低強度コンクリートに後施工したアンカーのせん断試験装置の開発と伝達せん断力の評価

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K06567
• Research Institution: University of Fukui
• Principal Investigator: 小林 克巳 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40150297)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 鉄筋コンクリート / 低強度コンクリート / あと施工アンカー / せん断試験装置 / せん断剛性 / 原位置試験 / 品質管理 / 施工管理

Outline of Annual Research Achievements

300mmの間隔であと施工アンカーを施工し、凸部品と凹部品を互いに平行にスライドするように組み合わせた装置に試験アンカー筋を密着させて取り付けることにより、コンクリート境界面に施工されたアンカー筋が点対称形に変形していく状態を再現できるメカニズムを考案した。
先ず、このメカニズムを検証するために、凸部品および凹部品を切り出し、溶接構造にて試験装置を試作してメカニズム確認実験を行った。試験アンカー筋が回転拘束されている状態、試験後の試験アンカー筋の点対称形の変形状態、試験装置に生じる理論上の応力などを確認し、意図したとおりのメカニズムになっていると判断した。
次に、試験アンカー筋としてD22までを想定し、試験装置の設計せん断力を200kNに設定して設計を行い、精密機械加工によってせん断試験装置を試作した。スライド部の摩擦抵抗を無くす方法と試験アンカー筋と試験装置を密着させる方法をどうするかに時間を要したが、装置の試作まで終了した。次年度は、この試作した装置の性能確認から開始することになる。
実験用の低強度かつ低品質のコンクリートを製造する試みも兼ねて、コンクリート境界面にあと施工アンカーが施工された状態の一面せん断実験を実施した。試験体上部に平行装置を取り付けてコンクリート界面に生じる垂直応力を無くし、アンカー筋の周囲はできるだけ梁主筋と肋筋による拘束が無いように配慮したが、想定していなかった破壊モードが現れた。その理由については、さらに検討する必要があり、試作したせん断試験装置による結果と一面せん断実験による結果を比較する目的も含めて、一面せん断実験を追加して行う必要がある。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

コンクリート境界面に施工されたアンカー筋が点対称形に変形していく状態を再現できるメカニズムを考案し、可搬型で施工現場でも簡便に使用できる装置の基本的考え方をまとめ上げたが、直ちに精密機械加工による試験装置の試作を行うと、経費がかかりすぎて改良がし難い。そこで、装置としての精度は落ちるが、溶接構造にて試験装置を試作してメカニズムの確認をしてから、試験装置の設計せん断力を決めて、装置設計および精密機械加工による試作を行うという2段階のステップを踏んだため時間を要したが、精密機械加工による試験装置の試作まで完了できたので、ほぼ計画通りに進んでいる。
本研究の成果として目標としているせん断試験装置は、実際の施工現場で使用されるようになって意味があるものである。本研究の成果を見越して、あと施工アンカーの施工に関わっている組織とも連携することを目指している。試作した装置の基本的考え方を説明して、その有用性を理解してもらい、協力関係を築ける見通しが出来たので、本研究はおおむね順調に進展していると評価する。

Strategy for Future Research Activity

平成28年度に精密機械加工によって試作した装置を用いてあと施工アンカーのせん断試験を行うとともに、それと対応してコンクリート境界面に施工されたアンカー筋の一面せん断実験を行う。本試作装置をどのように使用すれば、コンクリート境界面に施工されたアンカー筋の一面せん断実験に対応するかは、試験の標準仕様を決めるうえで重要であり、このことも含めた実験データを得ることを今後の目標とする。
次の段階として、本試作装置による試験方法が定まれば、低強度コンクリートを含めて様々な特性を有するコンクリート塊にアンカー筋を施工してせん断試験を行う。本試作装置による試験結果および各種材料試験結果を用いて、変形を考慮したあと施工アンカーの有効せん断強度を定式化することが次の目標であるが、これには相当の時間と経費を要することが予測され、データ処理上、実験パラメータが不足する場合には、平成30年度の当初計画を変更してもこれを優先させる必要がある。
平成29年度の計画が予定通り進めば、その次の段階は、定式化したあと施工アンカーのせん断有効強度で、合理的な耐震補強設計ができることを耐震補強実験で確認するものとするが、先ずは、変形を考慮したあと施工アンカーの有効せん断強度を定式化することが最優先である。

Causes of Carryover

機械加工によって試作した試験装置に組込む小型ロードセルを、平成28年度中に購入予定であったが、試作した試験装置の設計が終わらないと大きさが決まらない特注品となるため、設計と納期の関係で平成28年度内に購入できず、平成29年度初めに購入予定となって未使用額が生じた。
また、試験装置部品の加工・製作に業者の協力が得られ、予定よりも安価に製作できた。さらに、あと施工アンカーの一面せん断実験試験体の製作に当たっては、あと施工アンカーの施工に協力者が得られたことと、平成27年度に別の目的で使用して廃棄予定であったあった型枠を再利用して、自ら製作ができるような試験体設計を行ったために予定よりも安価にでき未使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

未使用額は、平成29年度における小型ロードセルの購入、試作装置の改良、試作した試験装置による試験結果と比較用の一面せん断実験試験体を追加する経費に充てたい。