2017 Fiscal Year Research-status Report
水面形の経時変化に基づく流量・粗度係数・河床高の時空間変化の推定法の開発
Project/Area Number |
16K06515
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
重枝 未玲 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70380730)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水面形の経時変化 / 流量 / 粗度係数 / 河床位 / 時空間変化 / 推定法 / 流束差分離法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,安全・安心が持続可能な河道管理に資する情報の取得を目的に,観測水面形の経時変化に基づき,実河道での流量,粗度係数,河床位の時空間変化の推定法を開発するものである.本研究では,観測水位ハイドログラフとデータ同化を行う推定法Iと水面形の経時変化から流量・粗度係数・河床位を直接推定する推定法IIを開発する計画であり,当該年度では以下を実施した. 推定法Iについては,上・下流端の水位と粗度係数を与条件とし,連続の式と運動方程式から水位と流量を求める方法に,河道内の堰,橋脚や橋桁の取り扱いを組み込んだ新たな推定法を開発した.実河川の洪水データに基づく検証から,同推定法が実河川での流量・水位ハイドログラフ,痕跡水位を十分な精度で再現できること,その予測精度は,河道内構造物や底面粗度によるエネルギー損失の影響を受けることから,本推定法が河道内の抵抗把握にも有用であることを示した.ただし,データ同化の技術の導入には至らなかった. 推定法IIについては,昨年度開発した推定法を,遠賀川水系の実洪水データに基づき検証した.同推定法が,樹木が繁茂する区間や湾曲区間を除いては,実河川の流量を±10%程度の誤差で,洪水痕跡より求められた逆算粗度係数をある程度推定できることを示した. さらに,推定法IIに合成粗度係数の取り扱いを組み込み,複断面水路へ適用できるように発展させ,同推定法をベースに,一様砂河床を対象とした流砂の連続の式を加えた流量・粗度係数・河床位の推定法を新たに開発した.実験結果に基づく検証から,同推定法は,複断面直線水路での流量ハイドログラフ,低水路と高水敷の流速差による干渉効果を含む粗度係数や水深の増減に伴う粗度係数の変化,一様砂河床での河床位,小規模河床形態によるそ度係数の増加を推定できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では,前年度開発した推定法に,単一粒径河床変動解析モデルを組み込み,水位・流量・粗度係数・河床高を推定する推定法IとIIを構築する計画であった.推定法Iについては,構造物の取り扱いや境界条件の取り扱いについて実河川データに基づく検証に予想以上に時間を要したため,データ同化の技術の導入や河床変動解析モデルの組み込みには至らなかった. 推定法IIについては,遠賀川水系の実洪水データに基づき検証し,洪水痕跡からピーク水位時の流量や粗度係数を推定可能であることが確認され,さらに,推定法IIを複断面水路へ適用できるように,合成粗度係数の取り扱いを組み込み発展させるとともに,これをベースに,一様砂河床を対象とした流量・粗度係数・河床位の推定法を新たに開発した.後述する実験結果に基づき,同推定法を検証し,同推定法が流量ハイドログラフや,低水路と高水敷の流速差による干渉効果を含む粗度係数や水深の増減に伴う粗度係数の変化,一様砂河床での河床位,小規模河床形態による抵抗の増加をある程度の精度で推定できることを示した. 推定法の検証に必要な実験データの収集については,複断面水路を対象に,水深方向に横断面形状と粗度係数が変化する実験や樹木群を有する複断面水路での固定床実験,小規模河床形態発生時の河床変動実験を実施し,データを収集している. 以上から,推定法Iのデータ同化技術や河床変動解析モデルの導入については当初の計画に比べやや遅れているものの,推定法IIの開発状況や実験データの収集については概ね計画通り,実河道への適用については計画よりも早く実施されている.このように,本研究の進捗状況は,当初の計画をおおむね順調である.
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Strategy for Future Research Activity |
推定法Iについては,パーティクルフィルターを用いた推定法の構築を引き続き行う.状態空間ベクトルを,水位,流量,河床高,粗度係数,観測ベクトルを水位とし,複数の観測点の水位ハイドログラフとデータ同化を行い,水位・流量・粗度係数・河床高の確率密度関数を求める推定法を構築する.推定法IIについては,混合粒径河床変動解析モデルを組み込み,水位・流量・粗度係数・河床高・河床材料の粒度分布を推定する推定法を開発する.推定法IIについては,新しい時刻の水位を与え,流量,粗度係数の諸量を求め,流れ方向の掃流力を算定し,流砂の連続の式から新しい時刻で河床位を求める.この河床位は新しい時刻での流積(水深)に影響を及ぼすので,流積が収束するまで繰り返し計算を行い,河床位と粒度比率を推定する方法を用いる.同推定法を,後述の実験結果で得られた水位・流量ハイドログラフや河床高の経時変化に基づき,各推定法の再現精度について検討する. 混合粒径移動床水路での定常・非定常流に対して,固定床と同様に,①横断面・平面形状,②堰や橋脚などの河川を横断する構造物を水路内に設置した移動床水路での定常・非定常流実験を行う.いずれの実験についても,水位,流量,河床高,下流端での流砂量および河床材料の粒度分布の時系列データを収集する. さらに,実河川の複数の出水に適用し,推定法IとIIの予測精度について検証を行う.また,痕跡水位を用いた定常解析によるピーク流量および粗度係数の推定も行い,粗度係数については,現状の痕跡水位に基づく逆算粗度との比較を行い,その違いを明確にする.
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Causes of Carryover |
データのバックアップのための消耗品が少なく済んだので,次年度使用額が若干生じた.未使用額については,実験やデータバックアップのための消耗品に充てる予定である.
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