2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K06555
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
崎田 省吾 県立広島大学, 生命環境学部, 准教授 (80398099)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市ごみ焼却灰 / 炭酸化 / 二酸化炭素 / ウルトラファインバブル |
Outline of Annual Research Achievements |
雨水によって廃棄物埋立層から排出される浸出水は非常にpHが高く,有害物質等が含まれている。また,特にpHに関しては長期間にわたり高い状態が続くことから,最終処分場の廃止基準(pH5.6~8.6)に達するのに時間を要する原因となっている。実埋立地は,廃棄物層が何層にも重なった多層構造をしている。一方,埋立地を模擬した室内カラム通水試験ではほとんどが単一層カラムで行われていることから,著者らは前報で,都市ごみ焼却灰を充填した単一層カラムに通水後,新たに焼却灰を一層目の上に充填して二層カラム通水試験を行い,さらに同様に三層カラムにして通水実験を行い,浸出水水質を検討した。その際,水飽和状態で実験を行うことを目的として上向流で通水したため,実際の埋立地を模擬するには至らなかった。そこで,浸出水水質の挙動を把握することを目的として, 1本のカラムを用いた複数層通水ではなく,個別に単一カラムを作成してそれらを連結し,上向流で通水させた実験を行った。その結果,実際の埋立層を模擬したこれまでの単一層カラムでは浸出水水質の挙動を十分に把握することは困難であり,本法のような新たなカラム通水試験法が必要であることが示唆された。 次に,促進炭酸化について検討した。炭酸化処理に関する従来の研究では,湿潤焼却灰にCO2を通気する手法が用いられてきた。本研究では,CO2の超微細気泡を水中に含有させた溶液(CO2ウルトラファインバブル水)を直接,焼却灰に含水させて炭酸化処理を実行し,処理時間の短縮,操作性の向上を定性的にではあるが検討した。一般廃棄物焼却灰の炭酸化処理に必要とされるCO2量,含水率(30または50%)では,CO2ウルトラファインバブル水では必要十分なCO2を供給することが出来なかったことから,改善策を引き続き検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,未処理焼却灰,炭酸化処理焼却灰を用いて,単一層カラム通水ではなく,単一層カラムを複数接続した複数層カラムを用いて通水試験を行った。その結果,ECにおいては単一層カラムと複数層カラムとでは,浸出水水質が異なる挙動を示す結果が得られた。すなわち,実際の埋立層を模擬したこれまでの単一層カラムでは,浸出水水質の挙動を十分に把握することは困難であり,本法のような新たなカラム通水試験法が必要であることが示唆された。一方,浸出水pHは,特徴的な差異は認められなかった。焼却灰含有成分の溶出によってpH, ECの各値が決定されることを考慮すると,今後は,浸出水溶解成分の濃度(例えばCa等の無機成分)を併せて浸出水水質の挙動を理解する予定である。 促進炭酸化については,研究代表者らの過去の研究より、焼却灰は1mmol-CO2/g程度の炭酸を吸収することがわかっている。つまり、焼却灰50gでは50 mmol-CO2必要であると考えられる。含水率を考慮してCO2ウルトラファインバブル水を用いた炭酸化処理を行う場合、オーダーで2桁程度CO2量が不足していることが示された。CO2ウルトラファインバブル水のCO2濃度が当初予定していたよりかなり小さかったためであるが,改善策として,酸添加による炭酸化処理を改善策として対応を継続している。 以上より,一部において当初期待していた結果とは異なる結果が得られたが,改善策を検討して継続実施している。したがって,本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
都市ごみ焼却灰の促進炭酸化については,CO2ウルトラファインバブル水を用いた研究を継続して行う。昨年度,純水溶媒のCO2ウルトラファインバブル水では十分な効果が得られなかったことから,酸を添加したCO2ウルトラファインバブル水によって,含有重金属,塩類の促進炭酸化を検討する。また,促進炭酸化炭酸化処理の主なメリットは,焼却残渣含有重金属の不溶化,清掃工場から排出される実排ガスを用いることによるCO2排出量の削減,埋立前処理として導入する場合の廃止期間短縮による維持管理コストの削減,骨材(砂利等)等としてのリサイクルを想定した場合,天然骨材の使用を低減できる,等が考えられる。一方,デメリット(または懸念される点)として,天然骨材を用いた方がコスト的に有利である,長期的な安全性を担保できるか,等が考えられる。各視点において様々な異なる指標が存在するが,結局,廃棄物処理処分やリサイクルにおいて,炭酸化処理は積極的に導入すべき技術(方法)なのだろうか,との問いが生じる。ここでは,物質輸送計算ソフトHydru-2Dや化学平衡・反応速度計算ソフトPhreeqCを用いてシミュレーションする。メリット・デメリットを考慮した合理的判断においては,LCCおよびLCCO2評価のみならずUNEPの生態系と生物多様性の経済学モデルによる生態系サービスの観点からも妥当性を考察する。
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Causes of Carryover |
主たる支出予定としていた試薬類,分析機器用ガス(アルゴン,純空気,窒素)の支出が予定より少なく済んだため。翌年度分を含め,適正な予算計画,使用を心掛けたい。
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Research Products
(2 results)