2016 Fiscal Year Research-status Report
松島湾の泥の物理的変遷解明に基づいた閉鎖性海域の長期環境評価
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16K06526
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
長尾 正之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (70251626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 修 東北大学, 工学研究科, 教授 (80208214)
高橋 暁 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (30357371)
新谷 哲也 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 助教 (80281244)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地形 / 数値モデル / 堆積物 / 再懸濁 / 環境影響評価 / 松島湾 / 津波 / アマモ場 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国沿岸では規制により水質改善が進んだが、大都市圏を抱える湾では化学的酸素要求量(COD)が横ばいで、その原因が湾奥海底の泥に起因する可能性がある。また、2011年3月11日の東日本太平洋沖地震・津波で壊滅的被害を受けた宮城県松島湾のアマモ場が、未だ回復しない原因として、地震・津波発生前から堆積していた泥の関与が示唆されている。そこで、松島湾をモデル水域とし、泥の長期変遷研究を行う。まず、泥の基本性状や関連情報の変遷を、先行研究・調査、提案者が2012年・2014年に行った調査結果、ならびに研究期間中の最新データも加えて、明らかにする。また、堆積物表層の難分解性有機物・脂肪酸・ベントスの変遷も示す。次に、震災前・津波襲来時・現在の三時点の海底地形・海岸線に基づき湾内流況再現から、物理環境の差違を評価する。 今年度は、2016年9月30日から10月2日にかけて、宮城県松島湾において、海底堆積物の採取を行った。このとき、東北大学が借り上げした用船で松島ヨットハーバーから出船し、2014年と同じ海底堆積物の採取地点(28地点)で、表層体積物を採取した。さらに、採取地点の全てで多項目水質計により、水質鉛直分布を測定した。また、仙台で分析に関して研究打合せを行ったほか、数値実験について分担者との間で打合せを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年3月11日の大地震と津波により被災した宮城県松島湾海底の生態系の修復過程と堆積状況変化を明らかにするため、現地調査を行った。9月30日(金)は東北大を訪問し研究打合せを行った10月1日(土)は松島ヨットハーバーより東北大が借り上げした用船で出港し、28地点で表層体積物を採取した。また採取地点での水質鉛直分布を水質計で取得した。調査終了後、調査機材と試料を宅配便により各所属機関に塩釜市内より発送し、その後仙台に宿泊した。10月2日(日)は仙台でより帰任した。本調査により、松島湾海底の生態系の修復過程と堆積状況変化に関する基礎データの蓄積をはかることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
1960年代・1990年代、2012年・2014年の海底海岸線地形変遷と泥の含泥率、粒径分布、含水率、有機炭素含有量等の基本性状の変遷を、文献値と公的機関環境モニタリングに基づいて復元する。 海上保安庁から航空レーザー測量結果の提供を受け、国土地理院が作成した沿岸海底地形図に基づいた震災後海底地形の補正を行う。また、過去から現在までに刊行された海図や国土地理院地形図をさかのぼって収集し、地形改変の変遷について情報を収集する。 また、産総研が行った津波水理模型実験で未解析のフロート追跡画像データの解析を行い津波襲来時の水平流速分布図を作成する。地形について、一部水域について最新データが得られていない区域については、独自に地形調査を行うため、その準備作業を行い、予備的な調査を開始する。 また、オブジェクト指向型流体モデルをもとにした松島湾に対応した数値流動実験のプログラム開発を行う。 また2012年と2014年の共同調査で採取した泥の分析結果をとりまとめる。
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Causes of Carryover |
初年度に計画していたワイドバンドマルチビーム測深機による海底地形調査が日程などの都合で行えなかったため、使用予定だった調査旅費、調査補助費、レンタカー代、機材輸送費、用船費を執行しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「研究計画調書」の「研究が当初計画どおりに進まない時の対応など」に記述したとおり、3年の研究期間内で予定を変更して柔軟に対応する。予定しているワイドバンドマルチビーム測深機によるデータ取得は、調査期間を変更して改めて実施する。
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