2017 Fiscal Year Research-status Report
都心商業地域における来街者による事前の活動計画の変更挙動を考慮した回遊行動モデル
Project/Area Number |
16K06539
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小谷 通泰 神戸大学, 海事科学研究科, 名誉教授 (00115817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 康仁 流通科学大学, 商学部, 准教授 (50321485)
寺山 一輝 石川工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (50780897)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都心商業地域 / 活動分析 / 回遊行動モデル / 中心市街地の活性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都心商業地域への来街者を対象に、回遊行動に関わる意識調査を実施し、事前の活動計画と実現された活動との差異から計画の変更挙動の要因を抽出するとともに、こうした変更挙動を考慮した回遊行動モデルを構築する。これによって、来街者による回遊行動のメカニズムを明らかにし、回遊行動を促進するための方策を見出すことを目的としている。なお、研究対象地域として、神戸市の都心部を取りあげている。 そこで、本年度は、都心商業地域への来街者を対象として、意識調査を継続して実施するとともに、得られた調査結果から回答者による回遊行動をトリップチェイン(目的地間の移動の連鎖)として整理した。そして、事前の活動計画からの変更挙動の有無別に回遊行動の実態の違いを、総訪問目的地数、総滞在時間、総移動距離、活動空間の大きさなどの指標を用いて分析した。この結果、変更挙動がある場合には、総訪問目的地数、総滞在時間・移動距離はいずれも増大し、活動空間が拡大することが明らかになった。さらに、回遊行動を回遊継続・帰宅選択、目的地選択の2段階の選択行動として捉え、非集計ロジットモデルを用いてモデル化した。前者の回遊継続・帰宅選択モデルでは、累積の滞在時間や移動距離、個人属性など、目的地選択モデルでは目的地までの移動距離、目的地の魅力度などの要因を説明変数として用いた。この際、変更挙動の有無別に回遊行動モデルを構築し、変更挙動の有無が回遊行動に及ぼす影響を考察した。この結果、比較的良好な推定精度のモデルが得られ、変更挙動を行う場合は行わない場合に比べて、両者のモデル間に密接な関係がみられ、各時点での回遊行動の履歴(累積の滞在時間、移動距離)および目的地周辺の環境(店舗の集積度、店舗までの距離)の影響をより顕著に受けていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回遊行動の全体的な特徴を把握するため、回遊行動に関わる意識調査結果から訪問目的や訪問店舗の組み合わせパターンを抽出し回遊行動を類型化するとともに、回遊行動を特徴づける回遊時間、回遊距離、訪問店舗数等の指標に対して、これらの組み合わせパターンや個人属性が及ぼす影響を明らかにした。得られた成果については、審査付き論文として公表した。また、回遊行動をトリップチェインとして整理し、事前の活動計画からの変更挙動の有無別に回遊行動の実態の差異について分析した。特に、活動空間の大きさを評価する指標(回遊開始地点から活動拠点(目的地間の重心)までの隔たり、および活動拠点を中心とした目的地の空間的な広がり)を用いることによって、変更挙動の有無による回遊行動の違いを定量的に示すことが可能となった。そして、回遊行動を回遊継続・帰宅選択、目的地選択の2段階からなる選択行動として捉え、非集計ロジットモデルによりモデル化を行った。この際、目的地を100mメッシュで表現するとともに、多数の目的メッシュからなる選択肢集合を効率的に作成できるように工夫した。回遊行動モデルを変更挙動の有無別に構築した結果、比較的良好な推定精度のモデルが得られ、回遊行動に影響を及ぼす要因の違いを明らかにすることができた。現在、得られた成果については公表の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
神戸市の都心商業地域への来街者を対象に、引き続き意識調査データの収集を行う予定である。そして、事前の活動計画からの変更挙動の有無別に構築した回遊行動モデルの精緻化を図りたい。具体的には、目的地メッシュの設定方法(メッシュの大きさ)、目的地メッシュの魅力度の定義(店舗の種類・規模の考慮など)、新たな説明要因(観光スポットの考慮など)の追加を行いたい。また、データ数を十分確保したうえで、事前の活動計画からの変更挙動と計画を変更した理由(気になる店舗を見つけた、時間に余裕ができた、休息したかったなど)との関連について明らかにするとともに、こうした変更理由別にも回遊行動モデルを構築し、回遊行動に影響を及ぼす要因をより詳細に検討したい。これらの分析を通じて、回遊行動のメカニズムを解明し、回遊行動を促進するための方策を見出したい。さらに、具体的な方策について構築したモデルを用いて効果の検証を行いたい。
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Causes of Carryover |
主として、調査データの集計・解析作業の効率化が図られたことにより経費が節減できた。これらの節減額は、次年度における研究成果の公表等に充当する予定である。
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Research Products
(3 results)