2019 Fiscal Year Research-status Report
地域特性に対応した包括的移住支援システムのパターン展開
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16K06631
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 幸子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (30509526)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地方創生 / 移住支援 / 就農支援 / 起業支援 / 企業誘致 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年までの研究成果より、自治体の負担を軽減し且つ地域特性を活かした包括的移住支援システムの構築には、就業支援の具体的手法に着目する必要があると考え、2019年度は特に就業支援に着目して研究を実施した。 1)移住・交流推進機構JOINが公開している移住支援策データを基に、2014~2017年における就業支援の実施状況と変遷を整理した。その結果、中区分別支援策として農林水産業・伝統工芸・起業・就業・医療福祉・企業向けの6つの区分が抽出され、特に「農林水産業」と「起業」の中区分で金銭支援を導入する自治体が増加していることが明らかとなった。 2)農林水産業への支援の事例分析として、愛媛県興居島における若手柑橘就農者の就農形態と就農プロセスに関してヒアリング調査を実施した。若手柑橘就農形態として新規自営農業就農者、新規参入者、後継就農者の3パターンが抽出された。就農準備期間に就農場所での実践的な経験の蓄積が就農開始後の運営に大きく影響すること、元オーナーから農地・施設・資材等の賃貸・譲渡によって、新規参入に比べ初期投資が1/5程度に抑えられることが明らかとなった。 3)起業支援の事例分析として、茨城県内で移住・定住支援策の中で起業支援を実施する18/44市町村に対して、移住・定住支援策と起業支援の内容と実績に関するアンケート及びヒアリング調査を実施した。地場産業を活用した特徴的な起業支援として、笠間市の笠間焼を含めた陶芸家や造形作家のみを対象とした起業支援では、最も多い12人の移住起業者の成果が得られていた。 4)企業誘致による移住促進手法として、鯖江市のサテライトオフィス誘致事業を対象に、自治体担当課へのヒアリング及び開設されたサテライトオフィス4/5事例に対するヒアリング調査を実施した。サテライトオフィスの開設は地域人材の育成や一定の地域雇用創出に繋がっていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、就業支援に着目し、全国の自治体のデータベースの作成・実施状況の把握を行なった上で、自治体の取り組みとして農業・起業・企業誘致に関する事例調査を実施することができた。以上より、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)転入者に対するヒアリング・アンケート調査:転入者に対する聞き取り調査により、移住先選定の意思決定要因と自治体の取り組みとの関係性について明らかにする。 2)研究成果のまとめと提案:これまでの定量的分析結果と事例調査結果をもとに、地域類型別に支援内容の比較分析を行い、重点化・差異化すべき支援内容を明確にした上で、自治体が主体で実施するものと、民間と連携して実施するものについて、地域特性を踏まえながら整理する。その上で、地域類型別に包括的移住支援システムのパターンモデルを提案するとともに、普遍化に向けた計画課題を抽出する。
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Causes of Carryover |
2018年1月~2019年2月まで中断期間があったため。主に研究・調査補助者への謝金と調査旅費に使用予定。
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