2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の平野に特有の微地形に起因する建物杭基礎の地震被害メカニズム解明
Project/Area Number |
16K06566
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中井 正一 千葉大学, 大学院工学研究院, 名誉教授 (90292664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 徹 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50451753)
中川 博人 国立研究開発法人建築研究所, 構造研究グループ, 研究員 (80713007)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 建物 / 杭基礎 / 地震被害 / 微地形 / 不整形地盤 / 有限要素解析 / 地震観測 / 東北地方太平洋沖地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2011年東北地方太平洋沖地震による特徴的な建物の杭被害(細長い谷底平野のほぼ中央に位置する複数の同形状建物のうちの1棟のみが被害を受けた事例)を対象に、そのメカニズムを明らかにしようしている。平成29年度は、実施項目:[A]杭被害分析、[B]対象地区の選定と表層地盤モデルの構築、[C]地震観測、[D]数値シミュレーション解析、のうち、[A]・[B]を継続し、[C]・[D]を実施した。一部計画の変更を含めて、おおむね目標を達成できた。 [A]では、被害調査関係者からのヒアリングにより、2011年東北地方太平洋沖地震以前の地震による杭被害の可能性も指摘された。 [B]では、検討対象である千葉県船橋市のサイトA敷地近傍の表層地盤モデルを詳細化するにあたり、複数地点での地盤調査を計画したが、土地を管轄する船橋市からの敷地利用許可がおりず、間接的な地盤調査(微動計測)に切替えて実施した。 [C]では、敷地内で1棟のみ被害のあった建物と被害の見られなかった建物付近、地盤構造の異なる敷地外台地上の計3地点で行った。同じ敷地内であっても観測地震記録の周波数特性に差のあることが分かった。 [D]では、地震観測結果のシミュレーション解析として、ボーリング資料と微動計測の結果に基づいて2次元地盤モデルを作成した。これを用いた2次元有限要素解析から、面内方向では地表の周波数応答特性に変化は無いものの面外方向では場所による変化が見られ、被害建物付近は他に比べて応答が大きくなることが分かった。次に、高度な解析として、すでに開発ずみの3次元有限要素法による周波数応答解析プログラムの機能向上を図った。地盤の非線形性を考慮する等価線形解析機能を追加・検証し、サイトAおよびサイトA以外を対象とする検討を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、2011年東北地方太平洋沖地震による特徴的な建物の杭被害である、細長い谷底平野のほぼ中央に位置する複数の同形状建物のうちの1棟のみが被害を受けた事例を対象に、次の4ステップによりその被害メカニズムを解明しようとしている。すなわち、[A]杭被害分析、[B]対象地区の選定と表層地盤モデルの構築、[C]地震観測、[D]数値シミュレーション解析、である。平成29年度当初計画では、[A]・[B]を継続し、[C]・[D]を実施することを目標としていた。全体としては目標を達成できたものの、一部において若干の修正を余儀なくされた。概要は上記9.に示した通りであるが、補足と共に進捗状況を以下に記す。 [A]では、国土交通省による杭被害調査関係者に対するヒアリングを実施した。その結果、今回の地震で杭被害が明らかになったものの、より以前の地震においてすでに被害を受けていた杭もあった可能性が指摘された。 [B]では、昨年度の成果に基づき、サイトA内およびその近傍において簡易な地盤調査を実施することにより、既存の地盤調査結果と合わせて2次元的な表層地盤構造の把握を試みる予定であった。実際に現地調査を行い、地盤調査計画を立てるところまでは実施できた。しかしながら、調査地点がいずれも船橋市の土地(公園等)であったため、市に地盤調査実施の許可を申請したが、結果は却下であった(理由は、結果如何によっては周囲の地価を下げる恐れがあるため)。従って、直接的な地盤調査から間接的な評価(常時微動計測)へと変更せざるを得なかったが、大まかには地盤構造を把握できたと考えている。 [C]および[D]は9.に記したとおりであり、順調な進捗によって大変良好な研究成果が得られたと言える。これらの成果は、国内外の学会、シンポジウムや論文集に投稿ずみでり、一部はすでに採択されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28・29年度の検討により、一部に計画修正を余儀なくされた点はあるものの、当初の研究計画どおりおおむね順調に進捗し、期待していた成果が得られたものと考えている。 最終の平成30年度は、これまでの研究結果を再度見直すことによって細部の検証を行うと共に、本研究によって得られた成果をとりまとめ、各種学会において発表すると同時に、論文誌に論文を投稿したいと考えている。最後に、成果報告書としてとりまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
9.および11.に記したとおり、当初予定していた直接的な地盤調査(現地で孔を掘る、または、試験器具を挿入する)は頓挫したため、間接的な方法(地表面で常時微動を計測する)に切り替えることとなった。このための予算を他に振り替えたものの、全額を消化するには至らなかった。 平成30年度繰越分は、学会参加や論文投稿のための費用、あるいは論文作成のためのソフト使用料等に振り替える予定である。
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