2016 Fiscal Year Research-status Report
風外力場における越波と飛沫の系統的な水理実験に基づく定量的評価と護岸設計への反映
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16K06517
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
村上 啓介 宮崎大学, 工学部, 教授 (60219889)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海岸護岸 / 越波流量 / 飛沫量 / 水理模型実験 / 風外力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,越波および飛沫に対する風の影響を考慮した新たな護岸設計手法の構築を念頭に,水理模型実験を通じて風作用下における越波流量,飛沫量,および個々波に対する越波流量の出現頻度(特に,最大越波流量)に関する実験データの蓄積と定量的評価を行ない,風外力の影響を現行の護岸設計へ反映させる方法を提案することにある.研究期間は平成28年度から平成30年度までの3カ年であり平成28年度は初年度に当たる. 水理模型実験には2次元造波風洞水路(長さ17m,高さ1m,幅0.6m)を用い,整流された風を風洞内に吹かせた状況で不規則波を造波し,所定の時間内に護岸から陸側に輸送される水量を越波流量および飛沫量として計測した.平成28年度は,直立護岸,消波工被覆護岸,フレア型護岸を対象に,不規則波に対する平均越波流量と飛沫量を計測し,無風時と有風時の越波流量の関係を明らかにするとともに,風外力に対する越波流量および飛沫量の増加関数を求めた.実験風速は0m/s~8m/sで調整し,8m/sの風速は現地換算で25m/s程度の風速に相当する.模型縮尺は1/25を想定し,造波した不規則波の有義波高は0.09m,有義波周期は1.2s~2.0sの間で設定した.本研究では,実験結果をもとに,波浪条件と風条件から平均越波流量の推定式を提案した.さらに,護岸背後に輸送される飛沫量の水平分布についても,風作用下における飛散分布量を定量化するとともに,波浪条件と風条件から総飛沫量を推定する式を提案した. これらの研究成果は「平成28年度土木学会論文集B3(海洋開発)」特集号(Vol.73,No.2)に投稿し受理された.また,平成28年度土木学会西部支部研究発表会にて研究成果を2編に取りまとめて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,直立護岸,消波工被覆護岸,フレア型護岸を対象に,不規則波に対する平均越波流量を計測し,無風時と有風時の越波流量の関係を明らかにするとともに,風外力に対する越波流量の増加関数を求めることを当初の目的とした.越波流量に関わる要素は多く,その中でも相対護岸天端高,相対水深,入射波波形勾配,海底勾配は重要なパラメータである.本研究では,これらのパラメータに風速を系統的に組み合わせた実験ケースを設定して越波流量の計測を行った(設定風速:0m/s~8m/s.模型縮尺:1/25.有義波高:0.09m,有義波周期:1.2s~2.0s).実験結果より,直立護岸,消波工被覆護岸,フレア型護岸を対象に,無風時と有風時の越波流量の関係を明らかにするとともに,風外力に対する越波流量の増加関数を求めた.また,波浪条件と風条件から平均越波流量の推定式を提案した.さらに,護岸背後に輸送される飛沫量の水平分布についても実験を行い,風作用下における飛沫分布を定量化するとともに,波浪条件と風条件から総飛沫量を推定する式を提案した.また,フレア型護岸に関しては,風作用下における越波流量の低減工を提案し,その効果を水理模型実験で評価した. これらの研究成果は「平成28年度土木学会論文集B3(海洋開発)」特集号(Vol.73,No.2)に投稿し受理されるとともに,平成28年度土木学会西部支部研究発表会にて2編に取りまとめて報告した.以上より,研究計画として設定した平成28年度の内容は概ね実施されたと判断でき,達成状況は概ね順調と評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,直立護岸,消波工被覆護岸,フレア型護岸を対象に,不規則波に対する平均越波流量を計測し,無風時と有風時の越波流量の関係を明らかにするとともに,風外力に対する越波流量の増加関数を求めることを当初の目的とした.この目的に対して研究は概ね順調に進んでいることから,当初の研究計画に沿って平成29年度と平成30年度の研究を実施する予定である. 平成29年度は,風作用下における個々波(不規則波)に対する越波流量を計測し,越波流量の確率分布特性と最大越波流量に対する風外力の影響を明らかにすることを目的に水理模型実験を実施する.実験では,護岸越流時の流速と越流水深を同期して測定し,その測定値から越波流量を求める方法を採用する.この方法は,流速計と水位計を適切に防水加工する必要はあるが,流速と水深の測定値から越波流量を直接求めるので,流速補正等の不明瞭な作業を必要としない.また,平成28年度に引き続き,飛沫量の空間分布と護岸前面における水隗の運動の計測を画像解析等の手法を用いれ実施し,風作用下における飛沫空間分布量の定量化を進める.なお,護岸を越流する際の水深は極めて浅いため,水位計測に通常の波高計を用いることは難しい.よって,平成29年度の予算で本実験に適した水位計測装置を購入する予定である. 平成30年度は,それまでの実験結果を基に,風作用下における越波流量と飛沫量を現行の護岸設計に反映させる考え方を提案する.現行の護岸設計では許容越波流量を与条件に護岸天端高さを決定する.この時の越波流量を無風時の平均越波流量とし,風外力による越波流量の増加を加味した割増天端高係数を検討する.また,無風時の平均越波流量と個々波に対する最大越波流量の関係を整理する.
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Causes of Carryover |
実験材料費の価格変動により一部が安く購入できたため若干の差額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も水理模型実験を継続して実施する計画であり,生じた差額は次年度の材料費に含めて使用する予定である.
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