2016 Fiscal Year Research-status Report
経年劣化した鉄筋コンクリート造建築物の耐久性予測に基づく寿命制御手法の構築
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16K06591
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
佐藤 幸恵 東京都市大学, 工学部, 准教授 (70408714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桝田 吉弘 日本大学, 理工学部, 教授 (30272214)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 既存鉄筋コンクリート造建築物 / 中性化 / モルタル仕上げ / 炭酸ガス / 長寿命化 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存鉄筋コンクリート造建築物の調査結果を用いて,各種モルタル厚さを有する場合の中性化進行過程について解析を行った.モルタル厚さはコンクリート躯体の保護性能を有するため,モルタル厚によって中性化進行過程が異なる.一方で,コンクリートとモルタルは非常に近い中性化特性を有するが,現場でモルタル塗りによって仕上げられるため,モルタル厚さは建物の出来上がり寸法や美観性を重視するため均一ではなく,躯体保護性能の評価は煩雑で不明瞭な点が多かった. また,従来,仕上げとして用いられているモルタルの厚さは解析上既知である必要があり,既存建物の調査結果に基づいたモルタル厚を導入し,逆算的に構築したモデルが提案されてきたが,本研究では,モルタル厚さを未知の値として与えることで解析を行った.その結果,解析により求められた炭酸ガスの拡散係数やモルタルおよびコンクリートの中性化速度係数は既往のモデルや調査結果から算出された結果と類似の値を得ることができた. 建物の立地条件や補修・修繕などの履歴がコンクリート躯体の中性化特性に大きく影響を及ぼすことが本研究の調査および解析により明らかとなった.特に日射量の多い南面と永久日影となる北面では中性化進行に大きな差がみられた.そのため,方角別に解析を行うとともに,それらの要因について検討を行った. さらに,モルタルそのものの品質の不均質性が解析結果の変動に影響していることが考えられた.そのため,今後,モルタルの不均質性を考慮に入れた解析モデルの改善が新たな課題点として得られた. 現時点で明らかとなった課題は,方角などの立地条件,およびモルタルの品質分布について解析モデルに取り込む手法を検討することと総括され,29年度以降継続して解析を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初年度に予定していた解析が順調に進行し,その内容を取りまとめて国際会議論文として投稿することができた.国内学会においても論文および学会発表を行っており順調に進展している.またその過程で明らかとなった課題について解析を進めており,29年度中に概ね明らかにできると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
既存建築物の耐久性予測は,それぞれの建物の立地環境や施工条件が異なるため,一律に評価するのが難しい.本研究では,特に予測モデル構築に重要な位置を占めると考えられるモルタル厚さについて未知の状態で解析できたが,モルタルそのものの品質分布を考慮するまでには至っていない.そのため,別途,表層から乾燥を受けた場合に仕上げモルタルが不均質となる場合について解析を進めていく予定である. また,解体予定の鉄筋コンクリート造建築物のサンプリング調査を行い,予測モデルとの比較を行う予定である.
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Causes of Carryover |
研究代表者および分担研究者がこれまで収集した既存鉄筋コンクリート造建築物のデータを利用した解析を主に行ったため,当初予定額よりも物品費等が少額で研究が遂行できた.また,解析が順調に進んだため,次年度に開催される国際会議で発表することとし,その登録費として使用したが,外国為替の変動が大きい時期であったため,余裕を見込んだことから使用予定額に差が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
概ね順調に研究が進行していることから,当初予定よりも学会発表等の成果公開活動を活発に行いたい.そのため,当初予定の既存建築物調査費用に加えて,国際会議参加費用や国際的な研究活動を行うこととして使用する計画である.
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Research Products
(3 results)