2016 Fiscal Year Research-status Report
集合住宅のインフィルに求められる可変性の検証と高齢社会への対応
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16K06660
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
南 一誠 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10407223)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 集合住宅 / KEP / CHS / 可変性 / 居住履歴 / 間取り変更 |
Outline of Annual Research Achievements |
芝浦工業大学南一誠研究室等が実施したKodan Experimental housing-Project (以下KEP)による多摩ニュータウンエステート鶴-3団地、センチュリーハウジングプロジェクト(以下CHS)によるE団地、UR都市再生機構による国立富士見台団地の居住履歴、改修履歴の関する調査結果を分類・類型化することにより、可変型集合住宅の有用性を分析した。 KEPは、1973年より日本住宅公団(現:独立行政法人 都市再生機構)が行った、住宅建設システム開発のための実験住宅プロジェクトであり、オープン化や多様性・可変性を技術開発課題とされた。CHSは、建設省における「住宅機能高度化推進プロジェクト」の一環として研究開発され、1986年に認定制度として事業が開始された。家族形態の変化による住宅に対するニーズの多様性などから、間取り、内装、設備などの可変性、住戸内の補修、更新、交換、移設が他の部分に影響なく容易に行えること等を 長期に渡って行うことが可能であることを認定基準としている。南の研究室では、KEP方式住宅は1982,83年・1995年・2005,06年・2013,14年・2015年、CHS方式住宅は2013年9月~10月、国立富士見台団地は2008年・2009年・2010年2011年調査が行われている。 KEP方式住宅の中層棟のA1~3タイプとB1~5タイプには可動間仕切り、収納ユニットが備わっており、一定の可変性が備わっている。一方、C1~4タイプにはそれらは、配備されておらず、壁は固定であり、可変性は備わっていない。居住履歴調査の結果を基に、子供の成長・独立による住みこなしや間取り変更の実態を分析した。家族構成により類型化し、家族型、長子の性別、年齢を視点に住みこなしや間取り変更の実態について分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度において、子供の独立・成長を契機とした住みこなしと間取り変更について、①KEP方式集合住宅A,BタイプとCタイプ、②KEP方式集合住宅A,BタイプとCHS方式集合住宅、③KEP方式集合住宅と国立富士見台団地を相互に比較し分析を行った。 KEP方式住宅において、子供の成長期における住みこなしと間取り変更については、A,Bタイプ、Cタイプとも住みこなしの割合が高かった。子供の成長に対応して子供の居室を設けることを主目的とした住みこなし、間取り変更は、多くなかった。子供の独立期における住みこなしと間取り変更については、A,Bタイプにおいては、住みこなしと間取り変更がほぼ同数、実施されていた。間取りの可変性を持つA,Bタイプでは、可変性を持たないCタイプと比較して、子供の独立時に間取り変更をより多く実施していることが確認できた。 KEP方式住宅とCHS方式住宅における子供の成長、独立を契機とした間取り変更と住みこなしの実施状況を分析したところ、CHS方式住宅において、子供の成長期に間取変更が1件、実施されていた。住みこなしによる対応も15%と、KEPのCタイプの40%と比べて低い値を示していた。これは住戸面積がCHSの方が広く、KEPのCタイプは3LDKのみの間取りであるのに対して、CHSは3LDK~5LDKの間取りがあり、部屋数に余裕があることが理由である。 CHSにおいて、子供の独立期における間取り変更は観察されなかった。CHSの住宅では住戸面積や部屋数に余裕があることがその理由であると考えられる。一方、子供の独立期における住みこなしは数多く観察できた。 国立富士見台団地では、子供の成長期、独立期とも、間取り変更は行われていない。計17件の間取り変更のうち、14件はふすまの撤去によって二室を一室として使用する間取り変更であった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象としたKEP、CHSの集合住宅においては、子供の成長期には、住みこなしによる対応が数多く見られ、間取り変更を行う世帯は少なかった。子供の独立期においては、KEP住宅では間取り変更を行う世帯が多く見られたが、CHS住宅では間取り変更を行った世帯は確認されなかった。これは、間取り変更の容易性よりも、住戸規模や部屋数、入居世帯の家族構成がより大きく影響していると考えられる。 KEPのA,Bタイプでは、可動収納壁を移動することにより、南側居室を2室から1室に容易に変更できるため、間取りを変更する世帯が複数確認された。KEP住宅のうち可変性があるA,Bタイプでは、複数回の間取り変更を行った世帯が数多く確認された。子供の成長期、独立期以外にも、趣味室、書斎、家事室、収納を設ける等の間取り変更が実施されている。一方、CHS住宅は、KEPと異なり、床勝ち・天井勝ちの壁の納まりであるとはいえ、間仕切り壁の移設には工事を伴うため、複数回の間取り変更を行った世帯は確認されなかった。以上から、間取り変更を容易に行うことができるKEPの可動間仕切り、可動収納壁は、家族構成やライフスタイルの変化に、コストをかけずに臨機に対応することに寄与していたと考えられる。 一方、UR国立富士見台団地は、住戸規模が小さく、可変性を有しない内装構法であるため、苦労しながらも住みこなしによる対応によって、家族の変化に対応している事例が多くみられた。ただし、この住宅団地では南側に一間(ひとま)増築した住棟があり、増築をした住戸では、子供の成長期に奏功した様子がうかがえた。 上記の分析結果を踏まえて、居住者の高齢化に伴う課題の整理、建築的対応策の抽出などを行う予定である。在宅介護など、建築分野だけでは、望ましい対応策の抽出に限界があるので、他の分野の専門家との連携も模索したい。
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Causes of Carryover |
国際会議への参加費用が、招聘講演などがあり、予定より支出額が少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後も国際会議などに投稿し、研究成果の発表に努めたい。
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Research Products
(12 results)