2016 Fiscal Year Research-status Report
快適な屋外空間創出のための温熱環境設計条件の抽出と設計手法の確立
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16K06617
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
三坂 育正 日本工業大学, 工学部, 教授 (30416622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 健一 日本工業大学, 工学部, 教授 (20189210)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 暑熱適応 / 温熱快適性指標 / 人体生理反応 / 人体心理申告 / 作業効率 / 設計目標値 |
Outline of Annual Research Achievements |
屋外空間においても、屋内空間の設計と同様に温熱環境の目標値を求め、その値を満足するための設計・評価する手法を提案することで、より快適な屋外空間の設計の促進を図れるものと期待される。そこで、本研究は、屋外空間を対象として、利用目的に応じた温熱環境の目標値を実験から導き出すことを目的としている。 初年度においては、異なる温熱環境を持つ空間を対象として、温熱環境と人体の生理・心理反応、作業効率に関する関係を明らかにすることで、屋外空間における利用目的・人の熱ストレスに応じた温熱環境の設計手法を検討することを目的として実験を行った。実験は、夏季(8月)の日中に、日向空間と、日除けと周囲を冷却ルーバーで囲んだ暑熱対策空間を設けて、異なる温熱環境での人体生理反応・心理申告と作業効率に関して、被験者実験による評価を行った。空間の利用条件として、着座安静と着座読書の2つの条件を設定し、読書については新聞記事の理解度を指標として、作業効率の評価を試みた。実験の結果から、暑熱対策による温熱快適性の向上効果を確認し、対策による人体生理反応・心理申告の改善ならびに読書時における作業効率の向上について解析を行い、その効果を概ね確認することができた。しかしながら、空間利用による比較においては、特に作業効率の評価において、実験時の気象条件や個人による差が大きくなる場合があり、温熱環境改善による明確な効果として評価するためには、データ数を増やす必要性があること、などの課題も残った。また、心理申告調査から、許容度や快適感を指標として、設計条件となる閾値として異なる値を導き出すことの可能性があることを示唆出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては、当初計画していた実験を実施することができたものと評価している。 暑熱対策による温熱快適性の向上により、心拍数や体表面温度などの人体生理反応の改善効果、温冷感や快適感、許容度などの心理申告の改善効果、さらに理解度を指標とした作業効率の向上といった効果を、被験者実験から確認することができた。また、屋外の空間利用として、休憩と読書を想定した着座安静と着座読書の2種類の作業条件を設定した実験から、人体生理反応と心理申告、さらに理解度を指標とした作業効率のそれぞれにおいて、利用条件によって結果に違いが生じることも確認することができた。 しかしながら、被験者を対象とした実験において、一部の実験日で日射量が少なく気温が低い、など、気象条件が適切ではなかったために、特に作業効率などに明確な差を見いだせなかった実験結果もあり、今回の結果を確実なものとするためには、今回の実験を再現して再検証する必要もあると考えられる。また、被験者実験とは別に、利用状況(利用者数や利用時間など)に関する実験も計画し、一部調査を実施したが、8月後半から天候が不順で気温の低い条件が多かったため、解析に有効な数のデータを抽出することができなかった。 これらの課題については、次年度以降に並行して実施することでの対応を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、初年度の実験結果を踏まえ、屋外空間の利用条件として、着座、読書に加えて、パソコン操作や事務作業などの作業性を高めた条件を対象とした実験を実施する予定である。実験の概要や計測・評価項目は、初年度とほぼ同様の内容で考えており、被験者実験を中心として実施する。初年度の結果を踏まえ、空間利用条件として、作業被験者に事務作業などのタスクを与えて、温熱環境と人体の生理・心理指標、作業効率等による評価を行う。タスクの内容や作業効率の評価については、これまで室内を対象として実施されてきた知的生産性の評価に関する研究を参考に設定する。また、作業を行う空間では、休憩を主目的とした空間に比べて、温熱環境条件が厳しくなることが想定されるため、より暑熱環境が緩和されている(温熱快適性指標の値が低い)空間を設ける必要があり、初年度の暑熱環境対策に加えて、微細ミスト噴霧技術や水冷式ベンチなどの対策を加えることで、温熱環境の幅を広げ、数段階での環境を設定する見込みである。また、初年度に天候不順で解析が不十分となった、利用状況に関する実験も併せて実施する。日向空間と暑熱対策空間を設けて、温熱環境の測定と同時に利用状況(利用者数や利用時間)に関する調査を行い、基準化利用者人数による解析を行うことで、利用状況の観点から温熱環境の閾値の抽出を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
複数年にわたって実験を実施していくにあたり、実際の実験期間が夏季3か月と限られていること、さらに各年で温熱環境を変化させるために暑熱対策技術(装置)についても違いを設ける必要性があること、等の理由から、暑熱対策屋外空間試験体に設置する対策技術を購入せず、各年の実験条件に応じた仕様に合わせて、装置を都度レンタルした方が合理的であると判断し、初年度の試験体購入費用をレンタル費と変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に大きな変更はなく、今年度実施する主要な実験において、想定する温熱環境に応じた暑熱対策空間を作るために設置する対策技術(装置)を、実験期間である夏季3か月間レンタルすることで、計画通りに実験を実施できる予定である。
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