2016 Fiscal Year Research-status Report
空間・福祉用具の観点から見た高齢者入居施設における腰痛予防に関する研究
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16K06674
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
山口 健太郎 近畿大学, 建築学部, 准教授 (60445046)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 研 京都大学, 工学研究科, 教授 (70311743)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 介護職員 / 腰痛予防 / 特別養護老人ホーム / 労働環境 / 行動観察調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
特別養護老人ホームをはじめとする高齢者居住施設の生活環境は、個室ユニットケア型の制度化など大きく向上してきた。その一方で、高齢者の生活を支える介護職員は不足しており、高齢者居住施設では職員の確保が急務の課題となっている。職員を確保するためには、介護現場全体の魅力を向上させると共に、介護職員が長く働くことができる労働環境を整備していくことが重要である。 腰痛は介護職員の離職理由となる大きな疾患であり、腰痛の原因は移乗介助などの大きな身体負担や、ベッドメイクなどの軽作業による負担の積み重ねにより生じる。腰痛予防には、適切な姿勢での介助とともに、その姿勢がとれる空間や負担を軽減できる福祉用具の導入が必要であり、ケア-道具-空間という観点から検討していかなければならない。 そこで本研究では、高齢者居住施設に勤務する介護職員の労働環境の改善策について腰痛予防の観点から検討を行う。研究初年度の2016年度は介護職員が勤務中にとっている姿勢と空間の実態把握を行った。 調査方法は行動観察調査であり、1分毎に職員の居場所、介護内容、職員の姿勢を専用シートに記載する追跡調査を行った。調査対象期間は3日間であり、調査対象時間は7時から連続72時間とした。調査対象施設はユニットケア型特別養護老人ホーム2施設である。いずれの施設もユニットケアリーダー研修の実地研修施設となっており、一定の質を確保した施設であると言える。調査対象者は、各施設ともに夜勤を共同で行う2ユニットに勤務する全職員である。 現在、調査データの分析作業を行っている段階であるが、介護職員の身体負担が高い介助は、入浴介助、排泄介助、居室での移乗介助であり、また、負担度としては低いが頻度の高い姿勢は食事準備、排泄介助準備であることが見えてきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画は以下の通りであり、現時点においてはおおむね順調に進んでいる。 2106年度は、介護職員の労働環境の実態把握を、姿勢・空間という観点から実施する予定であり、実際にユニットケア型特別養護老人ホーム2施設において行動観察調査を実施した。研究データの入力は終了し、現在、分析と考察を進めている段階である。現時点の調査結果から、介護職員の身体負担が高い介助は、入浴介助、排泄介助、居室での移乗介助であり、また、負担度としては低いが頻度の高い姿勢は食事準備、排泄介助準備であることが見えてきている。 2017年度はこれらの結果を踏まえて、排泄や入浴、ベッドからの移乗介助に適した空間寸法についてのシミュレーション調査を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
調査はおおむね順調に進んでおり、予定通り2017年度、2018年度の研究を実施していく予定である。 2017年度は身体負担度の高い行為を抽出し、実験室内において各介助に関するシミュレーション調査を実施する予定である。シミュレーション調査は実際の介護職員に協力してもらい、高齢者に模した被験者に対する介助時の姿勢をビデオカメラにて観察する。その上で各介助時に発生する姿勢(各部位の角度)を抽出する。 研究日程としては、2017年夏までに実態把握の分析を終了させ、2017年度に反映させるデータの整理を行う。介護職員の姿勢に関する実態把握についてはできるだけ早い段階で学術論文に投稿する。 調査の実施に際しては分担研究者と頻繁な意見交換を行い、より精緻なデータを導くことができるように努める。
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Causes of Carryover |
主担当の研究者の繰越額は19592円、分担研究者の繰越額は110335円となった。主担当の研究者に繰越額が発生した理由は、研究遂行上の必要な経費を支出した上での残額である。また、分担研究者の費用残額が大きくなった理由としては、2016年度は主担当の研究者の研究割合が大きく、分担研究者に発生する費用が予定よりも少なかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は、実験室でのシミュレーション調査を予定しており、調査器具等の研究費用が必要となってくる。研究費用の残額については、2017年度以降の研究に割り当てる予定である。また、2016年度の研究を地域ケアリングという雑誌に投稿しており、掲載費用として約60000万円が必要となっている。2016年度の研究データについては、別の雑誌に投稿していく予定であり、投稿料や掲載料に充てていきたいと考えている。
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