2016 Fiscal Year Research-status Report
地域コミュニティの社会ネットワーク形成過程を考慮した公共空間の価値評価手法の開発
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16K06537
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
横松 宗太 京都大学, 防災研究所, 准教授 (60335502)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土木施設 / 社会ネットワークモデル / 災害 / 救援物資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、地域の祭りや災害時の助け合いなどの非日常的イベントにおいて生まれる、地域住民の間のつながりやソーシャルキャピタルの価値を定量的に評価することを通じて、土木施設や公共空間の便益を評価する手法を開発することを目的とする。 28年度は、初めに、「災害ユートピア」とも表現される、災害時に生じる利他的動機が、地域社会のネットワークに日常とは異なったインパクトを与え、その後に地域社会のネットワークが異なった形成過程を辿る現象について分析し、国際学術誌Natural Hazardsにおいて発表した。次いで、災害時の救援物資を避難所に分散備蓄した上で、災害時にそれらを融通することによって、避難者の災害後3日間の必要物資を保証しながら備蓄費用の低減を図る「地域間リスク分散型備蓄モデル」を開発し、国際学術誌Journal of Natural Disaster Scienceにおいて発表した。 また、熊本地震の後に熊本に出向き、地域外から送られる救援物資の倉庫で調査を行い、利他的動機によって送られる救援物資のデータを収集するとともに、官民のコーディネーションのあり方について考察し、国際総合防災学会にて口頭発表した。 一方、地域の祭りに関しては、新長田商店街のアーケードで開催される縁日がもたらす社会ネットワークの拡大効果の分析に着手した。祭りという共同的実践の階層と、日常生活の階層による階層型社会ネットワークモデルを定式化し、その動学的な拡大過程を考慮することを通じて、商店街アーケードがもたらす、住民の交流拡大機能を定量的に評価する枠組みを作成し、土木計画学研究発表会(春大会)と国際総合防災学会にて口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
28年度の計画は、1)祭りモデルと2)災害時助け合いモデルの二つの理論的枠組みを定式化するとともに、3)実証研究の準備として新長田商店街のアーケードにおける共同備蓄の調査を行うことであった。それらのうち、2)に含まれる、商店街住民による物資の融通に関する理論モデルの定式化が若干遅れているものの、その基礎となる「災害時助け合いモデル」を国際学術雑誌で発表したことや、熊本地震の機会を地域外からの物資提供の実態調査としたことは、当初の計画にない進展となった。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、当初の計画通り、「祭りモデル」に関しては、アンケート調査で収集したデータを用いた定量的研究を完成させる。また、「災害時助け合いモデル」では、商店街における住民間の物資融通の理論モデルを開発するとともに、データ収集と数値シミュレーションを行う。
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Causes of Carryover |
28年度は計画された研究がおおむね予定通り進行し、さらには当初は想定していなかった成果も得られた。一方で、29年度の上半期に特定研究員を3か月間雇用して、フィールド調査とシミュレーションのコード開発を集中的に進めることが効率的であることが明らかになった。そのため、28年度の研究費の一部を繰り越して、雇用費に充てることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度の上半期に特定研究員を3か月間雇用する。そのためには社会保険料込みで約90万円の経費が必要になる。次年度繰越額によってその一部をカバーする計画である。
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Research Products
(12 results)