2016 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム分子生物学による生存可能な病原性細菌の直接計数法の研究開発
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16K06559
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
矢口 淳一 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80342450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 歩 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60523800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | rRNA / 大腸菌 / PMA / PCR / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には、先ず細菌細胞内に遺伝子が多く存在するrRNA遺伝子を利用したPMA-qPCR法について生存可能な大腸菌の定量方法を検討した。従来用いてきたuidA遺伝子と比較し、PCRでの対象遺伝子の違いによる分別効果の差異とPMA処理における必要なPMA濃度を実験で求めた結果、23S rRNA遺伝子を対象としたプライマーセットはどちらも10×(-1)(copy数/PCR反応液)レベルまで大腸菌の定量が可能であり、特に、EC23S857は10×(-2)レベルまで検出可能だった。また、PMA-qPCR法の分別効果は、EC23Sのプライマーセットが最も効果が顕著だった。PMA濃度実験では、PMA試薬は大腸菌菌株NBRC3301では10μM、JCM1649では50μMで分別効果が得られることが分かった。 全細菌を対象としたPMA-qPCR法の研究開発では、probeを利用したリアルタイムPCR法の方が増幅効率が100%に近く、またSYBERGreenを使用したPCR法を河川サンプルに適用すると、目的外の遺伝子増幅が認められ、probeを利用したPCRの方が全細菌の検出に適していた。PCRおよびPMA-PCR法による河川サンプル中の全細菌数の計測は、BacLight法に比べ非常に少なく、この原因に関しては今後検討していく必要がある。 さらに次世代シーケンサーによる細菌叢解析については豊橋技大で行われた研修に参加し、サンプルの作成方法とデータの解析手法を学んだ。河川サンプルの解析結果から、存在割合2%以上の細菌群のみでは全体の2~3割しか占有しておらず、残りの6~7割は様々な種類の細菌が非常に少ない割合で多数存在していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究成果で示したように、rRNA遺伝子によるPMA-qPCR法を利用した生存可能な大腸菌の定量について、PMA処理条件とPCR反応条件が確立できた。全細菌群を対象としたPMA-qPCR法の研究では、プライマーを含めたPCR条件の再検討が必要である。今年度当初予定していたRNAを直接利用するRT-PCR法についても、RNAの抽出と逆転写酵素を使用したワンステップRT-PCR法においてEC23S857プライマーセットで高感度で検出できることが確認できた。 PMA-qPCR法の分別効果を改善できると報告されているターゲット遺伝子の塩基長と、2ステップで増幅を行うnested PCRの関係についても検討した。次世代シーケンサー解析で増幅させる16S rRNA遺伝子のV3, V4領域(塩基長460bp)と16S rRNA遺伝子全領域(塩基長約1500bp)について、3つの熱処理した細菌株を用いてPMA処理による分別効果を比較した。電気泳動結果から3つの細菌ともV3, V4領域を増幅した場合PMA処理で検出されず、一方最初のステップで16S rRNA遺伝子全領域を増幅させた後にV3, V4領域をPCR増幅させたnested PCR法では、3つの細菌とも検出された。そこで第1ステップのサイクル数を短くしてnested PCRを試みたところ検出されない結果が得られた。 このようにRT-PCR法やnested PCR法についても研究成果が認められ、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度前半は、RT-qPCR法の確立と分別効果を改善できると報告されているnested PCRの有効性を確認する。後半からいよいよPCR反応で得られた増幅産物(アンプリコン)に対して次世代シーケンサーで細菌叢の解析を行う。次世代シーケンサーには、1塩基伸長反応と蛍光検出を組み合わせた可逆的ターミネーター法を基礎とするイルミナ社のMiSeqを利用する。可逆的ターミネーター法は、他の方法と比較して連続して読み取れる塩基長は短いが正確性が高く、MiSeqでは解読塩基長は(300 bp×2)であるが、1回のランで4500万リード(塩基配列数)という厖大なデータが得られる。 先ず、次世代シーケンサーによる細菌叢の解析手法を確立するために、購入した3種以上の細菌菌株を用いてPCR法、PMA-PCR法、nested PCR法及びRT-PCR法を使用してMiSeqによる解析結果から、検出感度、検出限界、細菌叢の分布状況、キメラ発生状況等を比較検証し、生理的活性のある細菌群のみを網羅的に検出する方法を確立する。その後実際に排水や環境水サンプルを用いて4つの手法について比較検討する。次世代シーケンサーによる細菌叢の解析手法が確立でき次第、水環境中の細菌群動態調査を開始する。 rRNA遺伝子によるPMA-qPCR法を利用した生存可能な大腸菌の定量については、PMA処理条件とPCR反応条件が確立できたので、RT-qPCR法が確立でき次第実際の排水や環境水に適用して両者の結果を比較する。全細菌群を対象としたPMA-qPCR法の研究ではプライマーを含めたPCR条件の再検討を先ず行い、大腸菌と同様にRT-qPCR法と比較する。実際の環境水を次世代シーケンサーで解析する場合には、同時にリアルタイムPCRによる全菌数、PMA-qPCR法とRT-qPCR法による生存可能な菌数測定も行う。
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Causes of Carryover |
細菌細胞破砕装置であるビーズビーダ―の調子が昨年10月頃よりおかしく、機能しなくなる恐れがあったため資金を予備的に確保しておいた。今のところとりあえず機能に問題はない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はRT-PCRを中心に実験を進め、それに関連する試薬にかなり予算が必要なので、RT-PCR関連試薬に優先的に使用するつもりである。余裕があったら、ビーズビーダ―の修理か更新を検討する予定である。
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