2017 Fiscal Year Research-status Report
身体障害者が居住可能なグループホームに必要な建築計画的要件に関する研究
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16K06637
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 雄二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70516210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井本 佐保里 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (40514609)
西野 亜希子 東京大学, 高齢社会総合研究機構, 特任助教 (60601961)
永峰 麻衣子 小山工業高等専門学校, 建築学科, 助教 (60710481)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 身体障害者 / グループホーム / 地域居住 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、全国の障害者グループホームを特定するために、全国の市区町村、計1916自治体のグループホーム担当部署に対して、身体障害者が入居可能なグループホームの有無に関するアンケート調査を実施した。その結果1153自治体より回答があり、有効回答数は1147票(有効回答率99.5%)であった。結果として、身体障害者グループホームを運営するとされる392法人が特定された。 引き続き、上記調査で特定された392法人に対し、アンケート調査を実施した。調査内容は、運営しているグループホームに身体障害者が入居できるか確認し、その条件にあてはまる場合は施設や入居者、運営の状況について確認するものである。具体的には、施設の状況については延べ床面積・構造・階数・新築/改修の別・浴室設備の整備状況などについて、入居者の状況については、受入を標榜する障害種別・障害支援区分4以上の入居者の人数・医療的ケアが必要な入居者の人数などについて、運営の状況についてはグループホームの位置づけ(永住型/通過型の別)・土地建物の所有の状況・グループホーム以外の事業内容・今後のグループホームの設立希望などについてである。結果として、現在までに主に以下の事柄が明らかになっている。 受入を標榜する障害区分については、「知的障害のみ」「知的・身体障害」としたグループホームが4割を超え、利用者像として知的・身体の重複障害を持つ車いす利用者が想定されていることが明らかになった。また、障害程度区分が4以上の入居者が入居者の100%を占める施設は、全体の約30%を占め、重度の利用者が中心的である。施設に着いては、延べ床面積の平均は278.4㎡と、厚生労働省が2013年に発表した全国調査結果より大きい結果となった。入居者一人あたりの延べ床面積は36.8㎡であり、これも既往の研究の結果と比較すると大きな値となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、当初利用をもくろんでいたWAMNETのデータが利用できないことが判明し、身体障害者グループホームの特定に遅れが見られた。平成29年度は、全国の自治体に対しアンケート調査を行うことで、車いす利用者である身体障害者でも入居可能な障害者グループホームの特定を行った。結果として60%を超える自治体より返答を頂き、当初もくろみでは平成28年度に行う予定であった全国の身体障害者グループホームのリストアップを作成することができた。 これらの作業と並行して、平成28年度、29年度には訪問によるプレ調査を実施し、身体障害者グループホームに対するアンケート調査における調査項目の作成と精査を行った。この作業に基づき、全国の392法人に対しアンケート調査を行い、結果として249施設の身体障害者グループホームよりアンケートへの返答を頂いた。併せて実施した、グループホームの平面図の提供依頼についても、約40施設ほどの平面図が収集できている。アンケート調査については集計とある程度の分析を終了させ、研究実績の概要に示したとおりの結果を得たところである。現在は、アンケートに回答頂いた施設の分類や地理的分布を検討しながら、平成30年度に実施を予定している訪問調査の候補対象施設の選定を行っている。 平成28年度に生じた調査の進行の遅れを、平成29年度は取り戻すことができ、進捗状況としては「おおむね順調に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度である平成30年度は、これまでのアンケート結果を取りまとめるとともに、全国で15箇所程度の身体障害者グループホームを訪問し、より詳しく身体障害者グループホームが置かれた状況を調査することで、身体障害者グループホームに必要な建築的要件と、身体障害者グループホームにおける生活・運営の実態と課題を特定することを試みる。 これまでのアンケート調査や訪問によるプレ調査からは、今回調査の対象とした身体障害者グループホームは、想定される利用者の障害は身体だけでなく、知的・身体の重複障害である事業者が多く見られることがわかっている。また、障害支援区分から見た利用者の状況からは、障害の程度が4以上を超える、いわゆる「重度」の障害を持った利用者が多いことも示されている。 このようなことから予想される状況としては、今回の調査対象である「身体障害者グループホーム」とは、実際には知的・身体に重複の障害を持ち、物理的環境整備のみならず、見守りや意思決定支援など、手厚いケアが必要とされる利用者が多く生活をしていることが予想される。今後の訪問調査においては、そのような特に重度の障害を持った障害者の地域居住の場として、グループホームに求められる建築的要素を明らかにしたいと考えている。 加えて、ハード面だけでは無く、身体障害者グループホームを実現させた諸条件、特にスタッフの人数や日中・夜間のスタッフ配置状況なども、可能であれば訪問調査時に確認し、ハード・ソフト両面から身体障害者グループホームを成立させている条件を明らかにする予定である。
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