境界のない開水路乱流場の熱輸送を対象とした．温度成層と風応力の効果によって生じる水表面近傍の高速ストリーク構造と熱フラックスの空間構造の関係を解析した．水表面での流速場の発散（界面発散）は，風応力作用下の熱輸送においても重要な物理量であり，その影響は風応力と成層効果の相対的な大きさによって変化することがわかった．従って，温度成層効果は風波界面のガス交換速度のモデル化において重要である可能性が示唆された．さらに，水表面近傍の乱流およびガス交換速度の水槽実験での評価法に関する知見を整理して，室内実験研究の方法論およびデータ解析法について検討を行った．
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は，当初予定していた室内実験研究に優先して，ガス交換速度モデルの改良に資する知見を得るために数理表現および数値シミュレーションによる乱流構造やスカラー輸送に関する検討を行った．その結果，ガス交換機構に影響を及ぼす物理過程とガス交換速度のモデル化の知見について良好な成果を得ることができた．結果的に，室内実験研究を次年度にスライドさせることになったが，実験研究のための方法論やデータ解析法についても概ね準備ができていることから，次年度に実験研究を実施することが可能である．以上のように，研究計画全体として見た場合，研究目的の達成度は概ね順調に進展していると見なすことができる．
|
| Strategy for Future Research Activity |
風波界面での砕波・乱流過程とガス交換機構を明らかにするための風洞水槽実験を実行し，得られた実験データから乱流特性量やガス交換速度を算定する．それらのデータと数値シミュレーション等で得られた知見に基づいて，風波界面におけるガス交換機構を数理的に表現した改良型ガス交換速度モデルを提示する．また，既設の海洋観測塔における観測研究を行い，改良型ガス交換速度モデルの応用性やモデル定数等のチューニングを実施する．そして，気象モデルと波浪推算モデルを結合した数値シミュレーション手法に基づいて，海面物質移動シミュレータの構築・整備を行う．
|
| Causes of Carryover |
本年度に実施予定であった室内実験研究を次年度にスライドさせたため，その経費に関する残額が生じた．本残額は実験研究を実施する次年度に使用することとした．
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については，室内実験研究の遂行に必要な物品購入費などに充てる予定である．
|
Research Products
(1 results)
