2017 Fiscal Year Research-status Report
階層的な空間経済における交通整備効果評価手法の開発
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16K06542
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
石倉 智樹 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (30356050)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 空間的応用一般均衡モデル / 地域間交易 |
Outline of Annual Research Achievements |
SCGEモデルを実世界の政策効果分析に適用するためには,分析対象時点における分析対象地域の経済状態(これを基準均衡と言う)を再現するようにモデルパラメータを決定する「キャリブレーション」と呼ばれるプロセスを要する.データ整備状況が芳しくない国を含む場合や,交易データが部分的にしか入手できない都市圏レベルでの地域間交易を扱う際には,輸送・交通抵抗を推定するためのデータが不完全な場合を想定する必要がある.一般的なSCGEモデルのキャリブレーションにおいては,モデルと整合するデータが完全であることが想定されているが,任意の空間規模に適用可能な空間経済モデル構築にとって,不完全な地域経済・交易データからキャリブレーションを行うことが不可欠である.今年度は,輸送抵抗のパラメータキャリブレーションに関して,空間階層間で共通な効果と異なる効果を分離するため,Fixed Effect Gravity法に加えて,Santos Silva & Tenreyro(2006)が提案したPPML(Poisson Pseudo Maximum Likelihood)法を応用し,地域間交易データが不完全な場合においてもキャリブレーションを可能とする方法を構築した. 本キャリブレーション手法を適用し,全国都道府県間の交易に対して推定したパラメータを,関東地域において市町村単位に分割した多地域モデルへ応用し,首都圏における環状道路整備政策を事例にシミュレーション分析を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,理論モデルを現実世界に適用するにあたり不可欠となる,キャリブレーションの過程を充実させることを計画していたが,当初の予定どおりに手法を確立させることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,構築した理論モデルを,実用的な多階層型SCGE分析システムとして構築し,運輸交通政策シナリオへの適用を予定している.
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Causes of Carryover |
モデルのキャリブレーションに用いる計算手法とデータを見直すことにより演算システムへの負荷が軽減されたので,計算機のスペックを低下させ経費を節減した.このため,物品費に余剰が生じている.一方,モデルの理論開発とキャリブレーション手法の開発の途上において,新たに得られた理論的知見があったため,当初予定よりも学会発表の回数を増加させることとした.このため,学会参加旅費が追加的に必要となったが,物品費の余剰でほぼ相殺される.次年度使用額については,海外学会参加のための旅費として使用する予定である.
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Research Products
(4 results)