2016 Fiscal Year Research-status Report
建築物の長寿命化に資する外壁目地の性能評価システムの開発
Project/Area Number |
16K06600
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Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
宮内 博之 国立研究開発法人建築研究所, 材料研究グループ, 主任研究員 (40313374)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 建築構造・材料 / 建築防水 / シーリング材 / 長寿命化 / 性能評価 / 試験機 / 耐疲労性 / 接着性 |
Outline of Annual Research Achievements |
屋根や外壁の建築外皮構成部材は、躯体構造物を保護し建築物の長寿命化を図る上で重要な建築構成部位であり、その目地に使用されるシーリング材は耐久性の観点から弱点となりやすく、シーリング目地の性能を客観的に評価可能な指標が課題となっている。 本研究では、気象環境や建物外装材の挙動により生じる負荷に対して、シーリング目地の耐久性を定量的に評価し、その性能を規定化するシステムを構築することを目的とする。具体的には、①シーリング目地の複合劣化試験方法の開発と試験の実施、②シーリング目地に生じる外力(ウェザリング、目地ムーブメント)の影響評価、③シーリング目地の性能評価システムの構築をし、標準化に向けた関連JIS、JASS8等への国内規格への適用や海外規格への情報提供を行うものである。 平成28年度では、(1)シーリング目地の故障の分類と要求される性能の抽出、整理、(2)複合劣化試験用疲労試験機の開発、(3)シーリング目地接着性試験方法の開発の3つのサブテーマに分けて研究を実施した。(1)ではシーリング目地の劣化に及ぼす要因をウェザリングと目地ムーブメントに分けてシーリング材の特徴と故障の分類の整理をし、複合劣化試験を効率的かつ多様な試験を実施するための方法について検討した。(2)ではシーリング目地のムーブメントの変位量、周期が変更可能で、その時の応力変化をロードセルにて検出する機構を持つ疲労試験機の開発を行った。(3)ではシーリング材の接着性を確認するために、シーリング材種と外壁に使用される材料を試験変数として温水伸長試験による評価方法の提案を行った。 なお、これら成果については平成29年度に開催される日本建築学会大会にて公表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は以下の3つのサブテーマについて研究を実施した。 (1)シーリング目地の故障の分類と要求される性能の抽出、整理: シーリング目地の劣化に及ぼす要因をウェザリング(紫外線、温度)と目地ムーブメントに分けてシーリング材の特徴と故障の分類の整理をした。その結果、屋外環境で施工後、シーリング材が硬化する数日の間に生じる気象環境及び目地ムーブメントが、その後のシーリング目地の耐久性に与えることが専門家のヒアリング及び実験により分かった。さらに、ウェザリングと目地ムーブメントの複合劣化試験を実施するために必要とされる疲労試験機の要求条件について整理した。その結果、ウェザリングと目地ムーブメントの影響変数は多様であるため、目地ムーブメントのみ再現する小型の疲労試験機を開発し、他の劣化要因は既存の試験機と併用することで様々な劣化評価にも適用可能な複合劣化試験方法を提案することとした。 (2)複合劣化試験用疲労試験機の開発: 既存の目地ムーブメントを与える疲労試験機では複合劣化試験を実施することができないため、小型の複合劣化試験可能な疲労試験機の開発を行った。具体的には、シーリング目地のムーブメントの変位量、周期を変更することができ、その時の応力変化をロードセルにて検出する機構とした。また、既存の温度可変及び紫外線照射可能な試験装置内に疲労試験機して、熱劣化が可能な仕様とした。 (3)シーリング目地接着性試験方法の開発:シーリング材の接着性を確認するために、シーリング材種と外壁に使用される材料を試験変数として温水伸長試験による評価方法の提案を行った。本試験法はシーリング材に一定変形を与えた状態で温度、水浸漬による負荷を与える方法とした。実験の結果、従来法である引張接着性試験やナイフカットピール試験と比べても、接着性の有無の検出能力が高く、簡便に評価できることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究について、平成28年度に得られた成果を基に、以下の項目について研究を実施する。 (1)複合劣化試験用疲労試験機の改良と試験方法の提案: 平成28年度に開発した疲労試験機を複合劣化試験方法として適用するための各種試験を実施する。具体的には、目地ムーブメントを与えながら既存の熱劣化及び紫外線等の劣化試験装置を活用して複合劣化を加えることで、促進劣化が可能かの検証を行う。また、本疲労試験機で重要となる応力検出部の測定が可能かどうかの安定性と耐久性評価を行う。 (2)開発した疲労試験機による各種複合劣化試験の実施: 本疲労試験機により、シーリング材の耐久性に関わる耐疲労性と接着性について実験により評価する。耐疲労性については、シーリング材の硬化途上のムーブメントの影響についてシーリング材種を変数として実施し、シーリング材の応力変化と損傷状態を評価する。また、熱及び紫外線等のウェザリングと目地ムーブメントを複合した場合のシーリング材の耐久性の低下について、本疲労試験機により定量的に評価する。 (3)シーリング目地の接着性評価方法の検討: 温水伸長試験による評価方法について、従来法である引張接着性試験やナイフカットピール試験と比べた場合のシーリング材の破壊形態を整理する。これにより、既存試験法と温水伸長試験の接着性に関わるグレーディングと検出力について検討を行う。 なお、上記(2)と(3)については学協会の専門家から意見を得て情報収集を行うことで、シーリング材の性能設計に適用可能な汎用性の高い試験法の提案を目指す。
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