2016 Fiscal Year Research-status Report
巨大地震に対するRCパッシブ制振建物-地盤連成系の非線形最適制御設計法の開発
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16K06564
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白井 和貴 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20610968)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯場 正紀 北海道大学, 工学研究院, 教授 (40344006)
菊地 優 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50344479)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パッシブ制振構造 / 地震応答 / 最適ダンパー / 建物と地盤の動的相互作用 / スウェイ・ロッキング / 摩擦ダンパー / 履歴ダンパー / 振動台実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には主に、最適ダンパー特性の定量的評価を目的として、次の1、2を実施した。 1.建物と地盤の動的相互作用(SSI)を考慮したパッシブ制振構造の振動台実験を実施し、得られた結果に基づいて最適ダンパー特性を分析した。振動台実験の試験体として、摩擦ダンパーを有するパッシブ制振構造とその下部に地盤のスウェイ・ロッキング(SR)挙動を模擬した機構を組み入れた連成系模型を使用した。試験体のばね材などの各部品を交換することでダンパー支持材剛性や地盤スウェイ剛性などを変化させ、さらに入力地震動の周波数特性や入力レベルを様々に変化させることで、多ケース・多変量の振動台実験を行った。この結果、地盤条件、ダンパー支持材剛性、地震波入力レベル、地震波周波数特性の違いにより、地震応答を最小化する最適ダンパー摩擦耐力が変化することを確認した。一般に耐震構造ではSSI効果によりSRを考慮した場合の地震応答は小さくなることが多いとされているが、本実験では複数の加振ケースにおいて最適ダンパー摩擦耐力付近でFIXと比べてSRの地震応答が大きくなる結果が得られた。 2.振動台実験で用いたSR制振構造試験体を質点系モデルでモデル化し、スペクトル特性の異なる地震波入力による地震応答解析を行った。また、実大建物の設計例を参考にし、SR地盤-制振建物の多質点系モデルによる地震応答解析を行った。地震波のスペクトル特性、基礎の種類、主架構の特性を変化させた多ケースの解析の結果、最適ダンパー値付近でFIXとSRで最大応答が逆転する場合が少なからず起こることが示された。 これらの検討により、制振構造の設計の際にSSIの影響を適切に考慮することの重要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には、建物と地盤の動的相互作用(SSI)を考慮したパッシブ制振構造の振動台実験を実施し、その結果に基づいて最適ダンパー特性を分析した。また、振動台実験で用いたSR制振構造試験体を質点系でモデル化し、地震応答解析を実施した。さらに、実大スケール建物の設計例を参考にした制振建物-SR地盤の多質点系モデルによる地震応答解析を行い、最適ダンパー特性を分析した。当初計画で予定していた内容をほぼ実施できたことから、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初計画にしたがって、今後の研究を推進する予定である。平成29年度には、非線形地震応答推定手法の構築を目的として、時刻歴解析に依らない簡便な非線形地震応答推定手法を提案するとともに、その妥当性を検証する予定である。平成30年度には、非線形最適制御設計法の開発を目的とし、制御理論に基づいて最小のダンパー量で地震応答を目標値以内に抑えることを可能にする制御設計手法を提案するとともに、その妥当性を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度に実施した振動台実験において、過年度に製作し使用済みの試験体を適切に活用し、一部の部品を新たに交換することで、本研究の振動台実験に再利用することができた。このために、実験にかかる費用を抑えることができた。この結果、当初計画と比べて平成28年度の物品費の実支出額が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に計画している振動台実験のための費用として使用する予定である。あわせて、当初計画の段階では全体の予算が限られているためにやむを得ず計上できなかったが、本研究を円滑に遂行し期間内で成果を達成するための人件費・謝金の費用として平成29年度および平成30年度に使用する予定である。
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