室内実験による水流の阻流効果を利用した魚道の水理特性の解明

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K06522
• Research Institution: Kisarazu National College of Technology
• Principal Investigator: 石川 雅朗 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (30232268)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 水流魚道 / 魚道形式 / 流速分布特性 / 遡上魚 / ストリーム型魚道 / オリフィス / 静水圧

Outline of Annual Research Achievements

既存のストリーム型の魚道には，魚道水路に注ぎ込む流れの勢いを抑制するために，様々な工夫をこらした形状の阻流板が水路内に配置されている．この阻流板は，下流から上流へと遡る遡上魚の遡上経路を塞ぎ障害となる場合もある．また，上流から流れ込む土砂や流木が，阻流板があることによって堆積し魚道の機能を著しく低下させる場合もある．
本研究は阻流板を廃して，水流の阻流効果を適用した魚道（水流魚道）を提案し，室内通水実験を行い，水流魚道の水理学特性を明らかにすることを目的として実施する．さらに，実魚を用いた遡上行動観察実験を行い，水流魚道の魚類の遡上改善効果を評価する．
水流魚道は申請者が考案したもので，類似の形式を持った魚道はなく設計例もない．水流魚道は魚道部（矩形水路）の両側に貯水部を設けて魚道部水路の側壁に連続したオリフィスを配置して，そこから流出する水流によって，魚道部の本流の水制を抑制しようとするものである．まずは，静水圧とオリフィス流出，開水路の等流計算といった水理学の基本理論を用いて，貯水部に設けたオリフィスからの流出，魚道部（矩形水路）の水位計算の試算を行い，室内通水実験で用いる魚道ユニットの設計を実施した．次に行う予定のオリフィスからの流出を上流方向に向けて水勢の抑制効果を高めるために取り付けるノズルについても検討し，必要な部品を選定した．
次に，設計した水流の阻流効果を利用した室内実験用の魚道ユニットを製作した．加工作業の容易さを考えて，基本材料として耐水合板を用いて魚道ユニットを作成した．予備的実験として，プロペラ流速計を用いて，魚道ユニット内の平面流速分布の測定を実施した．その結果，水路両側に配置した貯水部のオリフィスからの流出によって，水路横断方向中央部の流速が相対的に小さくなり，阻流板を配置した魚道と同様な水勢の抑制効果が得られることを確認した．

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

水流魚道は申請者が考案したもので，申請時，類似の形式の魚道に関する研究を見出すことは出来なかった．水流魚道の水理特性は未解明である．
貯水部に設けたオリフィスからの流出量，魚道部（水路部）の水位計算など，水理学の基本理論に基づいて試算を行い，魚道ユニットを設計した．参考とする関連資料はほとんどなく，一からの設計であり，設計に時間がかかってしまった．
加工の容易さを考えて，魚道ユニットの基本的な部材は耐水合板を用いたが，部材の加工や組み立て方法などを考えながら作業を進める必要があり．多くの時間がかかってしまった．
実験を実施する室内実験水路との取り付けなど，現場合わせで対応すべき加工作業もあり，多くの時間を費やしてしまった．

Strategy for Future Research Activity

昨年度（平成２８年度），水流魚道の魚道ユニットに時間がかかり，計画の進捗状況は遅れている．平成２９年度は流速分布測定実験を予定している．平成２８年度予定の実験未実施分のケースについては，平成２９年度の実験と併せて実施する予定である．水流魚道ユニット設計時に，今年度検討予定の流出オリフィスに取り付けるノズルの検討と実験準備は完了している．魚道ユニットの基本形がある程度できているので，実験ケースを吟味しながら実験実施すれば遅れは十分に取り戻せると考えている．

Causes of Carryover

魚道ユニットの製作の一部を，専門的な技術を持った外部業者に委託しようと考えていたが，魚道ユニットの設計に時間がかかり，発注することが出来なかった．当初，実験補助（謝金）を考えていたが，適当な人材を見出せず，実験を直営で実施したため．

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成２９年度には，魚道ユニットの一部製作作業を外部に委託したいと考えている．また，今年度は室内実験の作業量が多くなるので，適当な人材を見いだせれば，当初の計画通り実験補助を依頼したいと考えている．