2017 Fiscal Year Research-status Report
飛散物による破壊シナリオを考慮した強風災害リスク評価
Project/Area Number |
16K06594
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
野田 博 近畿大学, 建築学部, 教授 (30602221)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 竜巻 / 台風 / 飛散物 / 変動風発生 / 確率統計量 / CFD |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画段階で設定した平成29年度の研究課題はサブテーマ2「台風ならびに竜巻による強風の作成」とサブテーマ4「被災地における強風被害状況と飛散物の調査」の2テーマでした。 サブテーマ2については,台風による強風の作成が概ね達成できました。前年度もこのテーマに多くの時間を費やしたが,今年度も引き続きこのテーマに多くの時間を費やしました。このテーマに関しては,国際会議で報告し,国際的な観点から広く意見を頂きました。サブテーマ4については,平成29年度に大きな強風災害が,”幸いにも”発生しなかったので,調査が出来きませんでした。 研究段階では設定しなかった研究課題として,「飛散物飛行の解析を可能とする非慣性系座標による数値流体計算」(平成28年度から取り組み開始)と「確率統計的に作成した乱流のOpenFOAMへの応用」に取り組みました。 「飛散物飛行の解析を可能とする非慣性系座標による数値流体計算」では,その成果をインターナショナルジャーナルであるJournal of Wind Engineering and Industrial Aerodynamicsに投稿しました。ただし,対象物体は小さな飛散物ではなく橋梁断面としました。その理由として,飛散物の飛行運動は不明確な点が多いためです。一方,橋梁断面の運動は,複雑ではありますが,多くの研究者に拠り明らかにされており,計算結果の検証が可能なためです。「確率統計的に作成した乱流のOpenFOAMへの応用」は,オープンソース(誰でも無料で使用できるソフト)「OpenFOAM」を入手し,OpenFOAMで本研究で開発した台風を想定した乱流を取り扱えるようにしました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サブテーマ2「台風ならびに竜巻による強風の作成」に多くの時間を費やした理由として,本研究テーマで取り組んでいる強風の発生方法が他の研究で取り組まれている方法よりも格段に優れていることが判明し,かつこの手法の更なる精度向上が必要と考えたためです。本研究で取り組んでいる確率統計量に基づいた乱流の発生方法の最大の利点は,乱流の作成方法に比べて計算負荷が少なく,作成時間が圧倒的に早いところです。しかし,この作成方法は,流体の輸送方程式を解いていないため,一部の研究者から否定的な意見が寄せられています。我々としは,飛散物の飛散運動を明らかにする上では十分有用と考えています。多くの研究者に受け入れられる手法とするために,これまで開発した確率的手法に加えて,地上付近に発達する乱流の特性を加味した方法に改良しました。 今年度新たに取り組んだ「確率統計的に作成した乱流のOpenFOAMへの応用」は,これに拠り更に本研究の成果が,広く研究者や実務者に利用されると考えたからです。 「OpenFOMA」は,研究者や設計等の実務者に広く利用されている国際的に著名なオープンコードです。本研究の成果が「OpenFOAM」で利用できることになれば,研究成果の更なる社会貢献に繋がると考えたためです。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通りに研究を遂行する。ただし,研究を進めるに従い計画段階で想定していなかった課題がみつかり,当初の研究目的を達成するためには必要と判断した場合には,当初の計画に加えて新たな課題を設定し,それに取り組む予定です。 また,平成30年度は研究最終年度であるため,成果の発信にも注力する予定です。
|
Causes of Carryover |
(理由)平成29年度に購入予定であった数値流体計算用パソコンを,再検討の結果購入しなかったために次年度使用額が生じました。再検討の理由は,平成29年度は海外への成果物発信に注力し,そのための時間と費用(渡航費や国際会議参加費等)に予算を使用したためです。 (使用計画)高精度の数値流体計算用パソコンの購入を変更し,新たな課題として設定した「OpenFOAM」への応用を目指して「OpenFOAM」のための計算格子生成ソフトを購入する予定です。計算格子ソフトを導入することにより本研究で開発した乱流生成法が「OpenFOAM」にスムーズに応用することが出来ます。すなわち本研究成果が広く社会に貢献する可能性が高まります。
|