2016 Fiscal Year Research-status Report
杭支持層が傾斜した地盤における杭基礎の耐震設計法の提案
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16K06565
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
三辻 和弥 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (90292250)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 杭基礎建物 / 不整形地盤 / 東日本大震災 / 耐震設計 / 地震観測 / 常時微動観測 / 数値解析 / 有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災で被災した、杭支持層が傾斜した建物の被害調査、常時微動、地震観測記録に基づき、2次元有限要素モデルを作成して数値解析を行った。数値解析では対象建物に設置した地震計で得られた余震記録に基づく線形解析を実施して解析モデルの妥当性を確認した。対象建物は長辺約100m、短辺10mの細長い平面形状をしたRC造5階建ての住居棟と3つの階段棟から構成されている。解析モデルでは、上部構造をせん断多質点系、階段棟を曲げ要素でモデル化し、杭は住居棟、階段棟とも曲げ要素でモデル化し、南北2つの構面の2本の杭で支持するモデルとした。上部構造の固有振動数は3.5hz、地盤の卓越振動数は2.5Hzと設定している。線形解析に引き続き、本震記録を入力地震動とした非線形解析を行った。地盤はR-Oモデル、杭および上部構造はBi-linearモデルで非線形モデルを設定した。入力地震動は仙台市中心部で観測された本震時の記録を用いて、本震時の建物の動的挙動を推定した。 2次元有限要素法による非線形解析の結果から、本震時の階段棟の杭頭部分では終局耐力を超える大きな曲げモーメントが得られた。また、住居棟では杭長の短い北側杭では終局曲げモーメントに達しなかったものの、杭長の長い南側杭では杭頭部で終局曲げモーメントに達していた。 さらに上記の被災シミュレーションに用いたモデルを一般化して、杭支持層の傾斜が杭頭部の地震時応力に与える影響を検討した。検討手法は2次元有限要素法を用いた地震応答解析であり、短辺10mの上部構造を支える2本の杭の長さを12m-2mから12m-2mまで2mおきに変化させて支持層の傾斜角の影響を考慮した。解析結果より、杭長の長い杭に対する短い杭の地震時杭応力は曲げモーメントで2.2倍から3.7倍で変化し、杭支持層の傾斜角が大きくなるほど短い杭の地震時応力が大きくなる傾向を定量的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた、東日本大震災で被災した杭支持層の傾斜した建物の被災要因推定については、2次元有限要素法による非線形地震応答解析を実施することができた。住居棟、階段棟の杭頭部における本震時の地震時曲げモーメントを評価することによって、解析結果からある程度、被害の様相を説明することができたが、まだ整合のとれない部分もある。そのため数値解析モデル、特に非線形特性の部分を修正していく必要はあるものの、モデルの基本的な部分はある程度完成しているため、初年度の進捗状況としては概ね順調といえる。数値解析によって検討する項目として挙げていた、上部構造のロッキング振動の影響や不整形地盤中の表面波伝播については後回しとなったが、被災した建物の上部構造、杭、地盤を一般化した解析モデルによる数値解析は計画を前倒しする形で先に検討を始めることができた。これにより、杭支持層の傾斜が杭頭部地震時応力へ及ぼす影響について定量的な検討を予定よりも早く始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策を決定するに当たり、これまでの結果を整理すると、まず建物被害については、住居棟は甚大な構造被害は見当たらなかったものの、南北構面で杭長が最大10m異なる不整形地盤に建設されており、地震時挙動への影響が懸念される。階段棟の地震被害が甚大であり、2つの階段棟では脚部の曲げ破壊が確認され、また残る1つの階段棟では杭頭部の曲げ破壊が予想されている。このような被害により3つの階段棟はすべて北側に向かって傾斜している。 数値解析結果において、被害の大きかった階段棟の杭頭部では終局曲げモーメントに達しており、曲げモーメントの大きな箇所での塑性率を見ると、北側杭で1.8、南側杭で2.8とおおむね被害の様相に対応する結果となった。一方、沈下や傾斜など基礎構造に関する被害が確認されていない住居棟については、杭長の短い北側杭では終局モーメントに達していないものの、杭長の長い南側杭では杭頭部が終局曲げモーメントに達している。また、南側杭の塑性率は2.6と階段棟と同程度の値となった。住居棟基礎部は調査できていないため、本震後の杭頭部の状態は明らかではないが、周辺の被害状況から察するに住居棟上部構造の傾斜等は認められないため、住居棟杭頭部の解析結果はやや過大な値を示していると考えられる。したがって、今後は有限要素法による数値解析モデルの精度をさらに上げる努力をしつつ、耐震設計への応用も考慮してPenzien型モデルやS-Rモデルに基づく、より簡易な数値解析モデルの開発を行う。さらに、被害調査結果や地震観測および常時微動観測記録の分析結果と数値解析結果との整合性を検討するために、土層を利用した模型実験を行うことも検討したいと考えている。
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Research Products
(1 results)