2016 Fiscal Year Research-status Report
土地総有が被災地にもたらす影響の解明と復興まちづくり手法への展開
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16K06651
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Research Institution | Nagaoka Institute of Design |
Principal Investigator |
澤田 雅浩 長岡造形大学, 造形学部, 准教授 (00329343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 土地総有 / リスク共有 / 暫定利用 / 集団移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然災害の被災地における住宅再建を中心とした再定住のプロセスにおいて,従前の土地を離れ,安全性の確保や利便性の確保を目的とした移転再建が進められるケースがある.特に津波など面的な被害を被る場合には顕著となるが,移転先の土地の確保に当たっては,土地の所有制度を起因とする問題(相続などで土地権利関係者が膨大にふくれあがり,それらの同意をとるために煩雑な手続きが必要となることなど)が円滑な復興プロセスの推進を妨げている. また,移転の元地に関しても,その有効な土地利用は十分に進められていない.これらを解決する手法として,土地の所有と利用の分離,もしくは土地そのものの総有化の可能性について検討することは,将来的にも有益な作業となる. 平成28年度は,新潟県長岡市,信濃川堤外地における実質的土地総有制度の実情を明らかにした.築堤によって堤外地となった土地は,河川水位の上昇などによる農作物被害などのリスクにさらされている.それを堤外地一帯で耕作に取り組む権利者全体で共有する仕組みが現存していることをヒアリングや図面による確認によって整理した.川欠,と呼ばれる被害が一部の土地所有者に及ばぬよう,利用する耕地の入れ替えを行ったり,公共に買収された場合にも元々の所有面積に応じた利益配分を行う仕組みなど,今後に有益な知見を得ることができた. 東日本大震災の被災地,岩手県大船渡市では,防災集団移転促進事業によって移転した世帯の土地が低地部に多く残されている.その買い取り状況等について時系列で整理を始めている.現時点では作業用の資材置き場等に活用されているものの,地域の復興にとって必要となるような土地利用は進んでいない実態を整理している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初想定していた本研究課題にかけられるエフォートが,学内での教育活動等に割く時間が予想を超えたことで,宿泊を伴っての調査が必要となる東日本大震災被災地における詳細な調査等が十分に進められなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
所属研究機関が変更となったことで,これまでの遅れを取り戻すだけのエフォートをさけるようになったため,大船渡市以外の被災自治体における実情把握を前半で実施する.その後の土地利用の方針等については追加調査を実施する予定である.
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Causes of Carryover |
当初予定のエフォートを当該研究に割けず,結果として東日本大震災の被災地調査や土地総有の実態調査に関する旅費の支出が行われなかった.調査研究は研究機関が立地する新潟県長岡市でのみ実施され,データの入力作業等もすでに所有する機材等を活用して実施したことによる.次年度はそれらを鑑み,調査頻度を上げることを計画している.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
東日本大震災被災地における実態把握を前年度分と合わせて実施する.また土地総有の実態調査についても合わせて実施する.調査データが多くなるため,それに合わせて入力補助等の人件費も支出予定である.
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