2017 Fiscal Year Research-status Report
蛍光砂を用いた混合粒径下における波打ち帯の漂砂移動特性に関する研究
Project/Area Number |
16K06521
|
Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
宮武 誠 函館工業高等専門学校, 社会基盤工学科, 准教授 (20435382)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 混合粒径 / 波打ち帯 / 漂砂移動 / 飽和・不飽和斜面 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の循環流実験により構築した画像の色相分離により混合粒径下での漂砂濃度を計測する画像計測法を用いて,波打ち帯の漂砂移動に関する可視化実験を実施した.今年度検討した砂浜斜面の底質は,昨年度の細砂の割合を最も多くした粒度分布の混合硅砂に加え,当初計画していた粗砂の割合を最も多くした配合及び各粒径を等配合とした混合硅砂である.実験方法は昨年度と同様であり,粒度分布を変化させた2パターンの底質で製作した砂浜斜面を飽和及び不飽和とした全4ケースについて検討した.その結果,細砂の割合を最も多くしたケースでは砂浜斜面の飽和度の影響を強く受けるのに対し,粗砂の割合を多くすると,その影響は消失し,発生する粒径別の漂砂量が斜面の飽和度によらず同程度になるとともに,それに伴い底質の粗粒化及び前浜勾配の急峻化といった汀線侵食現象が抑制され,砂浜斜面の安定化に寄与している等,粒度分布に応じた波打ち帯の漂砂移動特性及びそれらに及ぼす砂浜斜面の飽和度の影響を明らかにし,波作用後の前浜地形変化や粒度分布変化との関係にも言及した. また,昨年度前倒しで検討した混合粒径に適用させた遡上波変形と飽和-不飽和浸透流の連成数値解析モデルを用いて,今年度検討した2パターンの粒度分布を有する底質ケースについて計算し,地下水位及び遡上波水位の実験値と比較することで,モデルの再現性や妥当性を検討した.加えて,粒径別に求めた透過斜面の無次元掃流力と実験で得た粒径毎の蛍光砂量との定性的な傾向の比較及び分析を通じ,数値解析モデルの課題点を抽出するとともに,次年度の向けた改良方針を整理した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は細砂の割合を最も多く配合した混合硅砂を底質として砂浜斜面を飽和及び不飽和とした条件下で,波打ち帯の漂砂移動に関する可視化実験を実施した.その結果,斜面が飽和状態の場合,細砂成分の流出が著しくなり,前浜斜面底質の粗粒化や前浜勾配の急峻化が顕著になることから,底質の粒度分布よりも斜面の飽和度の影響が大きいことを指摘した.今年度は昨年度に引き続き,当初計画していた2パターンの配合による混合硅砂を用いて同様の実験を実施した.その結果,底質を構成する粗砂の割合が多くなるに従い,各粒径別の漂砂量は斜面の飽和度によらずほぼ同じ結果となることから,飽和・不飽和斜面による浸透・滲出流の影響はほぼ消失することを明らかにした.また,細砂を多く含む混合硅砂の場合よりも絶対量が少なくなるため,波作用後の前浜地形変化や粒度分布変化は小さくなり,粗砂による砂浜斜面底質の安定化効果を確認した. 一方,昨年度において混合粒径下での土壌パラメータの最適化が図られた遡上波変形と飽和-不飽和浸透流の連成数値解析モデルでは,今年度検討した2パターンの粒度分布に適用し,地下水位や遡上波水位の実験値との比較から,その再現性や妥当性を示した.加えて,単一粒径下で粒径別に透過斜面の無次元掃流力を計算し,実験で得た蛍光砂量の傾向と比較した.その結果,斜面の飽和度の影響が大きい細粒分を多く含む粒度分布のケースでは,実験値の傾向とよく一致することを確認した.しかし,粗砂の割合が多くなるに従い,斜面の飽和度の影響が消失するケースでは,底質の粒度分布の影響が顕著となり,各粒径において個別に算出した透過斜面の無次元掃流力では実験の傾向を十分に評価できないことを課題として提示するとともに,底質の粒度分布に応じて無次元掃流力が評価できるモデルとして交換層の概念を考慮したモデルの必要性を指摘した.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験で得た全3パターンの粒度分布を有する底質の漂砂量を定性的に評価可能な混合粒径下の無次元掃流力モデルの構築を試みる.これまでの検討から単一粒径下で粒径別に個別に評価していた透過斜面の無次元掃流力モデルに交換層の概念を組み込み,底質の粒度分布に応じて無次元掃流力を評価できるモデルに改良する.上述のモデルで得た混合粒径下に対する透過斜面の無次元掃流力は,模型実験で得られた蛍光砂量とは本質的に異なるが,分布形状の傾向などの定性的な比較を通じ,モデルの再現性や妥当性を明らかにすることで,混合粒径下での波打ち帯の漂砂量則の構築に向けた基礎的知見を得ることを目標とする.
|
Causes of Carryover |
(理由) 混合粒径下における透過斜面の無次元掃流力モデルにおいて,今年度実験を行った異なる2パターンの粒度分布を有する底質ケースに適用した結果,数値解析モデルの再現性及び妥当性が担保できず,平成29年度に計画していた国際学会における報告を見送っため,その分の経費において残額が生じた.また,現在,投稿中の国内査読付き論文も年度を跨いで登載が決定するものであり,その分の経費においても残額が生じた. (使用計画) 今後の研究の推進方策に従い,混合粒径下における透過斜面の無次元掃流力モデルを改良し,進捗状況に応じて速やかに国際学会へ論文を投稿し,計上予算を施行する予定である.また,構築した数値解析モデルの再現性及び妥当性が担保できない場合は,国際学会への論文投稿を中止し,国内査読付き論文の共著となっている研究協力者に助言を頂くため,研究打ち合わせの旅費として捻出する.なお,投稿中の国内査読付き論文においても登載の可否が決定次第,計上予算を履行する予定である.
|