2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の視覚支援のための新規な明視性向上照明技術の構築
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16K06608
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
明石 行生 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (10456436)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢者 / 視覚特性 / 水晶体 / 眼球内散乱光 / 光幕 / グレア / 明視3要素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究を始めるにあたり、若年齢者の読みやすさモデルを構築した原直也教授(関西大学)から指導を得て、高齢者の個人差を把握するためには、計画していたコントラスト感度関数(CSF)だけでは不十分であり、眼の光学特性を測定する必要があるとの指摘を受けた。本学医学部稲谷教授に協力を得て研究体制を整え、本学医学部倫理委員会から研究内容の承認を得た。今回、(1)視覚特性の測定、(2)光幕輝度モデルの構築、(3)読み易さモデルの構築を行った。 (1)視覚特性の測定では、60歳~80歳の高齢者18名(男性14名、女性10名)と20歳~24歳の若年者6名(男性3名、女性3名)の協力を得て、視力、屈折異常、瞳孔径、水晶体濃度、コントラスト感度を測定し、網膜画像を撮影した。。 (2)光幕輝度モデルの構築では、既往研究を用いて年齢をパラメータとして高齢者の眼球内の散乱光により生じる光幕輝度をモデル化した(光幕輝度モデルの妥当性を実証する実験はまだ終了していない)。さらに、同じ被験者に眼球内散乱光を生じる点光源と面光源により生じる眩しさの程度を評価していただいた。被験者の視覚特性と評価結果とを比較した結果、眼の水晶体の混濁度が高いほど眩しさが許容できる限界輝度が低いこと(つまり、眩しさを感じやすいこと)を明らかにした。 (3)読み易さモデルの構築では、視標提示装置を用いて実験した。視標提示装置を用いて均一背景の上に日本文の視標を提示した。実験では視標の文字寸法、輝度コントラスト,背景輝度が種々異なる条件下で被験者は視標の「読みやすさ」と「眩しさ」の評価をした。読み易さの評価結果を解析するにあたり、高齢者と若年者の明視3要素別に、また、読み易さレベル毎に累積頻度分布を求めた。特に「苦労せずに読める」の尺度に着目し、高齢者と若年齢者の50パーセンタイル評価値を求めることにより、読み易さモデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の実験計画に比較して(1)の項目を加えることにより、より実用的価値の高い研究成果を得ることを目指した。特に、研究者の助言により、CSFだけでなく被験者の視覚特性も把握する必要があるとの指摘を得たため、本学附属病院(及び医学部)の稲谷教授と青木助教の協力体制を構築すること、医学部の倫理委員会の承認を得ることに、予想以上の時間を費やした。そのために、光幕輝度モデルの実証のための実験について、当初の予定よりやや遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、遅れている光幕輝度モデルを実証するための実験を行い、その実験結果と視覚特性(特に水晶体の混濁度)との対応関係を調べ、光幕輝度モデルを検証・構築する。 その後、平成29年度の計画通りに、光幕輝度モデルに基づき、網膜輝度画像を算出するアルゴリズムを開発する。同時に読み易さモデルに基づき、個人のCSFに応じて視対象の輝度条件を最適化するアルゴリズムを開発する。 例えば、20ポイントの大きさで輝度コントラスト0.28の文字を順応輝度20 cd/m^2の条件下で見ると「多少読みにくいが読める」レベルである。それを「苦労せずに読める」レベルに向上させるためには、従来の照明システムでは700 cd/m^2の輝度が必要であった。これを実現するためには35倍の照明エネルギーを要した。今回、輝度コントラストを直接高められるプロジェクション・マッピング技術を用いることにより、輝度コントラストを0.57に高めることにより、「苦労せずに読める」レベルに改善できる。これにより照明エネルギーは増えないことになる。このことを実験的に実証する計画である。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画に比較して被験者の視覚特性の測定の項目を加えることにより、より実用的価値の高い研究成果を得ることを目指し、本学附属病院(及び医学部)の稲谷教授と青木助教との研究協力体制構築と医学部倫理委員会の承認に時間を費やしたため、当初計画より若干の遅れが生じた。 これに伴って高齢者の視覚支援のための明視性向上照明システムの試作準備のために購入を予定していた実験装置制御用コンピュータ(15万円)、短焦点液晶プロジェクタ(20万円)、直流安定化電源(36万円)の購入と、光幕輝度モデルの妥当性の評価のための被験者の謝金(20万円)を次年度に回した。 なお、当初購入予定のコントラスト感度測定器(ESV3000)(160万円)は、後継機の価格上昇のために、計画より減額された研究費では購入できなかった。そのため、グレア内蔵型コントラスト感度測定器(CSV-100HGTi)(100万円)を購入した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度にできなかった光幕輝度モデルの妥当性の検証のための実験を行うために、それに参加いただく被験者の謝金(20万円)は8月までに支払う計画である。 高齢者の視覚支援のための明視性向上照明システムの試作の準備と予備検討のために購入を予定していた実験装置制御用コンピュータ(15万円)、短焦点液晶プロジェクタ(20万円)、直流安定化電源(36万円)については、8月までに慎重に選定して購入する計画である。 さらに、当初の予定通り、成果発表のために平成29年10月に韓国で開催される国際会議に参加するために旅費と参加費を使用する計画である。
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Research Products
(1 results)